ゴキブリには社会性を進化させた種があるようです。
9月1日に『The Science of Nature』に掲載された論文によれば、南米のゴキブリ“Melyroideamagnifica”はアリやハチのように労働者や女王をもつ、複雑な社会を形成しているとのこと。
現在、社会性のあるゴキブリとして知られているのは、この1種類のみです。
しかし、ゴキブリの作る社会とは、いったいどんなものなのでしょうか?
100年以上前に記録された幻のゴキブリ
アリやハチは社会性昆虫として知られており、大きなグループを作って、役割分担された複雑な社会を形成しています。
この昆虫の社会では、女王と呼ばれる個体のみが卵を産むことで、社会全体に新たな人口を供給し、産まれた個体は自身では一切の生殖を行わずに、生涯を通して巣のための労働力として働きます。
1912年、ある昆虫学者が南米のエクアドルで奇妙なゴキブリの巣をみつけました。
その巣では、ゴキブリたちは共同生活を行いながら幼虫を育てるといった、まるでアリやハチのような社会性をもっていたと、当時の学者によって記録されています。
しかしながら、社会性ゴキブリの報告はその1件のみであり、長い間、幻のゴキブリとされていました。
しかしヤン・ヒンケルマン氏はこの100年前の報告が嘘には思えず、20年以上に渡って、この社会性ゴキブリを探してきました。
そして、ついに手掛かりを掴んだのです。
社会性ゴキブリの巣で女王ゴキブリを発見
転機となったのは2017年でした。
エクアドルの地元で自然保護活動を行っていたティエリー・ガルシア氏が、大量のゴキブリが詰まった、巣としか思えないような場所を発見したのです。
その巣は朽ちた広葉樹の木の中にあり、中には数百匹のゴキブリが集団で生活していました。
巣の内部では幼虫たちが大人のゴキブリの世話を受けており、明らかな社会化が観察されました。
さらに、研究チームは巣の内部から、通常の個体の1.25倍の大きさをもつ、淡く白っぽい羽をはやした奇妙な個体を発見します。
研究チームが2カ月間に及ぶ詳細な観察を行った結果、この特殊な大きな個体が、巣の中で唯一、卵を産む個体であることが確認できました。
そのため研究チームは現在のところ、この特殊な個体が巣の女王であると考えています。
失われたゴキブリの社会性を求めて
ゴキブリはシロアリと同じグループに属する、恐竜時代より前から地球上に存在した、古いタイプの昆虫です。
日本の家庭に多く存在するチャバネゴキブリは緩やかな集団生活をすることが知られていますが、女王の存在は確認されていません。
しかし研究チームは、恐竜時代にはゴキブリたちも社会性を持っていたと考えています。
ですが何らかの原因で恐竜の絶滅を境に、シロアリだけが社会性を持ち、ゴキブリからは失われてしまったようです。
研究チームは今後も同地で新たなゴキブリを探し、ゴキブリの失われた社会性の手掛かりをつかむとしています。
参考文献
springer
/ researchgate
提供元・ナゾロジー
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