流れ星は、名前は星ですが実際は塵や岩の塊で、本当に星が宇宙を疾走しているわけではありません。

しかし、ボストン大学(Boston University)などの研究チームは、時速320万キロメートルで天の川銀河の端に向かって爆走する白色矮星を発見したと報告しました。

研究者によると、この星は連星の超新星爆発によって吹き飛ばされた可能性があり、ほぼ確実に銀河の外へと離れていくとのこと。

研究の詳細は、6月10日付けで科学雑誌『The Astrophysical JournalLetters』に掲載されています。

目次

  1. 部分的な超新星で吹き飛ばされた星
  2. 暴走星の起源を探る

部分的な超新星で吹き飛ばされた星

天の川銀河を時速320万kmで爆走する星が見つかる
(画像=恒星は限界質量に達すると超新星爆発を起こす / Credit:canva、『ナゾロジー』より引用)

今回発見された星は「LP 40-365」と名付けられていて、現在地球から約2000光年離れた位置にあります。

これは白色矮星と呼ばれるタイプの星で、燃え尽きた太陽のコアと表現される死んだ星です。

これは超高密度の天体で、地球と同じくらいのサイズのものが一般的です。

それが天の川銀河の中を、時速320万キロメートルで爆走していたのです。

銀河の動きを無視して、超高速で暴走する星は珍しい存在です。

研究チームは、これが星が部分的な超新星爆発を起こし、弾き飛ばされた残骸だと考えています。

「こうした種類の星が存在するという可能性を私たちが考え始めたのは、ここ数年のことです」

研究共著者であるボストン大学のオデリア・パターマン(Odelia Putterman)氏は、そのように述べています。

さらに、この星はもともと連星系の1つで、伴星から奪い取った物質によって超新星を起こしていたと考えられます。

しかし、研究者はなぜ、そんなことが言えるのでしょうか?

暴走星の起源を探る

天の川銀河を時速320万kmで爆走する星が見つかる
(画像=白色矮星の連星で起きる超新星爆発 / Credit:ESA,Cannibal stars like their food hot, XMM-Newton reveals、『ナゾロジー』より引用)

今回の「LP 40-365」のデータを、分析した研究チームは、これがただ爆走しているだけでなく、およそ9時間に1回という速度で自転していることに気づきました。

私たちの太陽がおよそ27日(地球時間)に1回転という自転をしていることを考えると、これはかなりの高速回転に思えます。

しかし、研究者によると超新星のような壊滅的な出来事を経験した物体の場合、9時間という自転周期はむしろ遅いのだといいます。

そして、この緩慢な回転が意味するものは、この星が2つの星が回り合う連星系の一部で、伴星の物質を奪い取っていたということなのです。

白色矮星のような高密度な天体が、互いに接近して集会していると、1つの白色矮星が、もう1つの白色矮星の物質を奪い取って膨れていきます。

そして、チャンドラセカール限界と呼ばれる星の質量限界に達すると、Ⅰa型(いちえーがた)超新星と呼ばれる爆発を起こすのです。

これはNASAによれば、宇宙で発生する最大の超新星爆発です。

通常、どの星が「奪われた側」でどちらの星が「奪う側」なのか判断するのは困難です。

しかし、物質を奪われている星は回転速度が速くなると予想できるので、今回比較的回転の遅かった「LP 40-365」が、物質を奪って爆発した側だろうと研究チームは確信しています。

つまり、この星は爆発した星の破片なのです。

この爆発は、連星の両方の星を吹き飛ばしたと考えられますが、現在見つかっているのは「LP 40-365」だけです。

これは非常に奇妙で珍しい星です。

そのため、研究者たちはどういった条件や状況で、こんなことが起きるのか興味を向けています。

特に興味深いのは、今回の超新星の生存者は金属が豊富だということです。

天文学者がいう金属とは、私たちの一般的な認識とは異なり、水素やヘリウムより重い元素のことを指します。

太陽は主に水素とヘリウムで構成されているため、それとは少し異なる恒星だったと考えられるのです。

まだわかっていることは少ないですが、この暴走星は非常に移動速度が速いため、確実に天の川銀河からは飛び出して、外の宇宙へと飛び去ってしまうとのこと。

超新星から生き残る星、その謎もいずれ解明されるのでしょうか。

参考文献
Scientists find chunk of blown-apart star hurtling through Milky Way at breakneck speed(Space.com)

元論文
8.9 hr Rotation in the Partly Burnt Runaway Stellar Remnant LP 40-365 (GD 492)

提供元・ナゾロジー

【関連記事】
ウミウシに「セルフ斬首と胴体再生」の新行動を発見 生首から心臓まで再生できる(日本)
人間に必要な「1日の水分量」は、他の霊長類の半分だと判明! 森からの脱出に成功した要因か
深海の微生物は「自然に起こる水分解」からエネルギーを得ていた?! エイリアン発見につながる研究結果
「生体工学網膜」が失明治療に革命を起こす?
人工培養脳を「乳児の脳」まで生育することに成功