point
- 悪夢を退散させるには明晰夢をみるといいことがわかった
- 明晰夢の持つ自己認識と客観性が悪夢にとっては不都合だった
- 明晰夢をみるには2度寝するといい
悪夢の種類は、偶然が重なって起こる特発的なものと、持続的に発生するものの2種類があると知られています。
どちらの場合も、悪夢の苦痛は起床後に生じる負の感情によるところが大きいでしょう。
一般人口の約2〜8%が悪夢から目覚めた直後の不快感によって苦しんでいる他、悪夢は心的外傷後ストレス障害(PTSD)の主な症状の1つでもあります。
しかし夢に対する研究は非常に困難であり、これまで研究の多くは小規模な実験にとどまっていました。
そこでブラジルのリオグランデ連邦大学たちは既存の研究結果をまとめて、体系的に解釈することで、悪夢に対する明晰夢の有効性を調べようとしました。
明晰夢とは夢をみている本人が、これは夢だという事実に気づく、非常に特殊な意識状態です。
悪夢を明晰にみるようになれば事態は悪化すると思われましたが、結果は意外にも違いました。
悪夢は明晰夢の客観的な自己認識の前に、敗れ去ったようです。
研究結果はタイナ・カルラ・フレイタス・デ・マセド氏らによってまとめられ、学術雑誌「Frontiers in Psychology」に掲載されました。
My Dream, My Rules: Can Lucid Dreaming Treat Nightmares?
悪夢と明晰夢を競合させる
神経認知理論によると、悪夢を含む普通の夢は主に前脳メカニズムによって無意識に生成されるとされています。
一方、明晰夢をみているあいだ、被験者は夢を見ていることに気づいており、夢の中でも前脳の働きにより理性的な判断が下せることがわかっています。
悪夢と明晰夢は、脳の同じ場所から発生していたのです。
このことから、研究者は明晰夢を悪夢と鉢合わせすることを考えつきました。
同じ前脳由来の全く性質が異なる2つの夢を競合させてみたら、何が起こるかを確かめようとしたのです。
実験にあたっては悪夢に苦しむ複数の患者に明晰夢をみるトレーニングを行わせ、悪夢の明晰化を行わせました。
結果(いくつかの不幸な事故はあったものの)多くの患者で悪夢は悪夢ではなくなりました。
悪夢に明晰夢で鍛えられた「夢をみている自覚」と「理性」の制御が加わわったことで、悪夢がただの夢であることが自覚され、悪夢を無効化したり、最終的には楽しむことも可能になったとのことです。
モンスターの悪夢に苦しんでいたある患者は、明晰夢をみるトレーニングの結果、悪夢に出てきたモンスターに自分から話しかけ、出現した理由を聞き出すことにも成功したそうです。
明晰夢をみる方法
悪夢に対する有効性が示された明晰夢ですが、普通に眠っていてはなかなかみることはできません。
古くから明晰夢をみる方法として伝わっているMILDテクニックという方法がありますが、手順が複雑なのが難点です。
近年の研究により、軽-中度のアルツハイマー病や様々な記憶障害の治療に用いられるアセチルコリンエステラーゼ阻害(ガランタミン)を寝る前に摂取したり、脳に電気刺激を行うといった方法も開発されていますが、やはり敷居が高いと言わざるをえません。
そこでリオグランデ連邦大学のアーチュロ博士によって、誰でも簡単に明晰夢をみる方法が提案されました。
「wake back to bed」(起きたらベッドへ)と呼ばれるこの方法は、
①まず普通に起床する時間の30分前にアラームを設定する。
②翌朝、目覚めによってアラームが鳴っていることに気づいても、起きずに、再び眠る。
という、いわゆる2度寝です。
効果のほどは保証できませんが、人為的な2度寝は明晰な夢をみやすいとのこと。
試してみる価値はありそうです。
提供元・ナゾロジー
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