Point
■400年前に実在した悪徳医師の診断ノートの記録をデジタル化し、オンラインで公開
■サイモン・フォアマンという医師は当時有名な占星術師で、オカルト治療や水銀治療など誤った医療措置を行なっていた
■フォアマンのノートはエリザベス1世時代を記録する貴重な文書として、研究が進められている
悪徳医師が残した400年前の診断ノートがデジタル公開された。
医師の名はサイモン・フォアマン、1552〜1611年の間イングランドに実在した悪名高い占星術師だ。彼が残したノートには非人道的な医療処置の数々が記録されている。
ただデジタル化作業を行なったケンブリッジ大学の研究チームによると、エリザベス1世時代の医学・文化的記録を残しているものとして非常に価値があるという。
記録ノートは現在、オンライン上記で一般公開されている。
Casebooks
医療的役割も担っていた「占星術」
フォアマンは学生時代、オックスフォード大学で医学と占星術を学んでいた。
当時の占星術は医学的な役割も担っていたという。とくにエリザベス1世治下のイングランドでは原因不明の疫病が蔓延し、専門的な治療を受けられない貧しい人々がこぞって占星術にすがったと言われている。
フォアマンを一躍有名な占星術師兼医師にしたのにはこうした背景があるのだ。
研究主任のローレン・カッセル教授も「当時の占星術は月が潮に影響するように、天体が見えない光線を通して人の心身に異常をきたすと考えられていた」と話す。
どうやらフォアマンはその民衆心理につけこんだようだ。
驚くべき診断ノートの全貌
フォアマンが残したノートは1596〜1603年の間に記録されたものとのこと。およそ8万件の診断内容が殴り書きされており、オンラインでは日付や占星術師、患者の症状別で検索することができる。
中にはフォアマンの非道徳的な人格をうかがわせる記述も見受けられる。彼は異常なナルシストであったらしく、気に入った患者をしょっちゅう口説いたりしていたようだ。
彼の診断方法はチャート式の占星術がメインとなっていた。まず患者に名前や年齢、住所、結婚の有無など12の質問をして占星術を行う。その結果に合わせて、医療措置を様々に変えていたようだ。
血を抜き出す瀉血方法はかなり多用されており、タバコを用いる誤ったハーブ治療も行なわれていた。
彼の治療法は過激さを増し、死人の頭蓋骨を粉末状にした薬を患者に飲ませていたという記録も残されている。さらに障害のある患者には、「2羽の鳩の腹を切り裂いて両足に履くと治る」というオカルト治療を推奨していた。
また処方箋の多くは明らかに有害なもので、水銀を含む危険なものまで記録として見つかっている。
フォアマンはその後、医師免許を剥奪され刑務所に収容され、1611年に死亡した。
現在残されたノートはエリザベス時代の貴重な記録文書として研究が進められている。
フォアマンは他に、シェイクスピアの上演を生鑑賞した記録を残しているという功績で知られているが、それも他人の剽窃という話が濃厚だという。どうもこの人の病理は根深いらしい。
提供元・ナゾロジー
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