友人との外食も思い切って行けなくなった昨今、自宅でひとり、ご飯を食べる機会も増えたと思います。
ひとりぼっちの孤食が味気ないのは、多くの人が実感していることでしょう。
しかし今回、名古屋大学の研究により、孤食の際は、誰かが話しているのを聞きながら食事すると、ご飯が美味しく感じられることが明らかになりました。
面と向かって人と会食しなくとも、動画内の音声で十分な効果が得られるとのことです。
研究は、8月26日付けで学術誌『Appetite』に掲載されています。
「人の声」が食欲を増進するスパイスになる?
これまでの研究でも、一人より誰かと一緒に食事をする方が、より多くの量を美味しく食べられることが示されていました。
また、孤食をする人はよくテレビや動画を見ながら食事しますが、それがどれだけ摂食量や美味しさを増進させるかは分かっていません。
そこで研究チームは、大学生を対象とした3つの実験を実施。
まず、被験者の目の前にモニターを置き、「新製品でそれぞれ味が違う」とだけ伝え、お皿に盛ったポップコーンを90秒間で好きなだけ食べてもらいました。
それと並行して、モニターには映像が映し出されます。
1つはモノだけが映っている映像、もう1つはモノと人が映っている映像で、それぞれを音声ON・OFFで提示したので、被験者には計4回の試食をしてもらいました。
映像の順番が結果に影響しないよう、被験者ごとにモニター実験の順番は変えています。
その結果、人が映っているかどうかにかかわらず、人の「音声」が提示されるときに、ポップコーンがより美味しく感じられ、摂食量も増えることが判明したのです。
モニターに映る人数を増やしても結果は同じで、どの映像条件でも、人の音声が入るか否かが結果を大きく左右していました。
つまりは、人の声が孤食を美味しくする調味料になるということでしょう。
今回の研究成果は、外食の自粛が求められる中で、いかに一人での食事の質を高め、充実させるかを示すものです。
これは例えば、コロナ禍の自粛中の人だけでなく、入院中や独り身の高齢者の方々にも活用できます。
日本では年々、一人で食事せざるを得ない高齢者が増加しており、さらに、コロナパンデミックによる帰省の制限で、家族と会えない時間も増えています。
高齢者における孤食の増加は、うつ病発症のリスクとも関連しており、非常に深刻な問題です。
その中で、モニターや通話機能を活用することで、孤食によるメンタルヘルス問題の予防が期待できます。
研究チームは今後、オンライン上の会食でも、同じ効果が得られるかを調査する予定とのこと。
今現在、孤食に味気なさを感じている人は、動画や通話などで「人の声」を取り入れると良いかもしれません。
参考文献
人の声を聞きながら食べると、一人の食事でもおいしく感じる(名古屋大学)
元論文
A human voice, but not human visual image makes people perceive food to taste better and to eat more: “Social” facilitation of eating in a digital media
提供元・ナゾロジー
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