東南アジアに分布するブラキメレス属(Brachymeles)のトカゲには、進化の中で手足をなくし、その後ふたたび四肢を取り戻した種がいます。
この理由について、クラーク大学、イェール大学、マサチューセッツ大学アマースト校が調査したところ、ブラキメレス属は気候変動に応じて、有利な方に進化している可能性が示唆されました。
乾燥した環境では手足をなくし、湿った環境では手足がある方が有利なようです。
研究は、11月11日付けで『Proceedings of the Royal Society B』に掲載されています。
進化のルールを破ったトカゲ?
専門家たちは、進化上のルールとして「ある生物が長い年月をかけて複雑な構造(からだの部位)をなくした場合、後の時代の子孫が失った部位を再び発現する可能性はきわめてゼロに近い」と指摘します。
しかし、東南アジアのブラキメレス属は、そのルールを破った数少ない生物です。
これまでの研究で、ブラキメレスの一部は、約6200万年前に手足を失い、その4000万年後に再び四肢を取り戻したことがわかっています。
中には、手足を失ったままの種もいれば、2本指の小さな足が中途半端に生えていたり、5本指の足を4本とも完全に取り戻している種もいます。
これは一体なぜなのでしょう。
環境によって手足のメリット・デメリットが逆転
研究チームは、この謎を解明するべく、フィリピンとタイに生息する13種のブラキメレス属(足を取り戻した種と失ったままの種)を約150匹採捕し、環境の異なる土壌コースでの走行・穴掘りテストを実施しました。
目的は、手足の有無のメリット・デメリットが、環境の違いでどう異なるかを明らかにすることです。
その結果、手足のないトカゲは、乾燥した土壌でより高い移動性を示すことが判明しました。穴を掘るのも、乾いた砂地ではヘビのように頭部から潜り込む方が便利なようです。
反対に、手足のあるトカゲは湿った土壌で移動性に優れ、湿地の上を走るには4つ足が有効であることを示しています。
また、硬く湿った土を掘るには、乾いた砂地の4倍の力が必要なため、スコップの役割をする四肢が有効でした。
同チームは「ブラキメレスの一部は、生息域の湿度が高くなったことで足を再進化させたのではないか」と述べています。
中途半端に手足が生えた種も気候変動に合わせて再進化している途中なのかもしれません。
参考文献
phys
newscientist
提供元・ナゾロジー
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