うつ病は世界中の人を悩ませており、様々なトラブルの原因となっています。
しかし未だに、その予防法については「ストレスを軽減し健康的な生活を送る」など、大まかなことしか分かっていません。
そこでアメリカ・マサチューセッツ総合病院(MGH)精神科に所属するカーメル・チョイ氏ら研究チームは、10万人以上のデータベースを利用した特殊な2段階解析を実施。
その結果、テレビ視聴や昼寝、人と会わないなどの「活動的ではない生活パターン」が、うつ病と関連していると判明しました。
研究の詳細は、2020年8月14日付の科学誌『The American Journal of Psychiatry』に掲載されています。
10万人のデータベースを利用した2段階解析で重要なうつ病因子を発見する
まず研究チームは、重要なうつ病因子を見つけるために、UK Biobankの10万人を超えるデータベースを利用。
この中から、社会交流、メディア利用、睡眠パターン、食事、身体活動、環境など、うつ病の発症リスクと関連のある要素を幅広くスキャンしました。
そしてゲノムワイド関連解析に類似した手法「ExWAS:exposure-wide association scan」と、遺伝的変化を利用した統計学的手法「メンデルランダム化」による2段階解析を実施。
その結果、106の修正可能なうつ病因子の中から、うつ病発症に関連した重要な因子を特定しました。
テレビ視聴や昼寝はうつ病と関連していた!?
分析結果によると、うつ病との関連が最も顕著だったのは、「社会的なつながり」でした。
家族や友人との面会頻度が高い人は、うつ病から保護されていたのです。
「悩みを打ち明けられる人がいるかどうか」も大切ですが、もっと単純に「人と会うこと」こそが、うつ病に対する強力な保護因子として働いているのです。
一方、うつ病の発症と関連する要素には、テレビ視聴が含まれていました。
しかし、「テレビを見ること」が影響を与えているのか、テレビを見るために「座ったままの状態になること」が影響を与えているのか、どちらが原因なのかは分かりません。
さらに昼寝をすることもうつ病のリスクと関連していました。
これらは体を動かさない生活パターンに共通しているように思えます。
またマルチビタミンの常用もうつ病発症と関連していたとのこと。
とはいえ、これらうつ病因子がどのように関連しているのか詳しく知るためには、さらなる研究が必要でしょう。
この2020年の分析結果は、現代の私たちの生活スタイルに警告を鳴らすものとなります。
コロナ禍で人々は家族や友人との関係が希薄になっています。
そしてより多くの時間を家の中で過ごしているでしょう。
余暇はテレビ視聴に費やし、在宅ワークによって昼寝の頻度が高くなったかもしれません。
うつ病にならないためにも、今こそ、社会的なつながりや活動的な生活を意識すべきなのです。
参考文献
Study of more than 100 modifiable factors for depression identifies social connection as the strongest protective factor
元論文
An Exposure-Wide and Mendelian Randomization Approach to Identifying Modifiable Factors for the Prevention of Depression
提供元・ナゾロジー
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