目次

  1. 耳の迷走神経刺激は外国語の聞き取り能力を向上させる
  2. 様々な学習促進プログラムが作成可能
耳につけるだけで、外国語のリスニング能力が2倍になるウソみたいな装置。耳から「脳神経」を刺激する
(画像=電気刺激は迷走神経を介して直接脳に伝わる/Credit:Kenneth Probst / UCSF、『ナゾロジー』より 引用)

point

  • 迷走神経は脊髄を介さず脳に繋がっている延長された脳の一部である
  • 迷走神経を外国語のリズムにあわせて刺激すると外国語のヒヤリング成績が伸びた

未来の学習は電気刺激で行われるかもしれません。

新しく行われた研究で、外国語の発音にあわせて耳の迷走神経を電気刺激すると、外国語のヒヤリング学習速度が最大2倍まで強化できることが示されました。

耳の迷走神経は、脳神経に脊髄を介さず直接接続されていることから、一種の「延長された脳」とも言え、迷走神経の刺激は脳への直接刺激にもなります。

怪しげな雰囲気を漂わせる研究ではありますが、研究内容はあの世界随一の学術雑誌「Nature」のパートナー誌である「npj Science of Learning」から発表されており、その信ぴょう性高いと言えるかもしれません。

では実際に電気刺激がどうやって学習能力を強化するのか、見ていきましょう!

耳の迷走神経刺激は外国語の聞き取り能力を向上させる

耳につけるだけで、外国語のリスニング能力が2倍になるウソみたいな装置。耳から「脳神経」を刺激する
(画像=電気刺激での学習効果は簡単な発音ほど効果が上がりやすかった/Credit:npj Science of Learning、『ナゾロジー』より 引用)

これまでの研究により迷走神経の電気刺激が「てんかん」「うつ病」「炎症」などに様々な疾病に対して効果があることが明らかになってきています。

そこでピッツバーグ大学の研究者は耳に存在する迷走神経をイヤホン型の装置で電気刺激することで、学習効果の増大ができないかと考えました。

迷走神経は脊髄を介さず脳神経と直接接続されているため、中国語の発音にあわせて刺激することで、脳が中国語のリズムを無意識のうちに覚えると予想したのです。

実験にあたっては、中国語になじみのない英語を母国語にする人間を無差別に選出し、中国語の発音聞き取り学習をしてもらいました。

このとき、一方のグループは電気刺激アリで、もう一方は何も装置を使いませんでした。

なお電気刺激のレベルは、人間の知覚できる最低値を下回るものでした。

結果、電気刺激を行ったグループは何もしないグループに比べて音声聞き取りテストにおいて平均で13%~15%高い得点をとったほか、2倍の速さで学習のピークパフォーマンス(最大効率)に達したことが判明しました。

様々な学習促進プログラムが作成可能

耳につけるだけで、外国語のリスニング能力が2倍になるウソみたいな装置。耳から「脳神経」を刺激する
(画像=学習サポートは電気刺激におまかせ/Credit:depositphotos、『ナゾロジー』より 引用)

以前に行われた他の研究において、迷走神経の刺激が脳内においてコリン作動性神経を活性化していることも報告されています。

以上の経緯から、研究者は、迷走神経の電気刺激が脳の広範にわたる神経伝達物質の分泌を促進し、結果として聴覚刺激への注意力を高めたのだと結論しました。

また電気刺激とは別に、テストでの高得点も好循環につながったと指摘しました。

100点満点のテストで15点以上、余分に獲得できれば、学生でなくともやる気が出てくるからです。

今回の研究で使われた電気刺激法は刺激のタイミングを変えることで、中国語以外の言語にも対応でき、汎用的な外国語学習のサポート器具として使用することが可能です。

またこの技術は身体を一切傷つけない非侵襲的な方法であるために、脳卒中後のリハビリテーションをはじめ様々な学習用途へと拡大することも可能になるようです。

研究チームは次のステップとして基礎となる神経メカニズムを解き明かし、各学習項目における最適な刺激パラメーターを模索していくと述べています。

実現すれば、電気ドーピングが可能となり、学習の個人差を最小化できるでしょう。

もしかしたら、未来の本屋さんの参考書売り場には、学習内容に合わせた電気刺激プログラムが本と一緒に売られているかもしれませんね。

研究内容はアメリカ、ピッツバーグ大学のフェルナンド・リャノス氏らによってまとめられ8月6日に学術雑誌「npj Science of Learning」に掲載されました。

Non-invasive peripheral nerve stimulation selectively enhances speech category learning in adults

reference: sciencedaily / written by katsu

提供元・ナゾロジー

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