魚の骨が口内やノドに刺さってしまう疾患を「魚骨異物」といいます。

これは魚の消費量が多い国では一般的に見られる疾患で、とくにアジア圏では、ノドや食道に詰まる遺物の50〜90%が魚の骨です。

私たち日本人も、小さい頃から「魚の骨に気をつけろ」と何度言われてきたことでしょう。

にもかかわらず、魚の種類によって、骨の刺さり方や頻度が変わるかについてはあまり理解されていません。

そこで東北大学の研究チームは、同大学病院における魚骨異物患者の調査を行い、その臨床的特な特徴を明らかにしました。

最もノドに刺さる頻度の多い「魚の骨」は一体、何なのでしょうか。

研究は、8月17日付けで学術誌『PLOS ONE』に掲載されています。

目次

  1. 最も危険な骨は「カレイ・ヒラメ」?

最も危険な骨は「カレイ・ヒラメ」?

研究チームは、2015年10月から2020年5月までに、魚骨異物の疑いで受診した患者さん、計368名を対象に調査しました。

そのうち、魚の骨が確認されたのは270名、全体の74.3%でした。

最も多い年齢層は0〜4歳の乳幼児で、全体の25.9%を占めています。

また、骨が刺さる疾患部としては、口蓋垂(こうがいすい、いわゆる「のどちんこ」)から舌根(ぜっこん、舌の付け根)にかけての「中咽頭」が87.4%と大多数を占めていました。

中でも、扁桃腺に刺さるケースが多かったようです。

(咽頭は、鼻奥から食道に至る領域で、上から「上咽頭・中咽頭・下咽頭」に分けられます)

ノドに刺さったら一番危険な「魚の骨」は…? 魚骨異物の実態を調査
(画像=年齢別の魚骨異物の発生率 / Credit: 東北大学 – 魚の骨が刺さる事故の実態を詳細に調査 -カレイとヒラメは骨に注意!(2021)、『ナゾロジー』より引用)

それから、魚の骨の種類としては、ウナギの仲間が14.4%(ウナギ34例・アナゴ3例・ハモ2例)と最多、その次にサバ12.2%(33例)、サーモン12.2%(33例)、アジ11.1%(30例)、カレイの仲間11.1%(カレイ28例、ヒラメ2例)でした。

ウナギは一般家庭での調理は少ないですが、その他は、日頃からよく食べる魚となっています。

全体の270例のうち、12.2%(30例)は、診察中に骨が自然に疾患部から抜け落ちましたが、残りの240例では、摘出手術が行われています。

ノドに刺さったら一番危険な「魚の骨」は…? 魚骨異物の実態を調査
(画像=魚の種類ごとの摘出方法とその頻度 / Credit: 東北大学 – 魚の骨が刺さる事故の実態を詳細に調査 -カレイとヒラメは骨に注意!(2021)、『ナゾロジー』より引用)

半数以上は口内からの直接除去でしたが、103例(42.9%)は内視鏡を用いた摘出手術、6例(2.5%)は全身麻酔での手術を要しました。

さまざまな魚種の中で、カレイとヒラメの骨は、下咽頭や食道に骨が刺さる頻度が高い上に(30%)、自然に抜け落ちるケースが少なく(9.1%)、さらに、内視鏡や全身麻酔での手術が必要になるケースが非常に多かった(65.5%)ようです。

一般家庭で魚料理を食べる際は、カレイとヒラメの骨に最も注意するべきかもしれません。

ノドに刺さったら一番危険な「魚の骨」は…? 魚骨異物の実態を調査
(画像=魚骨異物の疾患例 / Credit: 東北大学 – 魚の骨が刺さる事故の実態を詳細に調査 -カレイとヒラメは骨に注意!(2021)、『ナゾロジー』より引用)

今回の研究により、魚骨異物4歳以下の幼児で生じるケースが多く、内視鏡や全身麻酔といった負担の高い治療が必要となる場合があることが分かりました。

また、魚の種類によって刺さりやすい部位や摘出法が違うことも明らかになり、今後の診察に大いに役立つと考えられます。

参考文献
魚の骨が刺さる事故の実態を詳細に調査 -カレイとヒラメは骨に注意!(東北大学)

元論文
Characteristics of fish-bone foreign bodies in the upper aero-digestive tract: The importance of identifying the species of fish

提供元・ナゾロジー

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