ネコは飼い主が名前を呼んでも反応しないことが多いです。

これは、飼い主の声や自分の名前が分かっていないからなのでしょうか?

近年の日本の研究によって、実はネコは「飼い主の声」も「自分の名前」も分かっていたと判明しました。

ネコはあえて飼い主の呼び声を無視していたのです。

目次

  1. ネコは飼い主の声を理解できる
  2. ネコは自分の名前を聞き分けることが可能

ネコは飼い主の声を理解できる

ネコは「自分の名前」も「飼い主の声」も分かっていてあえて無視している
(画像=猫は飼い主の声を判別できる / Credit:Depositphotos、『ナゾロジー』より引用)

ネコが名前を呼ばれても知らん顔しているのは、飼い主の声を認識していないからなのでしょうか?

当時、東京大学大学院総合文化研究科に所属していた齋藤 慈子(さいとう あつこ)氏は、2013年にネコが飼い主の声を聞き分けられるか調査しました。

研究では、一般家庭で飼育されている合計20匹のイエネコを対象に、名前を呼ぶ飼い主と面識のない人(他人)の声にどのように反応するか実験しました。

そして反応の強さ(頭・耳を動かす、鳴く、尾を動かす、移動するなど)によって、声を識別できているか判断したのです。

その結果、多くのネコは名前を呼ばれても、頭や耳を動かす程度しか反応しませんでした。

また他人の声に対しては何度か聴くことで馴れが生じ、反応が鈍くなるが、飼い主の声が聞こえた際には反応が元に戻ると判明。

つまりネコは、飼い主の声を他と区別していながら、微妙な反応をしていたことになります。

しかし、飼い主の声を判別できたからと言って、「自分が呼ばれたと分かっていないのでは?」という疑問が残ります。

齋藤氏はこの点にもアプローチしています。

ネコは自分の名前を聞き分けることが可能

ネコは「自分の名前」も「飼い主の声」も分かっていてあえて無視している
(画像=猫は自分の名前を判別できる / Credit:Depositphotos、『ナゾロジー』より引用)

斎藤氏は、2019年には上智大学総合人間科学部心理学科に所属しており、この時、ネコが自分の名前を聞き分けるか調査した論文を発表しました。

その研究では、ネコに「自分の名前」「一般名詞(長さとアクセントをネコの名前とそろえたもの)」「同居ネコの名前」を連続して聞かせました。

まず「一般名詞」「同居ネコの名前」だけを4回続けて聞かせることで「馴れ」を生じさて反応を鈍らせます。

その後「自分の名前」を聞かせると、馴れによって小さくなっていたネコの反応が大きくなりました。

この結果は、飼い主の声だけでなく、見知らぬ人の声でも同様でした。

つまりネコは自分の名前をしっかりと聞き分けることができるのです。

ちなみに、一般家庭のネコは自分の名前を聞き分けられましたが、ネコカフェのネコは、「同居ネコの名前」と「自分の名前」を判別できなかったとのこと。

さて、この2つの研究から「ネコは飼い主の声も、自分が呼ばれていることも、しっかりと判別できる」と分かります。

しかし、犬のように飼い主の呼び声に応じてこちらに走ってくることはほとんどありません。

ネコはすべて分かったうえで無視していたのです。

「ネコはツレない」というのはどうやら本当のようです。

文・ライター:大倉康弘 編集者:KAIN/提供元・ナゾロジー

参考文献

ツレない猫、答えないけど飼い主の声聞き分ける。科学的に証明

ネコは自分の名前を聞き分ける~ヒトの発する「自分の名前」と「他の名詞」や「同居ネコの名前」を区別する能力を実験的に証明~

元論文

Vocal recognition of owners by domestic cats (Felis catus)

Domestic cats (Felis catus) discriminate their names from other words

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