比類なき、オリジナリティ溢れる作品世界を一気見。
■相米慎二監督没後20年、特集放映決定
昭和の終わりから平成にかけて、日本映画界に大きな足跡を遺した相米慎二監督。2001年9月9日、53歳で世を去ってからこの9月で20年となる。
特徴的な長回し撮影手法を用いて俳優たちを追い込み、生々しい熱演を導き出す独自の演出法により、特に当時の若手俳優陣を成長させた功績は今後も伝説として語り継がれていくだろう。
相米慎二監督の代表作・人気作を集めた特集をWOWOWシネマとWOWOWプラスで9月に合計7本で放送する。
■アイドル薬師丸ひろ子を映画俳優に成長させた名作
BSのWOWOWシネマでは5タイトルをラインナップ。
映画「野生の証明」でデビューした薬師丸ひろ子の初の主演作で、同世代の鶴見辰吾、尾美としのり、石原真理子と共演した「翔んだカップル オリジナル版」。これが相米慎二監督の初監督作品であり、印象的な長回しが話題を呼んだ作品だ。
再び薬師丸ひろ子を主演に迎えた角川映画「セーラー服と機関銃 完璧版」。当時高校生だった薬師丸ひろ子に映画役者としての覚悟を決めさせたとも言われる徹底的な追い込み方。主題歌とともに映画は社会現象ともいうべき大ヒット、薬師丸ひろ子の代表作となった。
オーディションで選ばれた永瀬正敏と河合美智子と、天才子役として活躍していた坂上忍が主演の「ションベンライダー」。坂上以外は芝居経験ゼロの2人を、とにかく走り回らせ延々と長回しで追いかける暴力的とも言える演出が印象的。
「三億円デビュー」「お湯をかける少女」と話題先行の割りに歌手として人気が定着しなかった工藤夕貴が、役者として大きな注目を集めるきっかけとなった「台風クラブ」。作品的な評価も高く相米慎二のキャリアの中でも重要な作品。複雑なキャラを演じた三浦友和も評判に。
他に、映画初主演の牧瀬里穂を徹底的に追い込み熱演を引き出したことで各映画賞で新人賞を受賞することになった「東京上空いらっしゃいませ」、小泉今日子と浅野忠信が共演し、監督の遺作となったロードムービー「風花(2000)」を放映する。
■相米監督が見出した田畑智子の輝き
BS・CSのWOWOWプラスでは3作品をラインナップ。
「セーラー服と機関銃 完璧版」と「ションベン・ライダー」に加えて、カンヌ国際映画祭「ある視点」部門招待作品となり、作品的評価も高い「お引っ越し」を放映。
当時12歳だった田畑智子のデビュー作。両親の離婚に直面した少女の繊細な心象風景を見事に演じた田畑智子、そして母、妻、女、という複雑な面を巧みに表現した桜田淳子の熱演が大きく評価された作品だ。
演技経験の少ない若い役者を、徹底的に追い込み熱演を引き出す手法。現場での役者の苦悩、葛藤、反発なども表情から垣間見ることができる相米作品は、他にはないオリジナリティがある。彼が遺した作品をまとめて鑑賞できるこのチャンスは見逃せない。
(冨田格)
提供元・IGNITE
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