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新車納車されたら「慣らし運転」は必要?

新車が納車された後にやるべきことのひとつが「慣らし運転」です。言葉だけなら聞いたことがあるという人も多いのではないでしょうか。慣らし運転の目的は「車を慣らして長持ちさせること」です。
慣らし運転のやり方や、そのメリットについて解説します。その上で、本当に必要なのか?自動車メーカーは何と言っているのか?という点にまで踏み込んで説明します。
そもそも「慣らし運転」とは?

慣らし運転とは、一定の走行距離に達するまで、エンジンをあまり吹かさずに走るというものです。エンジンを吹かさなければ速度は出ませんので、車の走行性能を抑えて一定の距離で走行し続けるということです。
例えば、新品の革靴は固くて履きにくいものですが、履いていると徐々に足に馴染んで歩きやすくなります。それと同じで、車を馴染ませて調子を整えるのが目的ということになります。
慣らし運転のメリット・デメリット

慣らし運転のメリット
1.駆動部品の動きをなめらかにする
車には多くの部品が取り付けられており、それらの部品は駆動するものが多いです。納車直後でまだあまり駆動していない部品は、ある程度動かすことで、部品同士が馴染んで動きがなめらかになります。
代表的な駆動部品としてはエンジン内部のシリンダーなどの部品や車の骨格となるフレームとフレームの接合部分、サスペンション、さらにタイヤなどがあります。
エンジン
エンジンは、金属同士が擦れ合って動いています。慣らし運転をせずに急激に擦れ合わせてしまうと、金属同士にアタリがついておらず摩耗が激しくなる可能性があります。不調や故障の原因となりエンジンの持っている本来の性能が引き出せなくなるのです。
フレーム
車のフレームは、フレーム同士がわずかにたわむことで強度が増すという一面を持っています。たわみを少なくして強度を上げている車もありますが、一般的な乗用車であれば、わずかにたわむことで衝撃を吸収するなどして強度を高めているのです。
サスペンション
サスペンションは、分かりやすく言うと、ソファーのバネのようなものです。新車時は固めですが、走っていくと振動などで徐々にバネに反動が加わり、馴染んできます。固くても徐々に柔らかくなり、乗り心地が良くなっていきます。
タイヤ
新品のタイヤは、表面がかたく地面をつかむ「グリップ力」が十分ではありません。ある程度走行することで、タイヤ表面にザラつきが増えていきグリップ力が増して、安定した走行につながるのです。
駆動部品をなめらかに動くようにすることで、故障や過度な摩耗が防げて各部品が長持ちします。結果として、車そのものの寿命が伸びるというわけです。
2.自分の運転を慣らせる
慣らし運転のメリットはドライバー側にもあります。新車となれば、初めて運転する車になるわけです。車を慣らすということは、ドライバーの運転操作を慣らし、車の特性やクセを知る期間でもあるのです。
慣らし運転のデメリット
慣らし運転のデメリットは少ないでしょう。強いて言えば、高速道路などで思いっきり加速できないという点くらいでしょう。とはいえ、まだあまり車に慣れていない期間であれば、無理な加速はしないほうが無難です。また、慣らし運転期間が終わっても安全のため、急加速は控えましょう。
慣らし運転のやり方

慣らし運転のやり方は諸説あります。自動車メーカーや車種によって異なる場合がありますが、一般的によく言われているやり方を紹介します。
- エンジンの回転を4,000回転以上にしない
- アクセルを全開に踏み込まない
- ハンドルやブレーキを急に操作しない
- タイヤは走行距離100kmまでは、時速80km/h以下にして走る
- 走行距離1,000~2,000kmくらいまでは上記を守る
ただし、これらのやり方は一般道路で法定速度を守って走っていれば、意識しなくても実現できることです。あまり気負う必要はありません。
慣らし運転は必要?不要?メーカーの回答
意識しなくても慣らし運転になっているということは、慣らし運転が本当に必要なのか?と思った人もいるでしょう。
事実、慣らし運転は必要だという意見と、不要だという意見に分かれることが多いのです。
ならば、車を製造・販売している自動車メーカー各社はどのように考えているのでしょうか。いくつかの自動車メーカーをピックアップし、公式に発表している見解を紹介します。
トヨタ自動車

