東京都豊島区に位置する池袋は8路線が乗り入れる一大ターミナルであり、交通アクセスの良さが魅力だ。近年は「住みたい街」として名前が挙がる人気エリアになっている。池袋にマンションを購入するには世帯年収がいくら必要なのか、シミュレーションしてみよう。

池袋のマンション相場は?ファミリーより単身者・DINKS向け物件が中心

池袋は2017年以降、4年連続で「借りて住みたい街」の1位になっている(「2020年 LIFULL HOME'S 住みたい街ランキング首都圏版」より)。賃貸需要が高ければ、マンションを購入する場合にも資産価値が下がりにくく、将来売却や賃貸に出すことになったとしても有利だ。

池袋周辺は場所柄もあり、単身者・DINKS(子どもがいない共働き世帯)向けの物件が中心だ。そのため広い間取りのファミリー向け物件はやや限られている。

現在販売中の新築マンションの価格をみると、池袋駅徒歩9分、2LDK(専有面積約47平方メートル)の間取りで5,700万円台から(最高価格は1億3,900万円)。池袋駅徒歩10分、別の新築マンションは、1DK(専有面積約30平方メートル)の間取りで3,980万円になっている。

中古の場合はどうか。不動産情報サイト「アットホーム」によると、池袋駅徒歩圏内の中古マンションの価格相場は、単身・DINKS向け1DK~2DKの間取りで3,700万円台。ファミリー向け2LDK~3DKの間取りで5,200万円台、3LDK~4DKでは7,100万円台である。需要の高さもあってか、中古と新築で価格相場にあまり差はみられない。(※すべて2020年2月14日時点で売り出し中の価格)

住宅ローンを借りて池袋にマンションを購入するために必要な年収

住宅ローンはいくらでも借りられるわけではない。借りられる金額の上限は、購入する物件の選択や資金計画を考えるにあたり、非常に重要なポイントだ。

年収に占めるマンション購入の年間返済額の割合は30~40%以下

池袋にマンションを購入するために住宅ローンを組む場合、借り入れできる金額は額面年収に占める年間合計返済額(返済比率・返済負担率)による制約を受ける。返済額には住宅ローンのほか、マイカーローンや奨学金などの返済分も含まれるので、もしこれらの返済があれば借り入れ可能額はその分小さくなる。

返済比率の条件は金融機関や借り入れ希望者の年収などによって異なる。一般的には年収の30~40%に設定されている。フラット35の場合、額面年収400万円未満の人は返済比率30%以下、額面年収400万円以上の人は返済比率35%以下であることが条件だ。

池袋にマンションを購入するときの借り入れ可能額は審査金利が使われる

借入金利が高いほど返済額は増え、借り入れ可能額は少なくなる。一般的な住宅ローンの審査では、金融機関は実際に適用される金利よりも高い「審査金利」を使って借り入れ可能額を判定する。これには将来金利が上昇しても返済が滞らないよう、返済額に余裕持たせる目的がある。

審査金利は金融機関によって異なるが、一般的には3~4%程度に設定されている。フラット35については借入期間中に金利が変動しないため、審査は申込時の適用金利で行われる。

池袋にファミリータイプのマンションを購入するには年収800万円以上が目安

では池袋にマンションを購入するにはどのくらいの年収が必要なのか、具体的にシミュレーションしてみよう。今回のシミュレーションで用いる返済比率は35%、審査金利は3.5%および1.2%(フラット35利用時)とする。

子どものいる世帯であれば、リビング・ダイニングと夫婦の寝室、子ども部屋などで2LDK~3LDK程度の間取りは欲しいところだ。この間取りのマンションを池袋に購入するのであれば、予算は諸費用を含め6,000万円程度はみておきたい。

池袋に6,000万円のマンションを購入するために必要な年収は、民間金融機関の住宅ローンを頭金1割で35年ローンを組んだ場合、返済比率から逆算すると約800万円である。そのほか条件を変えて必要な年収を計算すると次のようになる。

頭金1割(600万円)で民間金融機関の35年ローンを利用するケース……約768万円

住宅ローン(借入金額):5,400万円
借入期間:35年
年間返済額:約269万円(ボーナス返済なし)
必要な年収:約768万円(返済比率35%・他の借入なし)

頭金1割(600万円)で民間金融機関の25年ローンを利用するケース……約929万円

住宅ローン(借入金額):5,400万円
借入期間:25年
年間返済額:約325万円(ボーナス返済なし)
必要な年収:約929万円(返済比率35%・他の借入なし)

頭金1割(600万円)でフラット35(借入期間35年)を利用するケース……約542万円

住宅ローン(借入金額):5,400万円
借入期間:35年
年間返済額:約190万円(ボーナス返済なし)
必要な年収:約542万円(返済比率35%・他の借入なし)

頭金1割(600万円)でフラット35(借入期間25年)を利用するケース……約717万円

住宅ローン(借入金額):5,400万円
借入期間:25年
年間返済額:約251万円(ボーナス返済なし)
必要な年収:約717万円(返済比率35%・他の借入なし)

頭金2割(1,200万円)で民間金融機関の35年ローンを利用するケース……約682万円

住宅ローン(借入金額):4,800万円
借入期間:35年
年間返済額:約239万円(ボーナス返済なし)
必要な年収:約682万円(返済比率35%・他の借入なし)

