目次

  1. 多様で新規性のある移動は幸福をもたらす
  2. 移動を検知する幸福回路が発見される
  3. 幸福回路は強化できる
幸せの鍵は新しい場所!人の脳は「移動」を快楽と捉えていた
人間の脳は移動と快楽が結びついており、新しい場所にでかけるだけで幸せになれる生き物だった/Credit:depositphotos(画像=『ナゾロジー』より引用)
point
・人間の脳には移動に喜びを感じる特別な幸福回路がある
・幸福回路は記憶を司る海馬と快楽を支配する線条体の間に配線されていた
・新しい移動を行うことで誰でも幸福回路を強化できる

「散歩に出歩いて、ちょっと新しい道を進んでみたらすごく楽しかった」――

新たに行われた研究では、そんな幸福体験を科学的に裏打ちするような結果が得られました。

研究では、人間の脳は「多様性や新規性のある移動」を検知すると報酬系を作動させ、喜びや幸福感を生み出すことが分かりました。

これまでにも、マウスなどの動物によって移動が脳の報酬系を活性化させることは知られていましたが、人間で同じような、「幸福発生回路」がみつかったのは初めてです。

では、最大の幸福感をうみだすにはどのような移動が最適なのでしょうか?

多様で新規性のある移動は幸福をもたらす

幸せの鍵は新しい場所!人の脳は「移動」を快楽と捉えていた
距離も重要だが、多様性と新規性のほうがさらに重要/Credit:nature neuroscience(画像=『ナゾロジー』より引用)

調査では132人のボランティアが選ばれ、3カ月間、彼らの移動経路をGPSで追跡すると同時に、ランダムなタイミングで幸福度を答えるアンケートに回答してもらいました。

その結果、移動距離が長い人間ほど、日々の生活でより高い幸福度を感じている傾向があることがわかりました。

また同じ移動距離でも通勤や通学とは違い、多様性や新規性がある移動ほど、感じている幸福感がより高くなっていたようです。

同じような移動と快楽の相関関係は、先行するマウスなどを用いた研究により明らかになっていますが、人間で同じような結果が得られたのは今回が初めてとなります。

研究者たちは「人間には明らかに移動を快楽と感じるように頭が配線されている」と述べています。

また移動から快楽を得られる仕組みは、人類の歴史の大部分を占める非定住の狩猟採集生活を送るにあたり、モチベーションの増加に寄与していると考えられます。

移動を検知する幸福回路が発見される

幸せの鍵は新しい場所!人の脳は「移動」を快楽と捉えていた
移動により活性化する幸福回路は海馬と線条体の間に配線されている/Credit:nature neuroscience(画像=『ナゾロジー』より引用)

次に研究者は、脳のどの部分が移動に対して幸福感を与えているかを調べることにしました。

そのため、特に移動によって高い幸福を感じていると考えられる人間を選び、脳の活性化している部分を調べました。

結果、移動に幸福を感じている人間の脳では、記憶を司る海馬と快楽を司る線条体(共に黄色い部分)の活動に強い連携が確認されました。

これは、脳が現在行っている移動を過去の記憶と照合し、その移動に多様性と新規性が高い場合には「こほうび」として脳に快楽を与えていることを意味します。

記憶を元にした移動の評価と「ごほうび」としての快楽。これが移動によってもたらされる幸福回路の正体だったのです。

幸福回路は強化できる

幸せの鍵は新しい場所!人の脳は「移動」を快楽と捉えていた
どんどん幸福回路を回して幸福感でいっぱいになろう/Credit:depositphotos(画像=『ナゾロジー』より引用)

また研究では、前日に感じていた幸福感の高い人ほど、次の日の移動の多様性と新規性を高くする傾向が示されました。

つまり移動によって幸福を感じ、幸福を感じていれば、さらに移動を大きくして、もっと幸福感を得るという正のスパイラルが起きていたのです。

このスパイラルに一度乗れば、誰でも海馬(記憶)と線条体(快楽)の連携はどんどん強くなると考えられます。

幸福を呼び込むための様々な自己啓発本やハウツー本が出ていますが、移動ほど簡単な方法はあまりありません。

自粛生活の中でも、散歩ルートや通勤・通学のルートを小まめに変えていけば、幸福回路はきっと答えてくれるでしょう。

研究内容はマイアミ大学のアーロン・ヘラー氏らによってまとめられ、5月18日に学術雑誌「nature neuroscience」に掲載されました。 Association between real-world experiential diversity and positive affect relates to hippocampal–striatal functional connectivity https://www.nature.com/articles/s41593-020-0636-4#author-information reference: eurekalert / written by katsu

提供元・ナゾロジー

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