冷凍ピザをオーブンで十分に加熱します。

取り出したピザはチーズがグツグツと煮え立つほど熱くなっているでしょう。

しかし、ピザの下に敷いたアルミホイルは触っても熱くありません。なぜでしょうか?

インド・パンジャブ大学(Punjabi University)に所属する理学士アシシ・ティワリ氏が、オーブンで加熱したアルミホイルが熱くならない理由を解説しています。

(※ここで触れている「オーブン」は熱放射で食材を温めます。アルミホイルを電子レンジで温めるのはやめましょう。火事の原因になりえます)

目次

  1. アルミホイルの熱伝導率
  2. アルミホイルの熱容量

アルミホイルの熱伝導率

どうしてオーブンにいれたアルミホイルは熱くないのか
(画像=アルミホイルが熱くない2つの理由 / Credit:Depositphotos、『ナゾロジー』より引用)

オーブンに入れたアルミホイルが熱くならない理由には2つの要素が関係しています。

1つ目は、熱伝導率です。

熱伝導率とは、熱を伝える速さを表す物質の性質のことです。

熱伝導率が高いと熱は素早く伝わり「熱しやすく冷めやすい」状態になります。

この熱移動が起こりやすい性質を利用するなら、効果的に放熱できます。

逆に熱伝導率が低いと熱が伝わるのに時間がかかり「熱しにくく冷めにくい」状態になります。

この場合、熱移動が起こりにくいため、断熱材として利用できるでしょう。

では、アルミホイル(アルミ箔)の熱伝導率はどうなっているでしょうか?

アルミホイルはアルミニウムでできているため、高い熱伝導率を持っています。

つまりアルミホイルが熱くならない理由の1つは、アルミニウムの冷めやすい性質から来ていると分かります。

では、2つ目の理由はなんでしょう?

アルミホイルの熱容量

アルミホイルが熱くならない2つ目の理由は、「熱容量」にあります。

熱容量とは、物体がもつ「熱を蓄えたり吸収したりする能力」のことです。

「熱しにくい」とされているものは一般的に熱容量が大きく、発熱するために大量の熱エネルギーが必要です。

例えば、レンガやコンクリートなどが当てはまるでしょう。

逆に木材のように軽いものは、熱容量が小さく、熱を吸収したり蓄えたりするのが苦手です。

つまり密度が小さく軽いものは、熱容量が小さいのです。

どうしてオーブンにいれたアルミホイルは熱くないのか
(画像=アルミニウムは他の金属に比べて軽い / Credit:Depositphotos、『ナゾロジー』より引用)

では、アルミホイルの熱容量はどうなっているでしょうか?

アルミホイルの原料であるアルミニウムは、鉄や銅など他の金属と比べて密度が小さいです。

そのため同じ体積では、アルミニウムの方がかなり軽くなります。

実際、アルミニウムは鉄や銅の3分の1の重さしかありません。

このようにアルミニウムの密度は小さいので、熱容量もまた小さくなります。

アルミニウムには熱を蓄えたり吸収したりしづらいという性質があるのです。

加えて、加工品であるアルミホイルは非常に薄く、表面積が大きくなっています。

これによりアルミホイルにたまる熱は放出されやすくなっています。

さて、アルミホイルが熱くならない2つの要素をご紹介しました。

アルミホイルは、少しの熱しか保持できず、その熱移動も非常に速いのです。

オーブンから取り出した後、周囲の空気にすぐ熱が奪われてしまいます。

結果として私たちが触るころには、指のごく一部を軽く温める程度にしか熱が残っていません。

参考文献

Why Does Aluminum Foil Not Feel Hot After It’s Taken Out Of An Oven?

提供元・ナゾロジー

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