》ドイツの新鋭が手がけるデイリーユースのトゥールビヨン
機械式時計の複雑機構の中でもその独特の機能美から特に高い人気を集めているトゥールビヨン。200年以上前にブレゲの創業者であるアブラアム=ルイ・ブレゲによって開発された古典機構の1つであり、テンプを動かすことで姿勢差で生じる重力の負荷を相殺し、時計の精度を高めることを目的としている複雑機構の代表格だ。
一般的に、高額なイメージが強いが、近年は専業のサプライヤーが登場したこともあり、手頃な価格帯のトゥールビヨンが数を増やしている。
今回は、そんなデイリーユースできるトゥールビヨンから、ドイツのフォルツハイムを拠点にする新鋭“ヴァルドホフ”に注目。定番2モデルの実機レビューに加え、現在クラウドファンディングで先行発売を開始している新作モデルも併せて紹介していく。
》実機レビューするモデルはコチラ
WALDHOFF(ヴァルドホフ)
ヴァンガード V8
近年、高級時計でトレンドとなっているフレーム構造のスケルトン文字盤を採用したヴァルドホフの代表モデル。幾何学的なフレームで香箱や歯車を固定するモダンな文字盤デザインにより、通常であれば文字盤で隠されている機械式ムーヴメントと、トゥールビヨンのメカニカルな造形美を際立たせている。トゥールビヨン自体は、専業メーカーであるPTS社の機械を採用しているが、ドイツのフォルツハイムにある工房で時計のデザイン、組み立て、品質管理を行っているのもヴァルドホフの特徴となっている。
》ムーヴメントの全貌を楽しめるスケルトンダイアル
一般的な機械式ムーヴメントは歯車などのパーツをプレートに固定するが、このモデルではプレートを肉抜きして歯車を固定する構造をフレーム化しているのが特徴。香箱にもスケルトン加工を施しており、機械式ならではのメカニカルな造形を細部まで楽しむことができる。
フレーム部分をブルーにデザインしたことで、トゥールビヨンのキャリッジや、歯車、香箱などのパーツが際立ち、メリハリの利いたデザインになっているのも魅力的だ。
手頃な価格帯の機械式時計は42時間前後のパワーリザーブ(最大巻き上げ時の駆動時間)が主流だが、このモデルでは、動力となるゼンマイを納めた香箱を二つ搭載した“ツインバレル”仕様にすることで、約80時間のロングパワーリザーブを実現。ゼンマイを納めた香箱は裏面にもスケルトン加工を施しており、シースルーバックからもトゥールビヨン搭載ムーヴメントを鑑賞することができる。
》直線を生かしたソリッドで重厚なケースも魅力的
ケース、ブレスレットの素材には316Lステンレススチールを採用。12角のベゼルやラグなど、ディテールに直線的に造形を取り入れることで、幾何学的なスケルトン文字盤とマッチするでモダンなスタイルに仕上げられている。
リューズと反対側のケースサイドには、シリアルナンバーを刻印したプレードを配置。デザイン的なアクセントを加えつつ、所有欲を満たしてくれる心憎いデザインと言えるだろう。ベゼル、ケースはステンレススチールケースのメタリックな質感を引き出すヘアライン仕上げで統一。規則的な筋目加工が直線的な造形を際立たせている。ヘアライン仕上げは鏡面仕上げに比べて皮脂汚れや指紋が目立ちにくいため、デイリーユースで着けやすい。
》手首に着けたときのサイズ感もチェック
サイズは直径43mm(ラグを含めた長さは49mm)、厚さ13mm。一般的なメンズウオッチよりも少し大きめだが、あえてフラッシュフィットを採用せずに、ブレスレットを直接ラグに設置するデザインにより装着感は悪くない。可動域が広いため、形状に合わせて手首にフィットしてくれる。