2018年にヒットを収めた『MEG ザ・モンスター』という映画の中で、人々を恐怖に陥れた巨大なサメ。

そのサメは、既に絶滅した古代種「メガロドン」という大きなサメです。

今回は、研究で明らかになってきたメガロドンの正体に迫ります。

古代の巨大ザメ「メガロドン」は頭部だけで車の大きさ!?|ヘンテコ生き物図鑑
(画像=映画『MEG ザ・モンスター』 / credit: warnerbros、『ナゾロジー』より 引用)

目次

  1. メガロドンの特徴は?
  2. メガロドンは、なぜ絶滅したのか?
  3. メガロドンに関連する、最新の研究3選(2021年8月まで)

メガロドンの特徴は?

分類

古代の巨大ザメ「メガロドン」は頭部だけで車の大きさ!?|ヘンテコ生き物図鑑
(画像=ホホジロザメ / credit: Wallpaperbetter、『ナゾロジー』より 引用)

メガロドンは残されていた顎、歯付近の化石を元に、ホホジロザメの近種である事が分かっています。

よって、基本的にはホホジロザメと関連づけて、メガロドンの様々な生態が推定されています。

例えば、

・歯に対する体の大きさ、の比率は似ているだろう
・全体的な体型は流線紡錘型だろう
・ホホジロザメの名前の由来通り、頬が白いのだろう
・歯の形態などから肉食だろう

と推定され、メガロドンのイメージ図などが描かれています。

ちなみに、ホホジロザメと言えば映画『ジョーズ』での獰猛な姿が印象的だと思いますが、ホホジロザメを含む多くのサメは好んで人間を襲うことはありません。

古代の巨大ザメ「メガロドン」は頭部だけで車の大きさ!?|ヘンテコ生き物図鑑
(画像=『ナゾロジー』より 引用)

しかし、ホホジロザメは好奇心旺盛なため、興味を持ったものを歯で確かめたりはします。

もし襲うことがあったら、たまたま餌が少なかったり、偶然人の味を知ってしまい餌だと勘違いしてしまうことが原因なようです。

時代

メガロドンが生きていたのは、推定2300万〜300万年前です。

つまり、約2000万年もの間、その姿をほとんど変えずに存在していた事になります。

現在西暦2021年ですが、西暦0年からのことを思うと、人は姿も生活様式も大きく変化しました。

2000万年の安定さでいえば、人間よりもメガロドンの方が上ですが、なぜ絶滅してしまったのでしょうか。

また、2300万〜300万年前といいますと、ジュラ紀も終わり恐竜(鳥類がメイン)や魚竜(爬虫類がメイン)が滅びた後、哺乳類が繁栄していた時代です。

古代の巨大ザメ「メガロドン」は頭部だけで車の大きさ!?|ヘンテコ生き物図鑑
(画像=モササウルスとサメ / credit:wallpaperbetter、『ナゾロジー』より 引用)

ちなみに巷には、大きな魚竜モササウルスとメガロドンが海底で戦っているイメージ画像が出回っていますが、実際にはモササウルスは既に滅んでいたと思われます。

メガロドンは、なぜ絶滅したのか?

では、なぜ巨大な海の王者のようなメガロドンは絶滅してしまったのでしょうか。

その理由は、「海が寒くなったせいで、メガロドンが速く動けなくなったから」と推定されています。

しかし、私達人間などは、周囲が寒くなっても動くことができます。一体、どういう違いなのでしょうか。

爬虫類、両生類、魚類、昆虫は「変温動物」といい、体温が周囲と同じ温度になります。

周囲の温度が寒くなりすぎると体温も下がっていまい、エネルギー不足で動けなくなってしまいます。

古代の巨大ザメ「メガロドン」は頭部だけで車の大きさ!?|ヘンテコ生き物図鑑
(画像=冬の動物 / credit:AC、『ナゾロジー』より 引用)

一部恒温動物(クマ、ヤマネ等)もいますが、冬眠をする動物の多くは変温動物です。

以前筆者は理科の解剖の授業で、魚を氷水漬けにして動きを止める「氷冷麻酔」を行なっていました。

死亡するわけではないため、動く内臓が確認できるためです。

これも魚類の変温性を利用した方法でした。

古代の巨大ザメ「メガロドン」は頭部だけで車の大きさ!?|ヘンテコ生き物図鑑
(画像=fish with ice / credit: freepik company、『ナゾロジー』より 引用)

メガロドンのような変温動物達は、食べることでエネルギーを得て、海水温より少しだけ高い体温を維持し、動くことができました。

しかし、海が寒冷化し海水温が下がってしまった時、優位に動くことができたのが、哺乳類、鳥類などの「恒温動物(こうおんどうぶつ)」です。

恒温動物は、周囲の温度に関係なく体温をほぼ一定に保つ能力があるため、動きが止まることはありません。

例えば私達は、冬の北海道では身体を縮こまらせて、毛穴を引き締めて、体温を逃さないようにしながら歩いています。

夏の沖縄に行けば、汗をかいて気化熱を利用して体温を下げながら歩けるのです。

古代の巨大ザメ「メガロドン」は頭部だけで車の大きさ!?|ヘンテコ生き物図鑑
(画像=体温計 / Credit: AC、『ナゾロジー』より 引用)

人間は北海道でも沖縄でも、体温を36℃付近に保ち、そのために、たくさん食べてエネルギーを得ています。

つまりメガロドンが動けなくなってしまった一方、恒温動物であるアザラシ、クジラ、イルカ、シャチたちは速く動くことができました。

古代の巨大ザメ「メガロドン」は頭部だけで車の大きさ!?|ヘンテコ生き物図鑑
(画像=『ナゾロジー』より 引用)

