目次

  1. 「恒星進化論」では「太陽の7倍」
  2. 「連星天文学」では「太陽の3.45倍」
  3. 「ポラリスは連星衝突から生まれた」説
有名な「北極星(ポラリス)」、実は謎だらけの星だった
(画像=Credit:depositphotos、『ナゾロジー』より 引用)

point

  • 北極星「ポラリス」の質量は、計算方法によって全く異なる結果になる
  • ポラリスは「もともと2つの星だった」節が新たに浮上する
  • 未だに、ポラリスの正確な情報は提出されていない 「北極星」という名前は、北極の真上にある星が受け取る称号です。地球の自転は年ごとにずれていくので、北極の真上にある星も変化していきます。

現在、北極星として認識されているのは、こぐま座α星である「ポラリス」です。今後も数世紀の間は、このポラリスが北極星としての役目を果たしてくれるでしょう。

ポラリスは地球の自転の延長線上にあるので、地球上から見るとほとんど動かず、北の星空は、北極星「ポラリス」を中心に回転しているように見えます。

これまで、非常に多くの人々に観測されてきた「有名な星」ですが、実は天文学者たちの間では、「知れば知るほど理解できない星」です

トロント大学のヒルディング・R・二―ルソン氏らの研究でも、ポラリスの正確な質量が判明していない点が改めて確認されました。

報告の詳細は「arXiv.org」に掲載されています。

The Curious Case of the North Star: the continuing tension between evolution models and measurements of Polaris

「恒星進化論」では「太陽の7倍」

有名な「北極星(ポラリス)」、実は謎だらけの星だった
(画像=Credit:Wikipedia By R.N. Bailey – Own work、『ナゾロジー』より 引用)

ポラリスほど有名な星は他にありませんが、その「大きさ」や「距離」は正確に把握されていません。

星の質量や年齢、距離を計算するためには、いくつかの方法があります。

その1つが「恒星進化論」による数学モデルです。

「恒星進化論」とは、星が生まれてから死ぬまでの変化を扱う理論です。

そして、星の進化的段階を計算するための数学モデルがあります。通常、このモデルと対象星の特性を比較することにより、年齢等を推定できます。

研究者たちは、明るさ、色、脈動の速度などの星の特性を測定することで、星の大きさ、距離、年齢を把握します。

星の「実際の明るさ」と「地球から見たときの明るさ」が測定できれば、かなり簡単に答えを提出できます。

この方法によって算出されたポラリスの質量は「太陽の7倍」でした。

「連星天文学」では「太陽の3.45倍」

有名な「北極星(ポラリス)」、実は謎だらけの星だった
(画像=Credit:Wikipedia NASA/HST、『ナゾロジー』より 引用)

もう1つの計算方法として挙げられるのは「連星天文学」と呼ばれるものです。

そもそも、ポラリスは「連星」です。

連星とは、複数の恒星がセットになっており、両者の重心の周りを軌道運動している天体を指します。

有名な「北極星(ポラリス)」、実は謎だらけの星だった
(画像=連星の軌道例/Credit:Wikipedia、『ナゾロジー』より 引用)

北極星として知られるポラリスは、ポラリス(主星でありポラリスAとも呼ばれる)、ポラリスB、ポラリスAbからなる三連星です

連星とそのシステムは、星の質量を算出するのに役立ちます。連星の軌道が分かるなら、ニュートンの重力の法則を適用して、2つの質量を測定できるのです。

最近、研究者たちは、ポラリスの周りを円のように動く「ポラリスB」の詳細な軌道イメージを把握することに成功しました。

この情報と新しいハッブル宇宙望遠鏡の視差測定値(星までの距離を計算する方1つの方法)を組み合わせると、ポラリスの質量と距離に関して、非常に正確な数値が算出できます。

これによって算出されたポラリスの質量は、「太陽の約3.45倍」。恒星進化論で導き出された「太陽の約7倍」とは別の答えが出てしまいました。

では、「恒星進化論」と「連星天文学」による計算結果が大きく異なるのはどうしてなのでしょうか?

「ポラリスは連星衝突から生まれた」説

有名な「北極星(ポラリス)」、実は謎だらけの星だった
(画像=Credit:depositphotos、『ナゾロジー』より 引用)

2つの計算結果の不一致は、どちらかの計算が誤りである可能性を示しています。

今回ニ―ルソン氏は、従来の計算方法に間違いが無いか改めて確認しました。

しかし、すべての情報には信頼性があり、修正すべき点は見つかりませんでした

結局ポラリスの質量は、未だに「ポラリスの不思議」の1つのままです。

また、ポラリスにはこれ以外にも不思議な要素があります。

連星である2つの星は、通常ほぼ同じ年齢です。

しかし、ポラリスBの年齢計算は、ポラリスBがポラリスよりもはるかに高齢であることを示しています。これは非常に珍しいことです。

これらの経緯により、二―ルソン氏は1つの説に辿りつきました。

「ポラリス連星の主星(ポラリス)はかつて2つの星であり、数百万年前に衝突して1つになった」というものです。

彼によると、「2つの星の衝突は、余分な物質を引き込み、星を若返らせる」とのこと。

連星衝突から生まれる星は、恒星進化論のモデルに適合せず、ポラリスで見つかった矛盾を説明できます。他の研究者たちによれば、「ありそうにもないシナリオだが、不可能ではないだろう」とのことです。

もちろん、これも1つの説に過ぎず、完全な答えではありません。

これほど有名で、たくさん研究されてきた北極星「ポラリス」ですが、未だに謎多き星のままのようです。

reference: livescience / written by ナゾロジー編集部

提供元・ナゾロジー

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