「中二病」という言葉に代表されるように、日本では妄想や思い込みへの信仰がもっとも高まる年齢は中学2年生(14歳)くらい、と感じている人が多いようです。
こうした直感はどうやら科学的にも正しかったようです。
英国の心理学チームが行った研究によると、思春期の陰謀論を信じ込む年齢は14歳がもっとも多く、その信念は大人になってからも変わらないというのです。
この研究は、若年層に対して行われた初めての陰謀論に対する科学的測定で、詳細は科学雑誌『British Journal of Developmental Psycholog』に2月8日付で掲載されています。
なぜ陰謀論を研究するのか?
陰謀論に関する真面目な研究がある、ということが一般の人にはまず驚きかもしれません。
しかし、心理学や社会学の分野では、陰謀論の効果を無視することはできないのです。
これまでの研究から、陰謀論が人々の信念や行動に大きな影響を与えることが明らかとなっています。
それは例えば、気候変動や予防接種などの人類全体の重要な問題に対する、人々の見解や意思決定にさえも影響を与えてしまっています。
今回研究を行った英国では、約60%の人が少なくとも1つの陰謀論を信じていることがわかっていて、その人気の理由を理解することはとても重要なのです。
しかし、これまでの陰謀論に関する既存の研究は、すべて大人を対象として行われていました。
こうした研究では、陰謀論への信仰を質問票を使って測定しますが、この調査方法も大人を想定して作られています。
そのため、若者がいつ、どのような理由で陰謀論を信じるようになるのか、またそれらの信念が時間経過とともにどのように変化するかについては、十分な知見が得られていなかったのです。
そこで今回、英国のノーザンブリア大学、ケント大学、グラスゴー大学、バーミンガム大学、ノッティンガム・トレント大学が協同で若者を想定した陰謀論質問票「Adolescent Conspiracy Beliefs Questionnaire(ACBQ)」を開発し、調査を実施したのです。
年齢別の陰謀論検証
研究グループは中学校の教師たちと協力して、36項目の最初の質問リストを考案しました。
次に英国中の学校に通う若者を対象に、調査テストを実施したのです。
アンケートに回答する参加者は、上のような質問に対して、1(まったくそうは思わない)から7(非常にそう思う)までスケールで回答を求められます。
このテストは、平均スコアが高いほど陰謀論に対する信念が高いことを示しています。
ノーサンブリア大学のダニエル・ジョリー(Daniel Jolley)博士によると、今回の調査結果からは、14歳の年齢で陰謀論への信念がピークになったといいます。
これは日本で、自分の妄想や設定の世界に強く引き込まれる年齢としてネタにされる中二病と一致しており非常に興味深い結果です。
人々が直感的に感じていたことが、科学的に見ても事実だったということを意味しているのでしょう。
また、今回の調査では、パラノイア(他人が自分を批判しているという妄想)と不信感が若者の陰謀論に対する信念と関連しているという最初の証拠を発見したと報告しています。
多感な時期の不安やストレスが、陰謀論への信念を高める要因になっているようです。
現代はソーシャルメディアなどを通じて、若者に誤った知識や考えが広まりやすい環境があるため、この研究には重要な意味があります。
こうした研究が進んでいけば、社会問題はもう少しスムーズに解決されるようになっていくかもしれません。
しかし、陰謀論をこじらせてしまった大人をたくさん見かけると、1度信じてしまった陰謀論から抜け出すことは難しいかもしれないと感じますね。
それが彼らの選択ならば、仕方ないことなのかもしれません。
ラ・ヨダソウ・スティアーナ
参考文献
14 could be peak age for believing in conspiracy theories
元論文
Measuring adolescents’ beliefs in conspiracy theories: Development and validation of the Adolescent Conspiracy Beliefs Questionnaire (ACBQ)
提供元・ナゾロジー
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