デイリーユースできる価格帯から、語りどころのある“名作モデル”を紹介していく連載企画。第6回は、デザインウオッチの名作に注目。
》シンプルだからこそ細部のバランスにこだわる
近年はファッションアイテムとしてのニーズの高まりから装飾的なデザインが多くなっているが、時刻をシンプルにわかりやすく伝えることが時計の本分であり、見やすさを突き詰めた先に、時間を表示する道具ならではの機能美が生み出される。インダストリアルデザインの巨匠が手がけた名作は、そんな機能的な美しさを象徴する時計といえるだろう。
ここでは四つの名作をクローズアップしているが、共通しているのが、要素を削ることで主張したい部分を効果的に強調するミニマルなデザインであるという点だ。この削ることで際立たせるという作業は、簡単なようでいて意外に難しい。特に時計の場合はインデックスや針、ケースなどの構成要素がある程度決まっており、その制約のなかで工夫を凝らし、バランスを整えて組み合わされることでデザインが成立している。要素が少ないほど、時計のデザインは難しくなるのだ。
例えばモンディーンの時計。分の読み取りやすさを重視する鉄道時計の特性から、太めの針、インデックスを採用し、モノトーンの色使いのなかで秒針に鮮烈な赤を採用することで、極めて高い視認性を獲得。シンプルさゆえに、針とインデックスがより引き立っている。ユンハンスは白文字盤には無駄な情報は一切なく色数も少ないが、バーインデックスの長さや数字の配置場所、針の長さなど、すべてが調和する絶妙なバランスを追求し、一瞥しただけで時刻が読み取れる。
通常、誕生から半世紀以上を経た時計はレトロな雰囲気を感じさせるものだが、いずれも良い意味で時代性を感じさせないことに驚かされる。まさに時代を超えた名作である。
MONDAINE(モンディーン)
クラシック ピュア 36mm
スイス国鉄オフィシャル鉄道ウオッチを製作しているモンディーンの代表作。白い盤面にはっきりしたバーインデックスと黒の長短針、赤の秒針という必要最小限の情報からなる見やすいデザインに加え、SBBの文字もブランド名も一切入っていない、実際に駅舎に掲げられているクロックと同じ、ピュアなデザインが特徴だ。
》1940年代から現在までスイス全土の駅舎で採用
(右)1940年代から現在までデザインを変えることなく採用されている、スイス連邦鉄道のクロック。スイス全土に3000個以上設置されている。(左)デザインを手がけたのはスイス国鉄のエンジニア兼デザイナーのハンス・フィルフィカー。白い盤面にバーインデックス、黒の長短針、赤の秒針というミニマルなデザインを採用しており、遠くからでもひと目で時刻がわかる機能性が追求されている。
【問い合わせ先】
DKSHジャパン
JUNGHANS(ユンハンス)
マックス・ビル バイ ユンハンス オートマティック
バウハウスで学び、機能主義デザインに大きな功績を遺した巨匠マックス・ビルによるデザイン。通常よりも細長いインデックスを採用し、時針の先端が届く位置にアラビア数字、分針と秒針の先端の位置に60秒表示のアラビア数字を配置して視認性を高めている。基本デザインを変えることなく誕生から60年の歳月を経て、まったく古さを感じさせないことがデザインの完成度の高さを証明している。
》バウハウス直系の巨匠マックス・ビルがデザイン
(右)1962年にマックス・ビルが書き起こした時計のデザイン画。現在の時計と見比べてみても、数字、インデックス、針のデザインとバランスにほとんど変更がないことがわかる。59年の月日が流れても、むしろ洗練された印象を感じさせる。 (左)1927年にバウハウスに入学してデザインを学び、建築、デザインなど様々な分野で功績を残した巨匠マックス・ビル。後にバウハウスの理念を継承するウルム造形大学の初代学長を務め、機能主義デザインを広めた。
【問い合わせ先】
ユーロパッション
TEL:03-5295-0411