新型コロナウイルス感染症第5波が日本を襲っている。感染力の高いインド由来のデルタ株がまん延していることが主な理由と思われるが、一方で、新しいフェーズに入りつつあるとの見方もある。ワクチン接種も進んできた日本の現状は、東京は、世界の中でどんな位置づけなのか。正しく恐れるために、データをもとに改めて確認する。

死者急減の日本、どうなるオリンピック以降、世界との比較で正しく恐れる
進むワクチン接種が日本の危機を救うことはできるか(画像=『BCN+R』より引用)

 英・オックスフォード大学が運営するOur World in Dataの集計によると、現在、世界6大陸中で最も深刻なのが南米だ。人口100万人当たりの死者数が4月に311.1と急激に上昇。ペルー、ウルグアイ、ブラジルなどで死者が急増したのが原因だ。南半球の南米は冬でもあり、4月に大きなピークを形成した。5月以降は徐々に死者数も減少に向かっている。7月現在でも依然として6大陸中最悪ではあるものの、271.6まで下がってきた。終息に向けた動きとみることができそうだ。

 次に死者数が多いのがヨーロッパ。しかし南米の状況とは大きな隔たりがある。1月には211.7と200を超えていたが、5月以降急速に鎮静化。7月は41.0と6月から2か月連続で50を下回った。北米も同様のパターンで、1月には233.0とヨーロッパを上回る勢いだったが、2月以降急減、7月にはヨーロッパを下回るまで鎮静化した。いずれもワクチン接種の広がりが奏功しているものとみられる。全世界でもピークは1月で53.7。7月は33.5まで下がってきた。つまり、今のところ、この1月が世界的に見て最も危機的状況だった、ということだ。

死者急減の日本、どうなるオリンピック以降、世界との比較で正しく恐れる
(画像=『BCN+R』より引用)

 次に多いのがアジアだ。昨年はおおむね低い位置を維持してきたが、デルタ株の拡大で徐々に数値が上がってきている。ピークはこの5月で35.8だった。6月、7月と値は下がっているものの、欧米に比べて下がり方が鈍い。インドが終息に向かいつつある一方で、ここにきてオマーン、インドネシア、ジョージア、マレーシア、ミャンマーなどで急増している。3月まではほとんど死者がいなかったモンゴルも、4月以降急増。7月は76.9と高い値を示した。

 さて、日本はどうか。ピークはこの5月で22.2だった。アジア全体に比べても、かなり低い位置にある。以降、順調に値は減少し、7月では3.8と一桁台まで下がった。これは、6大陸中最も低いオセアニアの5.9を下回る低い数値で、希望が見える値だ。東京に限ると、ピークは1月の34.2だった。これは、当時のアジア7.7を大幅に上回った。しかし、7月には3.1と、1ケタ台に鎮静化している。

 7月23日の東京オリンピック開幕以来、日本の陽性者数は爆発的に増加。医療を圧迫し始めている。今後死者数の急増を招く恐れも出てきた。また、デルタ株のまん延に加え南米で流行しているラムダ株が上陸したとの報道もある。アジア全体でも、死者数が一定水準から下がらないのも心配だ。日本の状況は予断を許さない。幸いワクチン接種は進んでおり、6月、7月の延長線上で8月以降も死者数が低く抑え続けることができれば、「新しいフェーズ」に入れるかもしれない。
(BCN・道越一郎)

提供元・BCN+R

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