近年、ネット流行語大賞として大きな話題となり、社会問題にも発展した「ステマ(ステルスマーケティング)」。
ステマという言葉自体は耳にしているけれど、具体的にどのような行為を指すものなのか、その意味や広告内容についてはよく知らないというマーケティング担当者も多いでしょう。
本記事では、ステマが持つ言葉の意味からその問題点、またステマ広告における規制やペナルティーまで詳しく解説します。

目次
1.ステマの意味とは?
2.ステマにあたる事例
3.なぜステマが許されないのか?
4.ステマは違法?広告の規制やペナルティーとは?
5.まとめ

ステマの意味とは?

TwitterやInstagram、Facebookなどのソーシャルメディアが普及したことで、多種多様な情報発信や広告活動が可能となり、ステマによるリスクも深刻化していると考えられます。

ステマとは、ステルスマーケティング(stealth marketing)の略語で、消費者に宣伝広告であることを隠し、悟られないようにセールスプロモーション活動を行うことです。海外ではこっそり行うという意味で、アンダーカバーマーケティング(undercover marketing)とも呼ばれています。
宣伝広告や販促活動と気づかれないように一般消費者の立場を装って行われることが特徴で、芸能人や著名人、インフルエンサーなどに、宣伝広告であることを伏せて商品やサービスのPRをしてもらう場合もステマの対象となります。

商品やサービスとなんらかの関係があるにもかかわらず、意図的に宣伝・広告であることを隠す行為という意味では、ステマはいわゆる「サクラ」に類似するものだといえるでしょう。
サクラとは偽客という意味で、客のふりをして物を褒めたり買ったりするなど、周囲の購買意欲を高める者を指しています。
ステマも同様に、広告ということを隠してブログや情報サイトに高評価の体験談を投稿したり、SNSや口コミサイトのコメントを操作したりするなど、意図的に消費者をだまして、良い印象を持たせようとする行為です。

ステマにあたる事例

これまでに発覚したステマで、社会的に大きな問題となった代表的な事例を見ていきましょう。

人気グルメサイトの口コミ

2012年に大手価格比較サイトが運営していた人気グルメサイトで、飲食店側がサイト内のランキングをアップさせるために「やらせ業者」を活用していたことが発覚。金銭を受け取る代わりに高評価の口コミを投稿するという行為が行われていました。
グルメサイトの運営側は独自のシステムでチェック体制を強化し、不自然な評価を排除するなどステマを防止する対策をとりましたが、飲食店の口コミ情報を扱うサイトとしては、消費者からの信用が一定期間ガタ落ちしてしまったといえるでしょう。

芸能人のブログ投稿

2012年に発覚し、運営者による詐欺事件としても有名なオークションサービスでのステマ行為。消費者が入札するごとに手数料が発生するオークションで、運営側がボットを使い自動入札を繰り返し行うなどして、入札者から手数料をだましとっていた事件です。
また、複数の芸能人がこのオークションで落札していないにもかかわらず、商品を所持している写真付きで「安く落札できた」などの内容をブログに掲載。その後、運営側から多数の芸能人に紹介料として現金が渡されたことも発覚し、一般消費者を装った悪質行為として、社会的責任が問われました。広告に使用されたブログの運営会社は、ステマ対策として当該の芸能人が投稿していたブログのアカウント削除などを行っています。
ステマという行為が、広く世間に知られるきっかけになった事件だといえるでしょう。

人気映画のTwitterマーケティング

2019年、ある映画の公開後に、SNS上で複数の漫画家がほぼ同時に映画を宣伝するような内容の投稿を行ったことが問題視されました。
いずれの投稿も映画を褒めたり好意的に評価したりするもので、SNSのユーザーから「あきらかな広告宣伝ではないか」という声が上がり、炎上しました。
企業側はいったんステマを否定しましたが、後日、SNSの漫画投稿に金銭授受があったことを発表。また、マーケティング施策だったのにもかかわらず「PR」という表記が伝達ミスで抜け落ちてしまったことを公式Webサイトで謝罪しています。
意図したステマではなかったと説明されたものの、大作といわれるほど人気の高い映画の続編だったこともあり、多くの消費者がその疑惑にショックを受けたといえるでしょう。

なぜステマが許されないのか?