クジラ類はメガロドンのメインの食料でしたが、素早く逃げられてしまったでしょう。シャチは獰猛な肉食ハンターですから、メガロドンは食料を奪われてしまったのかもしれません。

こうして、食料を得ることが出来なかったメガロドンは、絶滅していったと考えられています。

メガロドンに関連する、最新の研究3選(2021年8月まで)

大きさに関する研究

昨年2020年に、イギリスのブリストル大学とスウォンジー大学の研究者チームがメガロドンの身体の大きさについての研究論文を発表しています。

今までメガロドンの特徴、特に身体の大きさは、”歯の化石”のみから推定されていましたが、

今回の研究では、他の近種のサメ数種との比較も行われました。

ちなみに、サメの身体は軟骨でできており、化石が残りにくくなっています。

しかし、歯だけは何度も生え変わりますし、丈夫な石灰質をしていたため化石として残ることができました。

古代の巨大ザメ「メガロドン」は頭部だけで車の大きさ!?|ヘンテコ生き物図鑑
(画像=メガロドン歯化石 / credit: 埼玉県立 自然の博物館、『ナゾロジー』より 引用)
古代の巨大ザメ「メガロドン」は頭部だけで車の大きさ!?|ヘンテコ生き物図鑑
(画像=顎の復元模型 / credit: 埼玉県立 自然の博物館、『ナゾロジー』より 引用)

また、『埼玉県立自然の博物館』にはメガロドンの歯の化石があります。

歯だけで人の掌ほどの大きさがあり、顎は2mはあり、大人の男性がすっぽり入ります。

もし私達がメガロドンに捕食される事があったら、噛まれるというより丸飲みでしょう。

研究方法の一端ではありますが、大まかには、メガロドンと近種であるホホジロザメ等とを関連づけて、「歯:体」の大きさの比率が似ていると思われる事から、体の大きさが推定されました。

古代の巨大ザメ「メガロドン」は頭部だけで車の大きさ!?|ヘンテコ生き物図鑑
(画像=メガロドンの体調推測 / Credit: University of Bristol、『ナゾロジー』より 引用)

比較しますと

  • 人:1.6m
  • 乗用車:5m
  • ホホジロザメ:5m
  • バス:10m
  • ジンベイザメ(現存するの最大の魚類):10m
  • メガロドン20m

という全長です。

「メガロドンの頭が車と同じ大きさ」と考えるといかに巨大だったか想像できますね。

託児所を作っていたという研究

昨年2020年に英ブリストル大学が発表した研究論文によると、

メガロドンは、託児所のような場所で子育てをしたと考えられています。

暖かく、浅く、餌が豊富で、天敵が少ない安全な場所から、メガロドンの若いメス、子供の歯の化石が見つかったことから、そのような場所がを託児所であったと推定されました。

古代の巨大ザメ「メガロドン」は頭部だけで車の大きさ!?|ヘンテコ生き物図鑑
(画像=託児所 / Credit:AC、『ナゾロジー』より 引用)

しかし、寒冷化に伴い、海水面が低下しまったことで、託児所は減少してしまいました。

このように子育てがしにくくなった事も、メガロドン絶滅の一因と推定されています。

母体内で共食いが起きていたという研究

今年2021年始め、デポール大学のケンシュウ・シマダ教授らは、メガロドンの出生方法についての研究論文を発表しています。

私達と同じように、メガロドンの脊椎も多くの椎骨からなっています。研究チームらは、椎骨の化石を詳しく調べることで、孵化した年齢、死亡した年齢等を推定しました。

すると、世に出てきたメガロドン達は、実は厳しい「兄弟バトル・ロワイアル」に勝利した生き残りであったことが分かりました。

まず、メガロドンの母親は、胎内(子宮内)で卵を孵化させます。

孵化により出てきた子は、まだ孵化していない卵(=弟妹)や、身体の小さな他の子(=兄弟)を食べて成長します。

共食い=カニバリズムを行って、成長しているのです。

最後の一匹、つまり最強になる頃には、既に体長2m級になっています。

子宮外に出て海を泳ぎ始めた子は、既に兄弟を蹴落とした最強君、ということです。

現存するホホジロザメ、シロワニ、オオテンジクザメ等のサメも、この「子宮内共食い」を行なっています。

生物界では珍しい出生様式です。

ナンバーワンにならないと世に出られないのですから、彼らに「ナンバーワンよりオンリーワン」という歌は通じないでしょう。

これから彼らを見たら「頑張ったんだな」と、幼少期の苦労を労ってしまいそうです。

「いつ、どう戦うか(生存戦略)」は、生き物によって大きく異なりますが、めちゃくちゃ早く戦っておいた生き物=メガロドンなのかもしれません。

「全く戦いたくない」「全く変化したくない」と考えた多くの生き物達に待ち受ているのは、余程のラッキーボーイでない限り、絶滅です。

いつかは戦わないと、環境に合わせて変化しないと、生き残れないという事をメガロドンに教わった気がします。


参考文献

Use of nursery areas by the extinct megatooth shark Otodus megalodon (Chondrichthyes: Lamniformes) | Biology Letters

The prehistoric megalodon shark had fins as big as human adults and heads the length of cars, according to new research、Susie Neilson

Body dimensions of the extinct giant shark Otodus megalodon、Jack A. Cooper

Megalodon shark gave live birth to large newborns that likely grew by eating unhatched eggs in womb | Press Releases | News | Newsroom | DePaul University, Chicago

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提供元・ナゾロジー

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