隣の席に座ると親しくなれる確率が跳ね上がるようです。
8月11日にドイツのライプツィヒ大学の研究者たちにより『PLOS ONE』に掲載された論文によれば、隣の席というだけで友達になれる確率が「7%」上がることが示されました。
7%というと微妙な数字な気がしますが、単に隣の席に座るだけで獲得できる数値としては異例と言えるでしょう。
どうやら距離的な近さという条件だけでも、2人の間には知らず知らずの間に「友情ポイント」が蓄積していくようです。
どうして隣の席に座るだけで、人間は仲良くなっていくのでしょうか?
「7%」が凄い数値である理由
近年の研究により、人間がどのような基準で友達を選ぶかが明らかになってきました。
友情の形成において最も重要なのは「自分自身との類似性」であることが判明しています。
この類似性には、性別・民族・成績・趣味・性癖・経済力・あるいは他人の目には一見してわからない隠れた要素など、様々なものが含まれます。
「類は友を呼ぶ」ということわざは、本当だったと言えるでしょう。
また、単純な接触の繰り返しが、好感度を上げるという「単純接触効果(ザイオンス効果)」も有名です。
あまり好きでない人でも、何度も会っているうちに悪くないと思えてくるのは、単純な接触が好感度を上げ、友情の形成を促しているからです。
人間の友情や好感度は複雑なようで、案外単純なのかもしれません。
そこで今回、ドイツのライプツィヒ大学の研究者たちは、新たに「隣の席に座る」ことが友情の形成に役立つかどうかを調べることにしました。
研究者たちは調査に当たってはまず、ハンガリーにある40の学校に通う、8歳から14歳の児童2966人に対して強制的な席替えを行いました。
また、どの生徒をどの席に座らせるかは乱数表を用いてランダムに決定。
そして1学期の間、席順を維持し続けてもらい、最後にクラスで最も親しい友人ベスト5を選んでもらいました。
すると、非常に興味深い結果が現れました。
離れた席に座った生徒が友人ベスト5に入る確率は15.3%に過ぎなかったのに対し、隣の席に座った生徒が選ばれる確率は22.3%にも及んだのです。
つまり、隣の席に座るだけで友達になれる確率が7%も上がっていたのです。
この結果は、たとえ強制的なものであっても、空間的な近さが、友情形成を促す強力な因子であることを示します。
そうなると気になるのが、空間的な近さが、他の友情形成を促す要因と組み合わさるとどうなるかです。
似た者同士が隣に座るとさらに友情が作られやすい
今回の研究では、隣の席に座る生徒の、自分との類似性についても記録されました。
類似性の尺度として選ばれたのは、性別・成績・民族などの要素でした。
結果、似た者同士が隣の席に座ると、似ていない者同士に比べて遥かに友情を形成しやすいことが判明しました。
似た者同士は潜在的に友達になれる確率が高いため、隣の席というキッカケを与えることで、一気に友達になったようです。
一方、似ていない者同士であっても、隣の席に座ることが友情形成に与える影響は有意であることが示されます。
性別が異なる場合や成績が大きく異なる場合、民族が異なる場合でも、隣に座った生徒は、友人ベスト5に選ばれる確率が大幅に増えていたからです。
意図的な席決めで友人関係を制御できる可能性がある
今回の研究によって、類似性・接触頻度に続いて、空間的な距離の近さも友情形成において重要な役割を果たすことが示されました。
学生時代に親しかった友人が隣の席に座っていたというケースが多いのは、科学的な事実だったわけです。
研究者たちは、意図的な席替えを行うことで、多様性の高い友人関係をクラスに構築できると考えています。
既存のランダムなくじ引きのような席決めでは、成績が高い生徒同士、低い生徒同士などのように、グループの性質に偏りがうまれる確率が高くなってしまいます。
しかし意図的に成績の高い生徒と低い生徒を隣の席にすることで、友好関係を制御し、多様な関係を構築させられる可能性があります。
研究者たちは今後も友情関係を制御する因子を特定していくとのこと。
もし友達になりたい人がいるなら、同じ趣味を好きになるなどの類似性を高めつつ、接触回数を増やし、近い席に座れるように席割を操作するといいかもしれません。
小細工の積み重ねが、いつか本当の友情につながる日が来るでしょう。
参考文献
Assigned classroom seats can promote friendships between dissimilar students, study finds
元論文
Proximity can induce diverse friendships: A large randomized classroom experiment
提供元・ナゾロジー
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