イタリア・ルネサンス期に、画家・彫刻家・建築家・詩人として活躍した万能の天才、ミケランジェロ(1475〜1564)。

生前から高い評価を受け、現在でも西洋美術史における最高の芸術家の一人と見なされる、まさに「美の巨人」と呼ぶにふさわしい人物です。

しかしこのほど、イタリアの研究チームにより、ミケランジェロの生前の身長は157センチほどしかなかったことが示唆されました。

巨大すぎる名声とは裏腹に、本人はかなり小柄だったようです。

研究は、9月に学術誌『Anthropologie』に掲載されます。

目次

  1. 当時のイタリアでは決して「低身長」ではなかった?

当時のイタリアでは決して「低身長」ではなかった?

ミケランジェロは、芸術のあらゆる分野で傑作を世に残しました。

彫刻では、フィレンツェにある『ダヴィデ像』(1504年)、天井画では、ヴァチカンのシスティーナ礼拝堂にある『天地創造』(1508〜1512年)、祭壇画では、同じ礼拝堂にある『最後の審判』(1536〜1541年)が代表的です。

美の巨人・ミケランジェロの身長は「157センチ」程度だったことが生前の靴から判明
(画像=『ダヴィデ像』 / Credit: ja.wikipedia、『ナゾロジー』より 引用)
美の巨人・ミケランジェロの身長は「157センチ」程度だったことが生前の靴から判明
(画像=システィーナ礼拝堂の天井画『天地創造』に含まれる絵画の一つ『アダムの創造』 / Credit: ja.wikipedia、『ナゾロジー』より 引用)
美の巨人・ミケランジェロの身長は「157センチ」程度だったことが生前の靴から判明
(画像=『最後の審判』 / Credit: ja.wikipedia、『ナゾロジー』より 引用)

彼は、存命中に伝記が出版された初めての西洋美術家であり、それもあってか、かなりの記録文書や私物が残されています。

今回、イタリア・アーヴォラにあるFAPAB(法医人類学・古病理学・生体組織学)研究センターのチームは、ミケランジェロの死後に彼の自宅で発見された3足の靴を対象に調査しました。

革靴が一足と革製のスリッパが一つ(もう片方は1873年に盗まれている)で、3つともフィレンツェにあるカーサ・ブオナローティ美術館(Casa Buonarroti Museum)に所蔵されています。

美の巨人・ミケランジェロの身長は「157センチ」程度だったことが生前の靴から判明
(画像=調査対象としたミケランジェロの生前の履物 / Credit: Casa Museo Buonarroti/Anthropologie(2021)、『ナゾロジー』より 引用)

本研究は、生前の履物と衣服などの測定値に基づいて、ミケランジェロの身長を推定した初の試みです。

分析の結果、ミケランジェロの身長は、5フィート2インチ(約157.5センチ)であったことが示されました。

今日におけるヨーロッパの成人男性としてはかなり低い数値ですが、研究者らは「ミケランジェロが生きていた15〜16世紀のイタリアでは、珍しくなかったのかもしれない」と述べています。

この結果は、同時代の芸術家であるジョルジョ・ヴァザーリ(1511-1574)が書いたミケランジェロに関する記述と一致します。

ヴァザーリによると、ミケランジェロは「肩幅が広いが、全体的に細身の体格で、身長は平均的であった」とのこと。

これはミケランジェロが小柄であった点と、彼の身長が当時は普通であった点を裏付けています。

美の巨人・ミケランジェロの身長は「157センチ」程度だったことが生前の靴から判明
(画像=イタリアの画家ジャコピーノ・デル・コンテ作の「ミケランジェロの肖像画」 / Credit: commons.wikimedia、『ナゾロジー』より 引用)

また、ミケランジェロ自身の著書や描かれた肖像画などから、晩年に健康を害していた可能性があり、痛風や鉛中毒、重度の関節炎などを患っていたと考えられています。

そのため、今回の結果は、ミケランジェロが88歳で亡くなる直前の身体状況を反映している可能性があり、若い時はもう少し大柄だったのかもしれません。

それでも今日からすると、美の巨人の身長がかなり低かったことに変わりはないでしょう。

参考文献
Artistic giant Michelangelo was actually quite short Michelangelo’s Short Stature Revealed By His Shoes
元論文
The alleged shoes of Michelangelo Buonarroti: anthropometrical considerations

提供元・ナゾロジー

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