宇宙には私たちの太陽系と同様に、恒星を中心に惑星が回る星系が数多く存在しています。

しかし、それらは太陽系に似ているようでも、形成される過程には大きな違いがあり、あまり平穏な歴史を歩んで来なかったものも多いようです。

イタリア国立天体物理学研究所(INAF)などの国際研究チームは、太陽のような星の約4分の1近くが自分の星系の惑星を食べていた可能性が高いと報告。

太陽系は安定していましたが、よその星系の太陽はまるで仲間を食べて生き延びた難破船の船長みたいに混沌とした黒歴史を歩んでいたようです。

研究の詳細は、8月30日付けで科学雑誌『Nature Astronomy』に掲載されています。

目次

  1. 混沌とした歴史を持つ星系
  2. 惑星を食べた星を特定する3つの証拠

混沌とした歴史を持つ星系

「太陽」の4分の1は自分の惑星を食べていた
(画像=恒星に落ちる巨大惑星のイメージ図 / Credit:宮本アシタ/荻原正博/名古屋大学,CfCA,子供達に押し出された巨人 〜最新のコンピュータシミュレーションによる太陽系外惑星系における謎の解明〜、『ナゾロジー』より 引用)

私たちの太陽系では、惑星は安定した円形の軌道で太陽の周りを回っています。これは、惑星が最初に形成されて以来、軌道があまり変わっていないことを示しています。

しかし、宇宙には惑星がもっと不安定で混沌とした軌道を描く星系もあります。

そうした星系では、他の惑星の運行が別の惑星を太陽の方へ押し出して、太陽が惑星を飲み込んでしまう場合もあります。

太陽系の地球で生命が繁栄できた理由の一つは、この安定した軌道で穏やかに星系が形成されたという歴史にあると考えることができます。

私たちが宇宙を観測するときの、大きな目的の一つは地球以外から生命の存在を発見することです。

そのため、比較的穏やかな歴史を歩んだ星系と、混沌とした歴史を歩んだ星系を見分けることは非常に重要です。

天文学者は、軌道が乱れ混沌とした歴史を歩んだ星系が、宇宙ではどれほど一般的なものなのかを知りたいと考えています。

ただ、他星系の惑星の軌道を特定することは非常に困難です。

現在利用できるもっとも正確な天文機器でさえ、この観測は非常に難しいのです。

そこで、天文学者たちは代わりに連星系の星の化学組成を分析するという方法を考えました。

「太陽」の4分の1は自分の惑星を食べていた
(画像=単一のガス雲から形成された連星は、通常まったく同じ化学組成を持つ / Credit:ALMA (ESO/NAOJ/NRAO), Alves et al.、『ナゾロジー』より 引用)

連星とは太陽が2つある星系のことをいいます。

通常、連星は同じガス雲から形成されるため、まったく同じ化学組成を持ちます。

しかし、もしこの星系で生まれた惑星が、2つの星のどちらかに落ちてしまうと、星の外層は惑星の元素が溶け込むことで、化学組成が変化し、伴星とは異なってくると予想できるのです。

こうして、惑星を食べてしまうような太陽が、宇宙にはどの程度存在するのか、明らかにしようとしたのです。

惑星を食べた星を特定する3つの証拠

星の誕生時には、原始惑星系円盤というものが形成されます。

ここでは元素の揮発性などの違いから、徐々に円盤内の温度差で元素が分別されていきます。

このため、星に集まりやすい元素と、惑星で凝縮されやすい元素には、それぞれの傾向が出てきます。

「太陽」の4分の1は自分の惑星を食べていた
(画像=星系は恒星とそれを取り巻く塵の円盤から形成されていく。星に集まりやすい元素と、惑星で凝縮しやすい元素には傾向がある。 / ChaoticNASA/JPL、『ナゾロジー』より 引用)

鉄は岩石質の惑星に多く見られる元素です。

もし初期の星系が混沌としていて、惑星が太陽に飲み込まれてしまった場合、星の外層の鉄分などに大きな違いが出てくる可能性があるのです。

今回の研究チームは、こうした星の化学組成を分析することで、惑星を食べてしまった星を特定する、3つの明白な証拠を発見しました。

まず、第1は、外層が薄く鉄分が豊富な星です。

第2に、リチウムが多く含まれるということです。

リチウムは星の中ではすぐに破壊されてしまう元素です。そのため、リチウムレベルの高い星は、あとからリチウムを保存した惑星を食べてしまったと考えることができるのです。

第3に、炭素が豊富に含まれるということです。

炭素は揮発性の元素であるため、惑星で濃縮されたのもでなければ、星には大きな含有量の違いが生まれないためです。

こうした伴星と比べることで明らかとなった、星の化学組成は、かつて惑星を食べたことのある太陽を見分けるために役立つ知識となります。

ここから研究チームは、惑星を食べたことがある太陽が、どの程度存在するかを分析しました。

すると、宇宙では約27%の太陽が、自分の星系の惑星を食べてしまうという、ダイナミックで混沌とした過去を持つことがわかったのです。

太陽系外惑星を観測する目的の多くは、生命がそこに存在するかという点にスポットが当てられます。

しかし、宇宙には非常に多くの星系が存在します。

そこで、生命の可能性を探る天文学者は、そこが調査に値する星系かどうか、早い段階で判断したいと望んでいます。

もっとも観測しやすい中心にある太陽の化学組成から、それが判断できるかもしれないという今回の研究は、今後地球のような惑星を宇宙で探す際に役立っていくと期待できます。


参考文献

A quarter of sunlike stars eat their own planets, according to new research

元論文

Chemical evidence for planetary ingestion in a quarter of Sun-like stars


提供元・ナゾロジー

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