ケニア北東部の野生生物保護区に、神秘的な姿をしたオスの白キリンが存在します。

このオスにはもともと、同じ白キリンの家族が2頭いましたが、今年3月に密猟者によって命を奪われました。

そのため、現在では「現存する唯一の白キリン」と呼ばれています。

生物保護団体は今月8日、オスの白キリンが同じ運命をたどらないよう、GPSを取り付けて追跡観察をはじめました。

目次

  1. 生き残った白キリンを守るため24時間体制で監視
  2. 白い体色は「リューシズム」が原因

生き残った白キリンを守るため24時間体制で監視

オスの白キリンは現在、ケニア北東州ガリッサにある「イシャクビニ・ヒロラ保護区」で暮らしています。

最初にケニアで発見されたのは2016年3月のことで、2頭の家族(メスと生後7ヶ月の子ども)も一緒でした。

その1年後に、ケニアのガリッサ郡の監視カメラに映り込んだことから、白キリンに再び注目が集まりました。

しかし不幸なことに、メスと子どもは密猟者によって殺され、同保護区で遺骸が見つかっています。

現存する「世界唯一の白キリン」が神秘的、GPSを装着し密猟者対策もバッチリ(ケニア)
(画像=生きていた頃のメス(右)と子ども(左) / Credit: ISHAQBINI HIROLA COMMUNITY CONSERVANCY、『ナゾロジー』より引用)
現存する「世界唯一の白キリン」が神秘的、GPSを装着し密猟者対策もバッチリ(ケニア)
(画像=白キリンが生息するガリッサ地区 / Credit: ISHAQBINI HIROLA COMMUNITY CONSERVANCY、『ナゾロジー』より引用)

そこで保護団体は、生き残ったオスを守るため、角にGPSを取り付けて、密猟者から安全な距離を保てるよう追跡観察をはじめました。

GPSはキリンの居場所をリアルタイムで通知し、それをもとにレンジャーが密猟者を近づけないようにします。

同団体のモハメド・アフメドヌール氏は、今週火曜の声明で「今のところ白キリンは、豊かな環境にも恵まれ、元気に暮らしています。保護に協力してくれているケニア野生生物協会や保護活動家の方に感謝したい」と述べています。

白い体色は「リューシズム」が原因

一般に、体色が白くなる個体は「アルビノ」と言われますが、白キリンの白色化は「リューシズム(白変種)」が原因とわかっています。

アルビノは、メラニン(色素)の生成にかかわるDNA情報が欠損することで起きる”先天性の遺伝子疾患”です。

対するリューシズムは、メラニンの遺伝情報は正常ですが、体色を白くするDNAのせいで体が白くなっています。

そのため、アルビノでは瞳の色まで色素が落ちますが、リューシズムでは瞳も同じ色のままです。

過去にはリューシズムによって黄金色になったカメも発見されています。

現存する「世界唯一の白キリン」が神秘的、GPSを装着し密猟者対策もバッチリ(ケニア)
(画像=アルビノの猫(瞳の色素も落ちる) / Credit: ja.wikipedia、『ナゾロジー』より引用)
現存する「世界唯一の白キリン」が神秘的、GPSを装着し密猟者対策もバッチリ(ケニア)
(画像=リューシズムのライオン(瞳の色は変化しない) / Credit: ja.wikipedia、『ナゾロジー』より引用)

現在、アフリカの15カ国以上に生息するキリンは、絶滅危惧種に指定されており、全体でも6万8000頭ほどしかいません。

そのため、希少価値が高く、密猟者はキリンの皮や体の一部を狙って高値で売買しています。

アフリカ野生生物財団 (AWF) によると、キリンの個体数の40%が過去30年間に姿を消しており、密猟や野生生物の取引がその減少の一因となっているようです。


参考文献

bbc


提供元・ナゾロジー

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