Point
■マーシャル諸島に属するルニット島には、アメリカの核実験で生じた放射性物質を埋め立てるためのドームがある
■ドームの中には「プルトニウム239」という地上で最も有害な物質も含まれている
■現在ドームにはひび割れが確認されており、さらに島の土壌が浸水性であるため、すでに海中に汚染物質が漏出している
「臭いものにフタ」はやはり凶と出そうだ。
太平洋に浮かぶ「ルニット島」には、コンクリート製のドームが建設されている。これはアメリカ軍が核実験に伴い生じた放射性物質をまとめて格納するため、1977年に建造したものである。
ところが現在、ドームのひび割れや浸水性の土壌から汚染物質が大気や海中に漏れ出しているようだ。
しかもドームの中には、地上で最も有害な物質のひとつとされている「プルトニウム239」が含まれているという。
核実験により故郷が消失
太平洋上に位置する「マーシャル諸島」の中に「エニウェトク」という環礁がある。さらにエニウェトク環礁は40の島からなり、そのうちの一つが「ルニット島」に当たる。
エニウェトク環礁は近くにあるビキニ環礁と共に、アメリカ軍による核爆弾の実験場として使用されていた。1947〜58年にかけて当地で行われた核実験は67回におよび、しかも爆破の影響でエニウェトクに属する島のいくつかが消失しているというのだ。
また実験に伴い島の住民は強制退去を迫られ、1980年になるまで帰還を許されなかった。中には島が消えてしまったことで、永久に故郷を失った人までいる。
アメリカ軍はエニウェトクから撤退する際、爆破によってルニット島に空いたクレーターを利用して、島中の汚染物質の埋め立てを行なった。
その上にフタをするように建設されたのがこのドームというわけだ。
ドームは厚さ45cmのコンクリートで出来ており、約10万平方メートルの放射性物質を格納している。
ところがルニット島の土壌が浸水性であるため、放射性物質が海中に漏れ出しているのだ。さらにコンクリート表面にはひび割れも確認されており、今後サイクロンなどによる崩壊が起きれば汚染物の大量流出の危険性がある。
ドームは「死の棺桶」となるか?
ドーム内の汚染物質にはプルトニウム239が含まれている。これは人体に最も有害といわれる物質で、その半減期は2万4千年。
一方でコンクリートの耐用年数は長くて100年ほどだ。悲劇的状況となるのは必至であろう。
この問題に対し、国連事務総長のアントニオ・グテーレス氏は、ドームを「死の棺桶だ」と形容している。
現在もルニット島の汚染状況は広い範囲で続いており、地元住民は島から南に20km離れた環礁に住んでいる。またアメリカからマーシャル諸島共和国に支払われた賠償金も大幅に不足しており、マーシャル議会から批難の声が続出しているようだ。
2013年にアメリカが行なった汚染調査では、すでにエニウェトク環礁の汚染濃度は危険な水準まで達していることが判明している。死のフタが開けられることで、ドームが「パンドラの箱」にならないことを祈るばかりだ。
提供元・ナゾロジー
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