世界には約7000種の話し言葉がありますが、その中で文字化されているのはほんの一部です。

文字をもたない言語は、話者がいなくなると消えていきます。

私たちが数千年前の歴史や異国の文化を学べるのは、文字で記録されていたおかげ。

では、その文字はいつ、どのように誕生し、どうやって進化していったのでしょうか?

目次

  1. 4万年前に「文字の卵」は世界に広まっていた
  2. 「カタコト文字」が「スラスラ文字」に進化するまで

4万年前に「文字の卵」は世界に広まっていた

現生人類(ホモ・サピエンス)が登場したのは約20万年前ですが、文字の兆しが現れたのは4万年ほど前です。

今につながる文字の卵たちは、世界各地の洞窟壁画の中に見つかっています。

動物の絵のそばに、幾何学的な形やジグザグ模様、矢印、点の集まりなどが散見されました。

いわゆる、「絵文字」です。

文字が誕生したのはいつ?「カタコト文字」が「スラスラ文字」になるまで
旧石器時代の洞窟に見られる「絵文字」 / Credit: ancient-code(画像=『ナゾロジー』より引用)

これらの絵文字が意味するところは分かりませんが、数万年前にすでに世界各地に広まっていたのは驚きです。

また、ここには文字に通ずる興味深いヒントも隠されていました。

絵文字のいくつかは、たびたびセットになって書かれているのです。つまり、記号同士を対にして特定の意味を作っていたことを意味します。

文字が誕生したのはいつ?「カタコト文字」が「スラスラ文字」になるまで
甲骨文字 / Credit: ja.wikipedia(画像=『ナゾロジー』より引用)

洞窟文字のほかに知られている絵文字は、約8500年前の中国で見つかっています。

亀の甲羅や牛の骨に刻まれた「甲骨文字」です。

こちらは文字の意味も分かっており、漢字の祖先となっています。

文字が誕生したのはいつ?「カタコト文字」が「スラスラ文字」になるまで
甲骨文字の一例 / Credit: ja.wikipedia(画像=『ナゾロジー』より引用)

一方で、こうした絵文字は、一定の意味をもつ文字を並べていくスタイルで、複雑な会話は記録できません。

話し言葉で言えば、「昨日・狩・出(昨日、狩りに出かけた)」のようなカタコト表現でした。

これが現在のようなスラスラ表現になったのはいつでしょうか?

「カタコト文字」が「スラスラ文字」に進化するまで

複雑な会話や文章を正確に記録できる文字は、約5000年前のメソポタミアに登場します。

それが、シュメール人の使った「くさび形文字」です。

文字が誕生したのはいつ?「カタコト文字」が「スラスラ文字」になるまで
くさび形文字 / Credit: y-history(画像=『ナゾロジー』より引用)

粘土板に記されたくさび形文字は、会計システムの記録として始まり、労働者へのビールの配給などが記録されました。

世界最古の物語である『ギルガメッシュ叙事詩』もこの文字で記されています。

こうした社会の発展とともに、文字もどんどん進化し、複雑な文章を記録できる「スラスラ文字」になっていきました。

その最たるものが「アルファベット」です。

アルファベットは、話し言葉を記録するための絵文字から進化し、BC1700年頃の地中海東部に栄えたフェニキア人により、ぐっと現在の形に近づきました。

文字が誕生したのはいつ?「カタコト文字」が「スラスラ文字」になるまで
フェニキア人のアルファベット(22個) / Credit: ja.wikipedia(画像=『ナゾロジー』より引用)

これがギリシャ人に取り入れられて改良され、さらにその後、ローマ人が再び手を加え、今のローマ字が誕生しました。

ローマ式アルファベットは今や50億人に使われており、世界に最も広く浸透している文字です。

しかし不思議なことに、現代はSNSの影響もあってか、先史時代を越える絵文字ブームが到来していますし、ユニークなネット言葉もたくさん生まれています。

現代人はスラスラ文字と同時に、古代のカタコト文字も使っているのです。

歴史の流れからすると、今は一風変わった言語時代なのかもしれません。


参考文献

『NewScientist 起源図鑑』

ancient-code


提供元・ナゾロジー

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