慣らし運転の必要はありません。ごく一般的な安全運転に心がけていただければ、各部品のなじみは自然と出てきます。お客様が新しい車に慣れられるための期間を慣らし運転の期間と考えてください。
出典: トヨタ自動車株式会社
トヨタは慣らし運転不要という考えです。
日産自動車
一般的にエンジン本体や駆動系など、クルマの性能を十分に引き出すためには、ならし運転が必要です。走行距離1600kmまでは、適度な車速、エンジン回転数で運転してください。
出典: 日産自動車株式会社
日産は必要だという見解です。
ホンダ

現在の車は、エンジンやその他の部品精度が向上しているため、慣らし運転を行う必要はありません。ただし、機械の性能保持と寿命を延ばす為には以下の期間はエンジンや駆動系の保護の為に、急激なアクセル操作や急発進を出来るだけ避けて下さい。
・取扱説明書に慣らし運転期間の記載がある場合 → その期間
・取扱説明書に慣らし運転期間の記載が無い場合 → 1000km走行までを慣らし運転の期間出典:本田技研工業株式会社
ホンダは、基本不要だけど、否定はしていません。取扱説明書に記載があればやりましょう、という意見です。
スズキ

現在販売しているスズキ車は、特に慣らし運転の必要はありません。慣らし運転はお客様が新しい車に慣れるまでと考え、急発進・急ブレーキなどを避け、安全運転を心がけてください。
出典:スズキ株式会社
スズキもトヨタと同じように慣らし運転不要という考え方です。
BMW

かつては、エンジンの慣らし運転は新車にとって当然のことでした。そして今もなお、最初の約2,000kmに達するまでは、エンジンが高回転・高負荷になるような運転は避け、最初の約2,000kmは、エンジンの回転速度を中回転域で保つべきという意見があります。これによって、エンジンとトランスミッションが十分な時間をかけて適応し合うことができるからです。
出典: ビー・エム・ダブリュー株式会社
BMWは、慣らし運転必須ではないが、やったほうがいいという主張です。
メーカーが慣らし運転が必要としている車種
自動車メーカーによって、慣らし運転の是非は様々です。
その中でも自動車メーカーが慣らし運転は必要だとしている代表的な車種を紹介しましょう。
日産 GT-R

日産のGT-Rは、「究極のドライビングプレジャーの追求」をコンセプトにした、日本が世界に誇るスポーツカーです。
2007年の登場以来、大幅なモデルチェンジをせず、ひと目見ればそれとわかるスタイリッシュなデザイン。エンジンをひとりの職人が責任を持って組み上げるクラフツマンシップにのっとった製造が徹底されているプレミアムな一台です。
このGT-Rには、慣らし運転のやり方が取扱説明書に記載されています。主な項目を紹介すると以下が明記されています。
- 500kmまではアクセルペダルを半開までにし、ゆっくり走る
- エンジンの回転数は3,500回転以下に抑える
- 1,000kmまでは低速ギヤ(1~3速)でのアクセルペダルを全開にした急加速を避け、ゆっくり踏み込む
- 不必要な急ハンドルや急ブレーキは避ける
取扱説明書に慣らし運転の記載がある車種については、「車の不調を生じさせないため」という意図と、「車の性能を最大限に引き出してほしい」という思いが含まれています。
結論:慣らし運転はやった方がいい!

慣らし運転を不要だとしている自動車メーカーもありますが、完全に不要であると公式に認めているメーカーは少ないようです。上記には記載されていない自動車メーカーにも取材してみましたが、概ねやった方がいいという回答が得られました。
特に、公式には不要であるとしながらも、日産 GT-Rのように車種によっては取扱説明書に慣らし運転のやり方を記載しているというケースもありました。
よって、ここでの結論は、「新車の慣らし運転はやった方がいい!」ということにさせていただきます。
ただ前述の通り、一般道路で法定速度を守って走行すれば、そのこと自体が慣らし運転になるということを考えると、あまり意識する必要はないのかもしれません。
昔よりも車の部品や組み立ての精度が高まっていることからも、慣らし運転が必須であるとは言い切れないことも事実のようです。
文・MOBY編集部/提供元・MOBY
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