「赤ちゃんの笑顔や笑い声は特別」だと感じている人は多いでしょう。
見たり聞いたりするだけで自然と頬が緩み、癒されるからです。
ところが最近の研究では、別の意味でも、「赤ちゃんの笑いが特別」だと判明しました。
オランダ・ライデン大学(Universiteit Leiden)認知心理学部に所属するマリスカ・クレット氏ら研究チームは、乳児の笑い方がチンパンジーと同じであることを発見したのです。
乳児は成長するにつれて、周りに合わせてチンパンジーの笑い方をやめていたようです。
研究の詳細は9月1日付の科学誌『Biology Letters』に掲載されました。
乳児はチンパンジーと同じく息を吸うときにも笑う
以前の研究によると、人間の大人の笑い方は「息を吐きながら笑う」というもの。
一方、チンパンジーは「息を吐きながら笑う」こともあれば、「息を吸いながら笑う」こともあるようです。
では人間の赤ちゃん、つまり乳児の笑い方はどちらに近いのでしょうか?
研究チームは乳児の笑い方を確かめるため、117人の成人の参加者を募集。
参加者たちには、乳児が息を吐いているときと、吸っているときに、笑い声が聞こえた回数をそれぞれカウントしてもらいました。
その結果、乳児には両パターンの笑い方があると判明。
乳児は人間の大人よりもチンパンジーに近い笑い方だったのです。
その理由の1つは、乳児の喉の構造が、人間の大人よりもチンパンジーに近いためだと考えられます。
乳児は成長していくにつれて、私たちと同じ「大人の笑い方」になるのです。
乳児は大人になるにつれて周囲に合わせて笑い方を変える
関連するもう1つの実験では、102人の成人の参加者が、乳児の2パターンの笑い声を聞いて、どちらがより心地よく、つられて笑いやすいか調査しました。
その結果、大人たちは、乳児の「息を吐く笑い方」の方が、より心地よく、つられて笑いやすいと感じました。
つまり乳児は成長するにつれて「息を吸う笑い方」をやめ、大人たちが好む「息を吐く笑い方」を行うようになっていたのです。
以前の研究によると、笑うことは、サルや一部のげっ歯類などの「集団生活を伴う社会性の高い生物」によく見られたとのこと。
笑うことは人間にとっても重要なコミュニケーションツールなので、乳児は周囲に合わせて好まれる笑い方を選択していくのでしょう。
研究チームも次のように推測しています。
「人間の赤ちゃんは最初、面白く感じたときの自動応答として、自然な笑い方をします。
しかし成長するにつれて、環境に合わせた笑い方へと変えていくようです」
つまり乳児の笑い方が特別なのは、未発達な喉の構造だけが理由なのではなく、人間の社会性の高さから来ていたと考えられます。
今後チームは、乳児の泣き方に関して、同様の実験を行う予定です。
参考文献
Young infant’s laughter found to share features with ape laughter
元論文
The ontogeny of human laughter
提供元・ナゾロジー
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