デイリーユースできる価格帯から、語りどころのある“名作モデル”を紹介していく連載企画。第5回は、世界初の音叉式腕時計アキュトロンの系譜に注目。
》機械式の精度の壁を打ち破る革新作の誕生
ハミルトンのベンチュラが、動力源をゼンマイから電気に置き換えた革新的な腕時計だったのに対し、ブローバのアキュトロンは、テンプやヒゲゼンマイといった伝統的な調速機を音叉に置き換えた世界初の腕時計(1960年発表)だ。
1950年代、アメリカの時計界ではエルジンやハミルトンを中心として熾烈なエレクトリックウオッチ開発競争が繰り広げられていた。小型化や駆動時間が飛躍的に高まるなど電気を動力源とすることで得られるメリットは多かったが、一方で初期のエレクトリックウオッチでは、調速機が従来の機械式と同様だったため精度の大幅な向上は見込めなかった。
そこで当時ブローバの電子技術者であったマックス・ヘッツェルは、高精度化のため、もっと高振動の調速機を適用できないかと考えた。そして従来の調速機に置き換わるものとして採用されたのが、チューニングフォーク、つまり音叉であった。ご存じのとおり、音叉とは柄が付いたU字型の金属で、音楽の調律などにも用いられる。
従来の機械式ムーヴメントがハイビートでも毎秒8~10振動だったのに対して、アキュトロンで用いた音叉の振動数はなんと毎秒360振動。これにより、一般的な機械式の精度が日差20~30秒であった当時としては驚異的な月差1分(日差2秒以内)という高精度を実現。このセンセーショナルなニュースは、世界の時計界に大きな衝撃を与え、ブローバの名声をいっそう高めたのである。ちなみに高振動化という同様の発想のもとで精度を追求し、後に生まれたのがクォーツ時計だ。
時計の歴史を塗り替えた画期的な腕時計であるアキュトロンの誕生から60年が経った2020年。ブローバは、再び新たな世界初となる“静電誘導発電”式の腕時計を生み出し、注目を集めている(同時にアキュトロンを1ブランドとして独立させている)。創業以来のパイオニア精神はいまも脈々と受け継がれているのだ。
》世界初の音叉式時計アキュトロンとは
1960年に“Accuracy(精密)”と“Electron(電子)”を組み合わせた造語である“ACCUTRON(アキュトロン)”の名で発表された世界初の音叉式腕時計。内部に設置したコイルに電圧をかけることで音叉を振動させ、その振動で歯車を回転させるという仕組みとなっている。様々なモデルが展開されたアキュトロンシリーズだが、そのなかでも文字盤がスケルトン仕様となり、デザインとしてのインパクトが強かった“スペースビュー”の人気が最も高い。また従来の機械式では“カチカチ”という、アンクルとガンギ車の衝突音がわずかに聞こえるが、アキュトロンの場合、“キィーン”という電子音に似た連続音が聞こえる。
》構想から10年を経て完成した新生アキュトロンの独自機構“静電誘導発電”とは
新生アキュトロンは、独自の静電誘導“発電”と“モーター”を使用した新ムーヴメントを搭載。文字盤上の5時と7時位置に備える二つの静電誘導発電タービンの電極間で、腕の動きに連動してツインタービンが高速回転することにより、電力が生まれる。畜電池に蓄えられた電力によって時分針が動き、10時位置に見える静電誘導モーターにより秒針が動く。この静電誘導発電機能が加わり、さらにパワーセーブ機能が搭載されていることで、一般的なクォーツ時計よりも使用頻度に応じてより長く使うことができる。また時計の精度は月差±5秒という高い精度を誇っている点も特徴だ。
ACCUTRON(アキュトロン)
アキュトロン スペースビュー2020
1960年のオリジナル アキュトロンのデザインとなる、大胆なスケルトン文字盤に特徴的な時計基板のグリーン、といった象徴的な要素を受け継ぐ最上位モデル。当時のアキュトロンを彷彿させるシンプルなケースの中に、発電機とモーターを大胆に見せるスケルトン文字盤とアイコニックなグリーンの差し色とが目を見張る、圧倒的なビジュアルのインパクトを再現した。
ACCUTRON(アキュトロン)
アキュトロンDNA
センセーションを巻き起こしたアキュトロンを現代風にアップデートした、フューチャリスティックな雰囲気を醸すモデルだ。新世代向けに再設計されたこのモデルは、大胆なスケルトン文字盤に加え、SFタッチを織り混ぜ、モダンでかつミニマルな美しさを備えながらも、高性能のムーヴメントを搭載した。ケースからラバーストラップに凹凸なく流れるようにつながる形状もスポーティな印象を与え、デザインにインパクトを与えている。
【問い合わせ先】
ブローバ相談室
TEL:0570-03-1390
文◎船平卓馬(編集部)
提供元・Watch LIFE NEWS
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