大手旅行シンクタンクである株式会社JTB総合研究所が、「新型コロナウイルス感染拡大による、暮らしや心の変化および旅行に関する意識調査(2021年8月)」の調査結果を発表しました。

調査結果によると、今後1年間の国内旅行意向は34.5%となり、2021年内に行きたいのは23.6%となりました。

また今後1年間の国内旅行意欲が最も高いのは、男女20代30代といった若年層と、60 歳以上の男性シニア層となりました。

また長引くコロナ禍で終息が見通せない中、緊急事態宣言の影響力の低下、および自己防衛のうえで旅行に行く動きがでてきました。

今後の国内旅行に対する意識の変容について、レポートから抜粋します。

目次

  1. コロナ禍での旅行に関する意識調査、若年層と男性シニア層で旅行意欲高く
    1. コロナ終息が見通せず、域内・近場志向が高まる
    2. 緊急事態宣言が発令された場合、「旅行の予定には影響しない」34.1%に
    3. ワクチン接種後の積極的な外出希望は8.6%、控える人が多く
  2. 先行き不透明な中、自己防衛やワクチンで旅行する人が増加するか

コロナ禍での旅行に関する意識調査、若年層と男性シニア層で旅行意欲高く

株式会社JTB総合研究所が、2021年7月16日から23日にかけて、全国に居住する20歳以上の男女を対象に旅行に関する意識調査を実施しました。

その結果によると、今後1年間の国内旅行意向は34.5%となり、2021年内に行きたいのは23.6%となりました。

また現在予定・検討している国内旅行の実施時期については、2021年以内の実施が全体の 87.5%を占めました。

性年代別に見ると、7~8月は子育て世代である男女 30 代・40 代の意向が高くなりました。夏休みも影響していると思われます。

しかし秋以降は、20代の若者とシニア層の旅行が中心となりそうです。

海外旅行については、2021年または2022年に予定・検討している人は全体で11.6%となりました。

特に若い年代の意向が強く、20代男性27.2%、女性20代20.0%という結果でした。

一方で、「以前は海外旅行をしていたが、今後はしないと思う」と考える人はシニア層で高く、60歳以上の男女1割強が旅行をやめると回答しています。

コロナ終息が見通せず、域内・近場志向が高まる

1回目の緊急事態宣言が解除された2020年5月~6月調査ではコロナ禍が収束したらというコロナそのものに関心がある傾向にありましたが、現在は変化しつつあります。

今回の調査では、長引くコロナ禍や変異株の出現で感染収束が見通せない中、徐々に自分の旅行ができる環境へと関心が移っていく様子が読み取れました。

「今後どのような状況であれば旅行に行きたいか」という質問に対しては、回答率の高い順から「良いプランや宿泊施設がとれれば(34.5%)」、「新型コロナウイルスの新規感染者数が減少傾向になれば(32.3%)」、「観光地が混雑していなければ(30.7%)」となりました。

新規感染者数の減少よりも宿泊施設の予約、良いプランであれば旅行に行きたいと旅行を重視する人が増えています。

ただし旅行の行先については、政府の緊急事態宣言やまん延防止等重点措置の発令などもあり、前回 3 月の調査と比べて、旅行者自身が居住している地域周辺の旅行が多い傾向となりました。

また旅行者の歓迎意識にも地域により変化が見られます。「自分が住んでいる都道府県内からの旅行者」については、「歓迎したい(19.7%)」と「来てほしいが不安はある(31.7%)」の合算値は 51.4%になりました。

一方、「自分が住んでいない大都市圏からの旅行者」は「歓迎したい」と「来てほしいが不安はある」の合算値は33.3%となり、都道府県内よりも20%ほど低くなりました。

しかし、旅行者がワクチンを接種していることが前提であれば45.8%と12.6%高い結果になりました。

インバウンド客については「歓迎したい」と「来てほしいが不安はある」の合算値は 22.5%でしたが、ワクチン接種済みの証明書を保持している場合は35.9%と13.4%上がりました。

旅行トレンドについては、「マイクロツーリズム」以外にも自然を楽しむ旅行(27.5%)、一人旅(25.2%)については2021年で機会を増やしたいものにあがりました。

しかし、MICEなどビジネス目的での会議、出張については2021年は機会を減らしたいと敬遠される傾向にあることもわかります。

緊急事態宣言が発令された場合、「旅行の予定には影響しない」34.1%に

また緊急事態宣言に対しても、意識の変化が見られます。

1回目の緊急事態宣言が出された2020年5月~6月調査では「終息してから」と新型コロナウイルスそのものに関心がある様子でしたが、長引くコロナ禍で自己防衛しながら旅行するという意識の変化がみられました。

緊急事態宣言が発令された場合、出発日や行先を変更するなど「旅行の変更を検討」が37.8%、「旅行の予定には影響しない」34.1%、「中止する」28.1%という結果になりました。

行先については、「旅行先に緊急事態宣言が発令されていないこと」が36.3%となり比較的重視されている傾向がうかがえます。

緊急事態宣言の影響について年代別にみてみると、「特に気にしない・旅行の予定には影響しない」と答えた人は若年層で多くなっています。30代が最も多い46.6%となり、次いで20代が42.4%となっています。

一方で「旅行は中止する」と答えた人は、60歳以上が最も多い42.5%、次いで50代が 36.0%となっており、年齢層が高いほど中止する傾向にあります。

ワクチン接種後の積極的な外出希望は8.6%、控える人が多く

そして、現在徐々に接種がすすんでいるワクチンについての意向調査も行われました。

ワクチン接種後の積極的な旅行や外出希望は8.6%となり、接種後もしばらく旅行等を控える人は 27.4%と慎重な対応をとることが分かりました。

ワクチン接種後の旅行に積極的なのは、すでに2020年から2021年にかけて旅行を実施した20代男性(17.5%)、男性 60 歳以上(18.7%)でした。 また旅行者の歓迎以降にもワクチン接種済みかどうかで変化がみられます。

居住地域以外の大都市圏からの旅行者に対してはワクチンを接種していることが前提であれば歓迎意向は45.8%と、未接種者と比べ12.6%高い結果になりました。

インバウンド客についても同様に、ワクチン接種済みの証明書を保持している場合は35.9%と未接種者と比べ13.4%上がりました。

先行き不透明な中、自己防衛やワクチンで旅行する人が増加するか

今回の調査から、長引く緊急事態宣言に伴った緊急事態宣言の影響力の低下、また「良いプランがあれば行きたい」と自己防衛をしながら旅行に行く姿勢が見られました。

ただしワクチン接種者であれば住民からの歓迎意向は上がるものの、実際に旅行する人は少数派であることがうかがえます。

コロナ禍とうまく向き合いつつ、適切な感染対策は何か模索している様子がうかがえます。

文・訪日ラボ編集部/提供元・訪日ラボ

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