火葬や土葬は亡くなった人を葬るための一般的な方法です。

しかし最近では、より環境への影響を配慮した「人間の堆肥化」が提案されています。

アメリカのシアトルを拠点としている企業「Recompose」は、アメリカで最初に人間の堆肥化事業に参入しました。

この新しい埋葬方法は、既にいくつかの州で合法化されており、現在カリフォルニア州でも導入が検討されています。

目次

  1. 環境にやさしい埋葬とは
  2. 人間の堆肥化
  3. 進む合法化と懸念

環境にやさしい埋葬とは

アメリカの州で続々と故人の堆肥化が合法化 環境に優しい埋葬へ
(画像=環境にやさしい埋葬が求められている / Credit:Depositphotos、『ナゾロジー』より引用)

火葬は化石燃料を使用するため、毎年何百万トンものCO2を排出します。

また土葬では防腐処理された遺体を土に埋める場合があり、化学物質が地球に浸透するかもしれません。

実際、オーストラリア・マードック大学(Murdoch University)環境科学科に所属するフランシス・マレー准教によると、「遺体が劣化すると土壌や地下水に汚染物質が染み出すおそれがあります」とのこと。

もっと環境にやさしい埋葬方法はあるのでしょうか?

こうした背景にあって新しく考案されたのが、「人間の堆肥化」です。

人間の堆肥化

アメリカの州で続々と故人の堆肥化が合法化 環境に優しい埋葬へ
(画像=スチール製の容器に遺体と有機物を入れ、微生物によって堆肥化させる / Credit:Recompose、『ナゾロジー』より引用)

Recompose社が提案する人間の堆肥化は、遺体を有機物還元させて自然に返し、植物の成長を助けるというものです。

堆肥化の最初のプロセスでは、遺体がスチール製の容器に入れられます。

このとき、金属製の詰め物、ペースメーカー、人工関節などの無機物を除去。

次いでわらやウッドチップ、ムラサキウマゴヤシ、その他植物からなる有機材料を敷き詰めます。

さらに容器の中の温度や湿度、炭素、窒素、酸素、水分などが調整され、遺体は容器内の微生物によって徐々に堆肥化。

約30日後には、体の骨や歯を含むすべてが土(堆肥)に変化し、その量は2台の手押し車がいっぱいになるほどです。

そしてこの土は堆肥として森林で使用したり、家族に返還したりできます。

進む合法化と懸念

アメリカの州で続々と故人の堆肥化が合法化 環境に優しい埋葬へ
(画像=Recompose社の創設者兼CEOであるカトリーナ・スペード氏が「牛の堆肥化」サンプルを見せている / Credit:Elaine Thompson(AP)_‘A literal return to the earth’: is human composting the greenest burial?(2021)、『ナゾロジー』より引用)

現在カリフォルニア州の議員たちは「遺体を有機物として土に還すこと」を認める法案を検討中であり、将来的には人間の堆肥化が1つの選択肢として認められるかもしれません。

もし、カリフォルニア州の住民全員が死後の堆肥化を選択した場合、それによって節約されるCO2は、1年間で22万5000世帯(サンフランシスコの半分以上)の電力を作り出す際に排出されるCO2量と同等だと言われています。

そしてこれはカリフォルニア州初めての試みではありません。

既にワシントン州では、2020年に自然有機還元が合法化されています。

人間からできた土を家族に与えたり、森林で使用したりすることが可能なのです。

またコロラド州も同様の法律を制定していますが、人が食べる作物の栽培に人間堆肥を使用することは認められていません。

そして現在、カリフォルニア州と同じく、デラウェア州、ハワイ州、バーモンド州でも合法化が検討されているとのこと。

もちろん、すべての人が新しい埋葬方法に賛成しているわけではありません。

「故人への敬意に欠けている」また「感情的な距離を生み出してしまう」との懸念もあるのです。

いずれにせよ、今後も「1つの選択」として人間の堆肥化が多くの州で検討されていくでしょう。


参考文献

‘A literal return to the earth’: is human composting the greenest burial?

Dust to dust: Will California lawmakers legalize human composting — transforming bodies into soil?


提供元・ナゾロジー

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