世界初のハイビート自動巻きクロノグラフムーヴメントとして高い知名度を誇り、一時期はロレックスにデイトナ用のムーヴメントとして供給していた実績もあることから、いまでも人気を集めるエル・プリメロ。 1969年に生まれたこのムーヴメントは、毎秒10振動というハイビートながら50時間というパワーリザーブを備え、その強力な駆動力と精度の高さには定評がある。ゼニスは一貫してこのエル・プリメロを前面に押し出してきたが、最近もムーヴメント自体をさらにブラッシュアップして魅力的なクロノグラフを続々と送り出している。今回はクロノマスターラインに新たに加わった、クロノマスター スポーツを紹介していこう。
■Ref.03.3100.3600/69.M3100。SS、CEベゼル(41mm径)。10気圧防水。自動巻き(Cal.エル・プリメロ3600)。116万6000円
往年のスタイリングを継承したスポーティな3カウンター仕様の文字盤デザインには随所にこだわりが光る。特に印象的なのは濃淡のグレーやブルーなどカラーリングを細かく変えたインダイアルだろう。これにより表情に立体感を生み出すともに、新時代のクロノグラフにふさわしい個性を与えている。また白文字盤に対して黒のセラミックベゼルを合わせたことによって、全体的により引き締まった印象だ。
センターのクロノグラフ針は1/10秒計となっており、10秒間に1周するスピーディな運針が特徴だ
さらにディテールもゼニスらしい細やかで優美な雰囲気を強調している。ツヤ感があるセラミックベゼル、大振りのリューズ、表面仕上げを使い分けた3連ブレス、エッジのシャープで引き締まった処理など、相当に仕上げの質を追求した様子がうかがえる。サイズも41mmと程が良く、スポーツウオッチでありながらドレッシーな雰囲気も併せ持ったエレガントな仕上がりだ。
搭載されているムーヴメントは2019年に発表されたエル・プリメロ3600で、10振動はオリジナルのエル・プリメロを継承しているが、パワーリザーブは従来の50時間より伸びて60時間になっている。金曜の夜に外して月曜の朝からまた使い始めるビジネスユースを考えると、10時間駆動が伸びたことのメリットは非常に大きいはずだ。ケースバックからはムーヴメントの動きを視認できるが、ローターは大胆に肉抜きされているのでムーヴメントの動きを隠すことなく存分に楽しめるし、そのローターにあしらわれたゼニスのアイコン=星のデザインもかわいい。クロノグラフボタンのクリック感もしっかりしていて、押したときに指先に伝わってくる感触はさすがのエル・プリメロだ。
※写真の時計はサンプルのため、実機のローターのデザインは若干異なる
各社のめぼしいクロノグラフが軒並みプライスゾーンを上げてきているなか、エル・プリメロという伝説の名機を積みつつデザインもこれだけ垢抜けていて、120万円を切る価格設定はかなり魅力的に感じる。時計ファンの心をくすぐるポイントが多いモデルだが、オフタイムだけでなくビジネスシーンでも十分に通用する気品をたたえており、その守備範囲は非常に広そうだ。2021年の新作クロノグラフのなかで、かなり魅力的な1本といえよう。
【問い合わせ先】
LVMH ウォッチ・ジュエリー ジャパン ゼニス TEL.03-3575-5861
構成◎堀内大輔(編集部)/文◎巽 英俊/写真◎笠井 修
提供元・Watch LIFE NEWS
【関連記事】
・【第4回-セイコー(プレザージュ&セイコー 5スポーツ)】3大国産時計の売れ筋モデルを調査、本当に売れた時計BEST3
・【1位〜5位まで一挙に紹介します】“タイムギア”読者が選んだ、欲しい腕時計ランキングTOP10-後編
・進化したエル・プリメロを搭載したゼニスの意欲作、“クロノマスター スポーツ”が登場
・菊地の【ロレックス】通信 No.078|小振りで着けやすいベーシックな旧エアキング
・アンティークの無名クロノグラフって知ってますか?