》小振りなサイズとレトロな文字盤デザインがマニア心をくすぐる
ヘブン・ウォッチ・カンパニー(以下、ヘブン)は、アメリカ・インディアナ州で 2 番目に大きな都市、フォートウェインを拠点にして、2018年に創設された時計メーカーだ。アメリカ中西部出身で自分達の時計が優れた場所にあると誇りを持っており、作家のカート・ヴォネガット、建築家のフランク・ロイド・ライト、ブーツで有名なレッド・ウィング、フォード・マスタング、ミュージシャンのボブ・ディラン、プリンス、マイルス・デイビスなど、アメリカ中西部独特のアイデンティティーとされる“misfits(異端児精神)”を宿した時計ブランドである。
創業者のウェストン・カッターがこのブランドを設立するきっかけとなったのが、2012年に時計職人だった父から譲り受けたティソの古い時計だ。その後、彼はアンティークウォッチに熱中するようになり、バルジュー7734などの古いクロノグラフムーヴメントの研究を始め、アラームウオッチ、ダイバーズウオッチ、パーペチュアルカレンダーなど、複雑機構についても学ぶようになる。
2015年にカッターは父親へのプレゼントとしてレオニダスのムーンフェイズウオッチを購入したのだが、購入した時計は修理が必要だったため、地元の宝石店に持ち込み、そこでカッターと同じくアンティークウォッチ好きの時計職人、ドノバン・パラダイスと出会う。彼らは親しくなり、やがてビジネスパートナーとなった。
憧れのホイヤー、ルクルト、オメガなどのヴィンテージウォッチの価格が年々高騰する中、カッターとパラダイスは、1960年代のホイヤー・カレラ、エーベルハルト・コントグラフ、メモセール・ヨットマン・クロノグラフなど、2人がお気に入りのヴィンテージウォッチからインスパイアされた時計を作ることを決意することとなる。
ブランドデビューにふさわしいムーヴメントを探した結果、バルジュー7750 に類似しているセリタの手巻きクロノグラフ“SW510M”を採用した。 文字盤デザインにはカッターの親友で、かつてアメリカ・イリノイ州シカゴのコンサートホール“メトロ”のアートディレクターだったスティーブ・レイデルを起用した。
ムーヴメントはスイスから、ケース、文字盤、針などのパーツはアジアの工場に発注。グローバルで調達したパーツを、インディアナ州の工房で時計として組立てて、クオリティコントロールを徹底している。
Haven Watch Company(ヘブン・ウォッチ・カンパニー)
The Chilton
ヘブンのファーストウオッチ、“The Chilton”。アンティークウオッチの小振りなケースサイズを忠実に再現し、ケースサイズは理想的な37.5mm。風防はサファイアガラスを使用。
1960年代後半から70年代のオーセンティックなクロノグラフをイメージし、ホワイトとネイビーの2種類の文字盤カラーをラインナップしている
チルトンの裏ブタはチタン製で、五大湖シルエットのエッチングが施されており、中西部こそが世界で最も優れた場所であるというヘブンの信念を表している。
100%再生段ボールで作られた、ヘブンのセルフスタンプ付きボックスに入っており、資源を有効活用しているのもこだわりのポイントだ。
標準のステンレススチールブレスレットに加え、オリジナルレザーベルトを選択可能。このレザーベルトは現地で調達、そして手作業でカットしており、最終的な縫製と仕上げは、アメリカ・ミネソタ州東部に位置する都市、セントポールを拠点とする“Leather Works Minnesota”社が手掛けている。販売価格は1799米ドル(約19万8千円)だ。
Haven Watch Company(ヘブン・ウォッチ・カンパニー)
The Chilllllton
ヘブンは”misfits(異端者)”の精神に則り、他とは異なることをアピールする最新の腕時計、“The Chilllllton”をリリースしている。ムーヴメントや基本デザインは“The Chilton”をベースにしているが、ほかにはないアイコンとなっているのが“タイダイ柄(絞り染め風の柄)”の文字盤だ。この文字盤デザインの背景には“もっと色が欲しかった”というカッターの純粋なインスピレーションがあったようだ。
2021年7月からに出荷開始されるこのモデルは、37.5mmのケースにサファイアクリスタルガラス風防を使用。ムーヴメントはSellita 510Mを搭載し、標準仕様のステンレススチールブレスレットに加え、フランスのタンナーで作られたトープ色のサフィアーノレザーベルトと、イタリアのタンナー“コンチェリア・ラ・ブレターニャ”社で作られたブルーのレザーベルトが付属している。販売価格は1899米ドル(約21万円)だ。
文◎William Hunnicutt
時計ブランド、アクセサリーブランドの輸入代理店を務めるスフィアブランディング代表。インポーターとして独自のセレクトで、ハマる人にはハマるプロダクトを日本に展開するほか、音楽をテーマにしたアパレルブランド、STEREO8のプロデューサーも務める。家ではネコのゴハン担当でもある。
提供元・Watch LIFE NEWS
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