効果的なマーケティングを行うためには、ターゲットを絞ることが大切です。ターゲットを絞る際の指標としては、性別や居住地などが挙げられますが、特に重要なのは趣味嗜好や価値観、思考・行動パターンなどに大きな影響を与える世代と言っても過言ではありません。
今、マーケティング界隈では「Z世代」が注目を集めています。しかし、Z世代とはどの世代を指しているのか、なぜ「Z」が冠されているのか、どのような特徴を持っているのか、よく知らないという人は多いでしょう。
そこで、本記事ではZ世代の概要や語源、特徴、X・Y世代との違い、Z世代に注目すべき理由についてわかりやすく解説したうえで、Z世代に効果的なマーケティング施策を紹介します。
Z世代とは?
Z世代に明確な定義はありません。ただ、アメリカでは1997年から2012年の間に生まれた世代を指す言葉として定着しているようです。
一方、日本では、広く1996年から2015年の間に生まれた世代を指す言葉として用いられています。この定義に従えば、Z世代の2021年時点の年齢は6~25歳となります。
なお、Z世代の前の世代である1981年代後半から1995年の間に生まれた世代が「ミレニアル世代」と呼ばれていることから、「ポストミレニアル世代」と呼ばれることもあります。
Z世代の語源
Z世代という呼称の語源は、カナダの小説家であるダグラス・クープランドの処女作『ジェネレーションX―加速された文化のための物語たち』に求められます。
同作は、都会の喧騒を逃れて砂漠のバンガローで暮らす3人の男女を通して1940年代後半から1960年代前半にかけてアメリカで巻き起こったベビーブームの終焉後に生まれた世代の心理を鮮やかに描き出した小説です。
1991年に出版されると瞬く間に世界的なベストセラー作品となり、1960年代後半から1980年代初頭に生まれた世代を指す言葉として「ジェネレーションX(X世代)」という新語が広く知られるようになりました。
これを皮切りに、1980年代から1990年代前半に生まれた世代を「ジェネレーションY(Y世代)」、1990年代後半から2010年代前半に生まれた世代を「ジェネレーションX(X世代)」と呼ぶようになったと言います。ちなみに、Y世代とミレニアル世代は同義です。
なお、X世代の次の世代はギリシャ文字の筆頭である「α(アルファ)」を採用し、「ジェネレーションα(α世代)」と名付けられています。
Z世代の特徴
ひとえにZ世代と言っても、社会人として活躍している大人から年端もいかない子どもまで、その層は幅広いため、具体的な人物像が浮かびにくいものです。
マーケティングのターゲットとしてZ世代を考える際には、現時点で10代後半から20代前半の人物を想定すると良いでしょう。
現時点で10代後半から20代前半の年齢に達しているZ世代に見られる大きな特徴としては、以下の3つが挙げられます。
デジタルネイティブ
Z世代はインターネットが当たり前に存在する時代に生まれ育った世代であるため、デジタルネイティブとも呼ばれています。
物心がついた頃から親をはじめとする周囲の大人たちがインターネットを利用している姿を見ているうえ、自身も小学校教育などを通して早いうちからインターネットに接しているため、インターネットを利用することに抵抗感や苦手意識を持っている人はほとんどいません。
初めて手にしたモバイルデバイスがスマートフォンだったという人も多く、SNSを必需ツールとして生活している人が少なくない点や、VRやIoTをはじめとする新しいデジタル技術もすぐに取り入れて使いこなせる点も、他世代とは一線を画す特徴であると言えるでしょう。
リアリスト
Z世代はバブル崩壊後に生まれ、子ども時代には就職氷河期やリーマンショックを目の当たりにしている世代です。好景気を知らないうえ、少子高齢化に端を発する問題が山積していることを耳にたこができるほど聞かされて育ったことから、華々しい生活や希望に満ちた未来を期待できずにいる人が少なくありません。
そのため、Z世代の多くはラグジュアリーなものに囲まれた夢のような世界観よりも、身の丈に合った生活を楽しむリアルな世界観を好みます。
また、周囲に羨ましがられることよりもありのままの自分を受け容れてもらうことに価値を置くためにハイブランドよりも個性的なものに魅力を感じる点や、実用性や経験を大切にするためにモノ消費よりもコト消費を重んじる点も、注目に値するでしょう。
ダイバーシティ&インクルージョンを重視する
Z世代は小学生のうちから人権教育を受けて育った世代であることから、多くの人が自分の大切さとともに他の人の大切さを認めることができる高い人権意識を持っています。
また、Z世代はブラック企業やハラスメント、LGBT、ブラック・ライブズ・マターなど、人権にまつわる課題に立ち向かうことが当たり前の社会で生きています。
そのため、多様な個性を認め、尊重し合うダイバーシティ&インクルージョンの重要性を噛みしめている人が少なくありません。
加えて、SNSで積極的に情報発信をすることが人権問題をはじめとするあらゆる社会問題を解決することにつながり、社会を良い方向に導く力になることを強く実感している人が多い点も、Z世代の大きな特徴と言えるでしょう。
Z世代とX・Y世代との違い
世代が違っても、近い世代同士は似ている特徴を有していることが少なくありません。しかし、異なる世代として扱われているからには、少なからず異なる特徴を有しているものです。
Z世代と近い世代であるX・Y世代とを比べると、Z世代の実像がより鮮明に浮かび上がってきます。
以下より、Z世代とX世代との違い、Z世代とY世代との違いをそれぞれ解説します。
Z世代とX世代との違い
Z世代がデジタルネイティブと呼ばれているのに対し、X世代は、デジタルイミグラントと呼ばれています。
