夏の恒例の天文ショーと言ったら、ペルセウス座流星群ですよね。そしてペルセウス座といえば、神話の中でもトップクラスに壮大な物語を持っています。有名なのは、ペガサスにまたがったヒーローが、危機一髪で囚われの姫を助ける冒険談。
…でも実は、「登場人物、みんなクズすぎんか?」ってバージョンもあるんですよ。今回は、ペルセウス座流星群の観察のポイントとともに、星待ち中のネタに「大人向け」雑学をお届けします。
一番クズは誰だ? ペルセウス座神話
一般的に知られる神話は、ざっくりまとめると以下。
古代エチオピア王家にアンドロメダという美しいお姫様がいた。
ケフェウス王の妻、王妃カシオペヤが海の妖精よりも娘アンドロメダが美しいと言ったところ、海の神ポセイドンの怒りを買い、化け物クジラが海で暴れるように。
ケフェウス王は神の信託により、泣く泣くアンドロメダを海の岩に鎖でつないで生贄に。
化け物クジラにアンドロメダが食べられようとしたとき、その目を見たものを石にする化け物、メデューサを倒した帰りのペルセウスが通りかかった。
ペルセウス、メデューサを化け物クジラに見せ、石化して倒す。
アンドロメダとペルセウスの2 人は結婚して、めでたしめでたし。
美女の危機に翼の生えた白馬にまたがり、空から登場するペルセウスのイケメン&ヒーロー談。
とはいえ、グリム童話と同様に、これは万人向けバージョン。たとえば「赤ずきんちゃん」のもともとの話なんて、猟師など出てこない救いのないものでしたからね。
以下が万人向けバージョンでない「大人向け」ペルセウス座神話です。
ペルセウス:助けたのは「偶然」じゃなかった
アンドロメダ姫が鎖で縛られているのを見つけたペルセウスはその美しさに一目惚れ。その後、ケフェウス王に助けたら嫁にくれと交渉します。すぐ助けずスルーするとは余裕がありますね。
ケフェウス王:嫁にやると嘘をついた
了承はしたものの、本音では嫌だったので反故に。アンドロメダのもともとの婚約者と共謀してペルセウスを暗殺しようとします。
ペルセウス:人々を石にした
それを知ったペルセウス、ガチギレ。ケフェウス王やアンドロメダのもと婚約者ほか共謀者たちをメデューサの首で石にします。
絵的にヒーロー感薄いような。下手すると悪役に見えてきます。
アンドロメダ姫:ドM…?
父と母、夫もこんなんじゃトラウマと人間不信になる体験の山積みですが、神話の家系図を見ると子どもが7人もできた様子。夫婦仲は良好だったんじゃないかと思います。神経が図太いのか、ドMなのか。
カシオペヤ王妃:自慢のため海の妖精をディスった
そもそもの問題が起こったのはカシオペヤ王妃のせいなんですが、ペルセウスやケフェウス王に比べるとかすみますよね……。
かわいいもんですよ、ね?
さて、今回の神話が「正しい」のではなく、いろいろなバージョンの話があるのだな、と神話の深みを楽しむのが正解です。
それに今回の話は、古代の作家ヒュギーヌスの著作からものです。ケフェウス王は反対しておらず、石にされたのはアンドロメダのもと婚約者とその仲間だけだった話もあります(上の絵画はこちらが題材です)。
ちなみに、今回取り上げた「ペルセウス座」と「くじら座」は、明るさが変わる面白い星「変光星」を持っていることで知られます。こちらの記事で神話とともに紹介していますよ。
ペルセウス座流星群の見やすい時刻や方角は?
さて、神話からペルセウス座に興味を持っていただいたところで、今年のペルセウス座流星群の観測情報をお伝えします。
2021年は8月13日未明の4時頃が極大です。極大の時間近くが夜ですし、月も21時頃には沈むので絶好の観測条件です。
放射点が高くなってくる8月12日の21時頃から、日の出前、13日の3時頃が観測チャンスです。国立天文台の情報によると、極大の時刻近くは1時間に50個程度見られると期待されます。
北東の空を見上げると特徴的なWの形をした星座がカシオペアです。都会でも簡単に見つかるため、放射点を探す場合は目印にしてください。
ただし、流星群は空の広い範囲で見えるため、方角よりもなるべく空がひらけたところで観察できることを優先したほうがいいでしょう。
23区でペルセウス座流星群が見える場所3選
都内23区は街明かりや高い建物が多く、星空観察にはちょっと厳しい環境です。とはいえ、多摩など郊外まで行くのは大変ですよね。そこで、東京23区でもペルセウス座流星群がよく見えそうなところを紹介します。
石神井公園
練馬区の西武池袋線「石神井駅」から徒歩7分のところにある公園です。公園内に木が多く、天体観測の邪魔になる人工的な明かりが少ないです。また、園内には複数の広場がありますが、野球場の隣にある「草地広場」は芝生が広がっており、寝転がって星を見るのに良さそうです。
喜福寺川緑地
川沿いに桜並木が続いています。お花見スポットとして知られ、筆者もよく訪れています。川にかかる10カ所以上の橋の上が天体観測スポット。芝生が広がっているエリアもあるので、そこに座って鑑賞するのもいいですね。杉並区にあり、京王井の頭線「西永福駅」から徒歩15分で行くことができます。
砧公園
こちらも広大な敷地面積に芝生の広場が多くあります。世田谷区にある公園で、東急田園都市線「用賀駅」から徒歩20分で行けます。住宅地が近いため、上2つよりも周囲が明るいかもしれません。
このほか、23区の天体観測スポットは「夢の島公園」が知られますが、五輪開催の関係で9月5日までほぼ全域が立ち入り禁止です。また、ほかの公園もコロナ対策での注意事項がありますので、行く前は各サイトで最新情報をご確認ください。
もちろん、地方や郊外にお住まいなら、ベランダなどで寝転がって見るのがベストですね!家族で見るのも良しですが、今回の神話の話は「R指定」なのはご留意を。
参考文献
国立天文台,ペルセウス座流星群が極大(2021年8月)
石神井公園,
砧公園,
武蔵野の森公園,
夢の島公園,
提供元・ナゾロジー
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