消費者はステマが行われると、その商品・サービスのイメージや購入に対して、正しい判断・選択ができません。ステマ広告によって本来行われるはずだった適切な評価がコントロールされてしまい、消費者にとって信頼できる第三者の声がどれなのか、まったくわからなくなってしまうからです。
また、偽りのイメージを与えられた消費者からすれば、企業に「だまされた」と感じ、商品やサービスの購入にまで至っていた場合、著しく「損をした」「不利益を被った」という気分になるかもしれません。企業への信頼が一気に失われる可能性も考えられます。特定の組織のみならず、その業界全体に影響が及ぶこともあり得るでしょう。

ステマが発覚した際に生じる企業のリスクは計り知れません。近年、ESG(環境、社会、ガバナンス)が企業価値として重要視される中、長期的にネガティブなブランドイメージがつくことはビジネス成長にとって大きなマイナスとなり、一度失った信頼を取り戻すのは非常に困難であるといえます。

ステマを行った企業には、実情をあきらかにした上で、危機管理体制の見直しや再発防止などの徹底した対策が求められます。ステマの意味やリスクをそれほど深く考えず、「ただ効率よく費用を抑えて拡散すること」「通常の広告以上に購買意欲を高めること」だけを追い求め、安易に消費者をあざむく不誠実な宣伝を行うことは、社会通念上許されません。
ステマはモラルに反する悪質な行為であり、倫理的に問題のあるマーケティング戦略だと企業側が深く理解しておくことが大切でしょう。

ステマは違法?広告の規制やペナルティーとは?

現在日本において、ステマが持つ意味や問題性については多くの人々に認識されているといえますが、実際には直接的な規制はなく、法律上の定義もされていない状況です。
つまり、現段階では違法であるかないかの線引が、既存の「不正競争防止法」や「景品表示法」などに委ねられているということになります。
不正競争防止法とは、虚偽表示や競合他社への風評被害の流布など、公正な競合を不当に妨害した場合に適用される法律です。
一方、景品表示法とは、不当表示や顧客誘引を防止することにより消費者を保護する法律で、その不当表示規制は以下の3つとなっています。

優良誤認表示
商品・サービスの品質、規格などの内容について、事実に相違して優良であると誤認される、または虚偽の表示。
有利誤認表示
商品・サービスの販売価格などの取引条件面について、あきらかに誇張して有利に見せかけて誤認される表示。
その他、誤認される恐れがある表示
商品・サービスの取引において、消費者に誤認される恐れがあるとして内閣総理大臣が指定する不当表示。

特にステマに当てはまるケースは、景品表示法だといわれています。評価サイトや口コミを通して実際の商品・サービスよりも優れていると見せかけた行為が、優良誤認表示の不当表示にあたると考えられるからです。
また、価格に対して印象操作を行った場合は、有利誤認表示に抵触するケースもあると覚えておきましょう。
景品表示法に違反した場合、消費者側から損害賠償を請求されたり、行政機関(消費者庁)から改善を促す措置命令が出されたり、非常に悪質だと判断されれば、ペナルティーとして課徴金の納付命令が発出される可能性があります。

もちろん、景品表示法にあたらなくても、あたかも中立の第三者を装っているなど、消費者の誤認につながる広告は不当表示と判断され規制の対象となり、「偽計業務妨害」や「信用棄損罪」に相当する場合もあるといえます。
広告によっては、ステマかステマでないかの線引がグレーゾーンになることも考えられますが、トラブルを未然に防ぐためにも、ステマがなぜ社会的問題となるのか、その意味や本質を企業側が深く知り、消費者にわかりやすい広告表示を目指すことが大切です。

現在、日本にはステマの明確なガイドラインはないものの、アメリカやイギリスなどの海外では、すでに法規制が行われています。
イギリスは2008年に「不公正取引からの消費者保護に関する規制法」を施行し、ステマを違法だと明確に規定しました。アメリカでも2009年に「連邦取引委員会(Federal Trade Commission:FTC)」によってガイドラインが改定され、ステマが規制されています。
グローバル化が進む日本において、今後世界基準と合わせるようなガイドラインが生まれるのか、またはこのまま規制を設けないのか、注目されるところです。

まとめ

ステマとは、広告・宣伝であることを隠し、中立な第三者を装って商品やサービスの評価・情報を発信することです。芸能人やインフルエンサーなどが一般的な広告として商品やサービスを紹介すること自体に問題はありませんが、ステマではないこと、広告活動であることを明確化するような、消費者へのわかりやすい表記が必要となるでしょう。
自社への信頼を失うような広告宣伝を行わないよう、企業はステマの意味や対象となる行為を正しく認識・理解し、消費者の誤解が生じないPR活動を行うことが大切です。

提供元・MarkeTRUNK

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