頭金2割(1,200万円)で民間金融機関の25年ローンを利用するケース……約826万円

住宅ローン(借入金額):4,800万円
借入期間:25年
年間返済額:約289万円(ボーナス返済なし)
必要な年収:約826万円(返済比率35%・他の借入なし)

頭金2割(1,200万円)でフラット35(借入期間35年)を利用するケース……約483万円

住宅ローン(借入金額):4,800万円
借入期間:35年
年間返済額:約169万円(ボーナス返済なし)
必要な年収:約483万円(返済比率35%・他の借入なし)

頭金2割(1,200万円)でフラット35(借入期間25年)を利用するケース……約638万円

住宅ローン(借入金額):4,800万円
借入期間:25年
年間返済額:約223万円(ボーナス返済なし)
必要な年収:約638万円(返済比率35%・他の借入なし)

頭金1割で民間金融機関の25年ローンを組むケースでは、930万円以上の年収が必要になる。一方、頭金を2割準備し、返済期間35年でフラット35を利用するケースでは、年収500万円でもローンを組める。

このようにローンを組むために必要な年収は、用意する頭金(自己資金)の割合や借入期間、利用する住宅ローンの審査金利などによって異なる。池袋にマンションを購入するための年収シミュレーション結果は目安として、実際の状況に応じた判断が必要だ。

池袋に単身・DINKS向けのマンションを購入するには年収550万円以上が目安

独身の人やDINKS世帯などに適した、1LDK~2LDK程度の間取りのマンションを池袋に購入する場合には、諸費用を含め4,000万円程度の予算はみておきたい。

池袋に4,000万円のマンションをローンで購入するために必要な年収は、返済比率から逆算すると次のようになる。頭金の割合や借入期間にもよるが、年収500万円台でも購入は可能だ。

頭金1割(400万円)で民間金融機関の35年ローンを利用するケース……約511万円

住宅ローン(借入金額):3,600万円
借入期間:35年
年間返済額:約179万円(ボーナス返済なし)
必要な年収:約511万円(返済比率35%・他の借入なし)

頭金2割(800万円)で民間金融機関の25年ローンを利用するケース……約552万円

住宅ローン(借入金額):3,200万円
借入期間:25年
年間返済額:約193万円(ボーナス返済なし)
必要な年収:約552万円(返済比率35%・他の借入なし)

池袋のマンションが購入できる年収と無理なく返済ができるかどうかは異なる

池袋のマンションを購入できる(ローンを組める)からといって、無理なく返済できるとは限らない。ここまでみてきたのは、あくまで「池袋にマンションを購入する(ローンを組む)」ために必要な年収の目安だ。

住宅ローンの審査に通れば無理なくマンションを購入できるのか

民間金融機関の住宅ローンでは審査金利と適用金利が異なるため、審査金利でみた返済比率が35%であれば、実際の返済比率はこれよりも低くなる。

たとえば頭金1割で池袋に6,000万円のマンションを購入する場合(借入金額5,400万円・ボーナス返済なし)、適用金利が年0.50%であれば年間返済額は約169万円になる。審査の段階で返済比率35%以下の条件を満たすために必要な800万円程度の年収があれば、実際の返済比率は約21%だ。一般的に無理なく返済できる返済比率の目安は20~25%といわれており、これを満たしている。

金融機関としても返済が滞ることは避けたい。住宅ローンの審査に通るということは、返済に問題がないと金融機関に判断されたといえるのだ。

池袋にマンションを購入するときは家計の状況も考慮する

住宅ローンの審査に通っただけで安心はできない。審査ではローン返済額以外の家計の支出については考慮されていないからだ。返済比率が同じでも、各家庭ごとに生活費や教育費などがどの程度かかるかによって負担感が異なってくる。

さらに転職や病気などで収入が減少したり、変動金利を選択した場合に金利上昇し返済額が増えたりするリスクも想定しておくべきだ。

池袋でマンションを購入するときには、これらを踏まえたうえで無理のなく返済できるかどうかを個別に判断する必要がある。

年収以外に池袋にマンション購入を検討するならエリア情報も把握する

マクロミルの調査によると東京都内通勤者の半数以上が片道1時間以上かけて通勤している(※2016年9月~10月に実施した調査データ調べ)。通勤・通学に便利な池袋に住み、満員電車で長時間過ごす必要がなくなれば、生活の質は大きく向上するだろう。

池袋は飲食店や商業施設も充実しており生活にも便利だが、周辺には繁華街など治安が良いとは言えないエリアもあるので、注意が必要だ。購入を検討するマンションの周辺や普段通る道などの状況は、曜日や時間帯を変えてよく確認しておこう。

池袋のマンションは賃貸需要も高く、比較的資産価値が下がりにくいというメリットもある。空き家問題など不動産が負債となる時代に、価値ある物件を購入することは重要だ。

需要の高いマンションであれば売却したり賃貸に出したりしやすい。将来、子供が居住を希望しない場合や、老後の移住などを考えているときも柔軟に対応できる。池袋は都心の便利な暮らしを望む人にとって有力な候補といえるだろう。

文・竹国弘城(ファイナンシャル・プランナー)
 

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