木星の大赤斑で「水」を発見 従来の説を覆す
(画像=『ナゾロジー』より 引用)

Point
・ガリレオ探査機のプローブによる観測で、木星大気に水が存在しないことが示唆されていた
・地上の高性能の望遠鏡による大赤斑のデータを解析した結果、雲が3層に分かれており、最下層に水の氷があることが示唆される
・木星上の推定される水の量は、他のすべての惑星に存在する水の総計の2倍

1995年、NASAのガリレオ探査機が木星の大気データを地球に送信しました。しかしガリレオが侵入した領域は、予想よりも「乾いて」おり、水を発見することはできませんでした。木星の76個の衛星のほとんどは氷でできています。したがって、惑星である木星の大気にも相当な量の水が含まれていると予測されていましたが、残念ながらガリレオは見つけられなかったようです。

その後も専門家は、木星の大気内にどれほどの水があるのか議論を続けていましたが、クレムソン大学の天体物理学者マテ・アダムコビクスを含む国際チームによる最新研究で、ついにその答えが示されました。地上の望遠鏡を使って得られたデータを公式化して分析した結果、木星表面の大赤斑の下に水の化学的痕跡を検出したのです。

The Gas Composition and Deep Cloud Structure of Jupiter’s Great Red Spot

木星はガス巨星で、他の惑星上にある水を足し合わせた2倍の水を含んでいます。木星の大気組成の99%は水素とヘリウムであるにもかかわらず、この巨大惑星上の太陽系内での水の割合は、すべて足し合わせることで巨大なものとなり、地球上の水の何倍にもなります。

研究者が注目したのは、150年もの間木星の空を吹き荒れている「大赤斑」です。この大赤斑は地球の2倍の大きさがあります。そしてNASAの赤外線望遠鏡設備である、iSHELLとKeck2望遠鏡の近赤外線分光器によって集められた放射データを研究しました。iShellは広範囲のガスの可視スペクトルを高解像度で検出できる装置で、Keck2は地球上で最も感度の高い赤外線望遠鏡です。

木星の大赤斑で「水」を発見 従来の説を覆す
(画像=『ナゾロジー』より 引用)

データを解析した結果、大赤斑が3層の雲に別れており、最も深い層が5-7気圧にあるという証拠を獲得。気圧は測定単位で、地球上の海抜レベルでの大気圧の平均値です。この惑星には地球のような評価の基準点となるような地表がないため、木星上の高さは気圧で測られます。5-7気圧、あるいは雲のてっぺんから160kmの点の温度は、科学者たちが信じているところの水の凝固点です。チームが見つけた最も深い層の雲は凍った水で出来ているものと思われます。

研究者は今後、将来惑星全体に存在する水の量や、大気が荒れている原因などを解明していく予定です。また、生命が存在する可能性は非常に低いものの、夢物語ではないと話しています。

2016年にはNASAのジュノー探査機が木星に到達し、少なくとも2021年まで木星の周りを周回して、この惑星の多くの秘密を解き明かしてくれるでしょう。ジュノーには最新の赤外線分光器が搭載されているので、大赤斑以外の部分の解析も進むと思われます。今回の研究で用いられた生データは非常に多く、解析するのに特別に設計されたソフトウェアを使って段階的に利用しやすい形への変換が行われています。研究者らは現在生データの解析を進めるため、コンピューターサイエンスや他の分野から生徒を集めているとのことです。

via: EurekAlert!

提供元・ナゾロジー

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