Point
■月面に、これまでの予測をはるかに上回る量の氷が存在する可能性が浮上
■水星の常に影の部分にあるクレーターが、緯度が高くなるほど浅くなることから、氷の存在が示唆された
■月面の南極近くのクレーターに類似した形態的傾向が見られることから、水星と同様に分厚い氷堆積物の存在が示唆された
月面に、これまでの予測をはるかに上回る量の氷が存在する可能性が浮上しました。
研究を行ったのは、カリフォルニア大学の研究チーム。水星と月のクレーターの類似性に着目したことで導いた説を、雑誌「Nature Geoscience」に収めた論文の中で展開しています。
Thick ice deposits in shallow simple craters on the Moon and Mercury
水星のクレーターと比べてみたら…
過去、水星にも氷が存在することが、アレシボ天文台とNASAの探査機メッセンジャーのデータから明らかになっていました。
研究チームは今回研究の一環として、水星に存在する2,000個のクレーターの深さと直径の比率を水星レーザ高度計のデータを用いて調査。
その結果、常に影の部分にあるクレーターは、緯度が高くなるほど浅くなることが判明しました。これは、氷の存在を示唆するものです。
2009年には、NASAの無人探査機エルクロスが、分離した衝突体を月の南極近くのクレーターに衝突させ、その様子を撮影。その観測結果から、NASAは月にまとまった量の水や氷がその他の物質と混じって存在することを発表しました。
従来の予測の約2倍の氷が存在か
チームは、前回の衝突実験で示された量を越える氷が月に存在すると推測。水星と同じように、影になったクレーターの中に氷が潜んでいるのではないかと考えました。
このことを明らかにするため、彼らは水星と同じように月のクレーターの並行研究を行いました。対象は月面の12,000個のクレーターです。
その結果、南極近くのクレーターに類似した形態的傾向が見られることが判明しました。つまり、これらのクレーターが、水星のクレーターのように他の物質を含んだ「分厚い氷堆積物」を蓄えている可能性があるのです。
もしこれが本当だとしたら、これらのクレーターには、これまで予測されていた量のおよそ2倍に匹敵する1億トンもの氷が存在することになります。
真相を確かめるには、将来的に月面の影になったクレーターに探査機を直接送り込み、現地調査を行うことが不可欠です。今後の月面探査に期待しましょう。
提供元・ナゾロジー
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