デジタルイミグラントとは、幼少期にはインターネットが普及していなかったものの、青年期にインターネットを利用できるようになった世代を指す言葉です。
X世代は若いうちからインターネットに触れていたために上の世代と比べてデジタル技術を需要する柔軟性を持ち合わせているものの、子ども時代から身に付いているテレビから情報を取り入れるスタイルをベースとして保持している人が少なくありません。
他方、Z世代の間ではテレビから受け身で情報を収集するよりも、インターネットを活用して能動的に情報を手に入れることが主流となっています。
Z世代とY世代との違い
Y世代はZ世代と同様、デジタルネイティブと呼ばれることがあります。しかし、Y世代はインターネットが普及していない時代も生きているため、Z世代の方が真のデジタルネイティブと言えるでしょう。
早いうちからインターネットに慣れ親しんでいる両世代は、オンラインで買い物をすることに抵抗感を持っていません。ただ、Y世代はオンラインショップで買い物を完結させることが少なくないのに対し、Z世代はオンラインショップと実店舗の両方を活用することが多いと言われています。
また、Z世代とY世代とは、モノ消費よりもコト消費を重視するという点で似通っています。ただし、Z世代はリアルで共感できるサービスに惹かれるのに対し、Y世代は非日常を味わえるサービスに惹かれる傾向があります。
Z世代に注目すべき理由
アメリカでは、Z世代が総人口の4分の1を占めていることから、多くの企業がZ世代向けのマーケティングに取り組んでいます。
一方、日本の総人口に占めるZ世代の割合は総人口の5分の1以下であり、アメリカと比べると企業にとってのZ世代の重要性は低いと言わざるを得ません。
とはいえ、日本のZ世代を無視することは得策ではありません。なぜなら、近い将来日本においてもZ世代が消費の主役となるうえ、Z世代の後の世代は皆Z世代と同じデジタルネイティブとなるからです。
今からZ世代の特徴を押さえ、Z世代向けのマーケティングを実践することは、企業の持続可能性を高めるうえで欠かせないと言って良いでしょう。
Z世代に効果的なマーケティング施策
Z世代には、従来通りのマーケティングが通じないことが多いです。そのため、Z世代の心をつかみたいのであれば、Z世代に特化したマーケティング施策を打ちましょう。
今、Z世代に効果的とされているマーケティング施策としては、以下の3つが挙げられます。
シームレスな顧客体験の提供
リアルとオンラインを区別せずに暮らしているZ世代には、リアルとオンラインの間に壁を感じさせないシームレスな顧客体験を提供することが大切です。
具体的な施策としては、以下のようなものが挙げられます。
● 実店舗でもオンラインショップでも使えるポイントを発行する。
● 実店舗においてもアプリですべての注文を受ける。
● 商品のレビューをチェックできるQRコードを商品棚などに設置する。
● 顧客とのコミュニケーションを重視するショールーム型の店舗、いわゆる「売らない店舗」を展開する。
等身大でリアルな情報の発信
リアリストであるZ世代は、等身大でリアルな情報に心を惹かれます。そのため、Z世代のインフルエンサーを起用してSNSで情報を発信すれば、多くのZ世代に商品・サービスの魅力を伝えることができるでしょう。
また、インスタライブやYouTube Liveなど、リアルタイムで双方向コミュニケーションを取ることができるライブ配信サービスを活用することもおすすめです。Z世代に親近感をもたらすことができるうえ、Z世代の声を直接聞くことができます。
コストパフォーマンスの良さをアピール
Z世代は消費に対して堅実であるため、商品・サービスを選ぶ際には価格以上の価値があるかどうかを吟味します。そのため、Z世代に向けてマーケティングを行う際には、コストパフォーマンスの良さをアピールすることが有効です。
なお、物を持つことに執着しないZ世代の多くは、少額でさまざまな商品・サービスを利用できるサブスクリプションサービスやシェアリングエコノミーに魅力を感じています。Z世代に商品・サービスのコストパフォーマンスの良さを強く印象付けたいと考えるのであれば、商品・サービスの提供方法を見直すことも検討してみると良いでしょう。
まとめ
Z世代の定義は明確に決められていません。しかし、日本国内でのマーケティングを考える際には、1996年から2015年の間に生まれた世代を指す言葉として捉えておけば間違いないでしょう。
Z世代の主な特徴としては、デジタルネイティブであること、リアリストであること、ダイバーシティ&インクルージョンを重視していることの3つが挙げられます。
X世代と比べてインターネットで能動的に情報収集することが多く、Y世代と比べてオンラインショップと実店舗の両方を活用することが多いこと、リアルで共感できるサービスに興味を持つことも特筆に値するでしょう。
Z世代の特徴は後の世代にも受け継がれていく可能性が高いため、Z世代向けのマーケティングを実践することは、企業の持続可能性を高めることにつながることを期待できます。
先を見据えたマーケティングを実施したいと考えている人は、今回紹介したZ世代に効果的なマーケティング施策をぜひ実践してみてください。
文・『MarkeTRUNK』編集部/提供元・MarkeTRUNK
【関連記事】
・「インサイト」とは?マーケティング用語としての意味とニーズを具体例で解説
・PPM分析とは? マーケティングの基本戦略策定フレームワークを解説
・マーケティングミックス(4P)とは?マーケティング実行戦略の基本を学ぶ
・競合分析とは?マーケティング分析のフレームワーク「3C分析」を解説
・マーケティングはなぜ必要?企業の存在目的とマーケティングの重要性、意義、役割とは