Point
■地中海に沈むエジプトの古代都市ヘラクレイオンから、巨大寺院や複数の船の遺跡が発見された
■海底やさらにその奥深くにある物体を、障害物があっても識別できる高精度のスキャンニング装置が役立った
■発見された硬貨の製造年代などから、この都市への定住が少なくとも紀元前4世紀頃に始まった可能性が浮上
古代エジプトの都市ヘラクレイオンは、地中海の海底45メートルに沈む海中都市です。当時、この町は活気に溢れた港町でした。
およそ20年前に見つかって以来の驚くべき大発見が、エジプトとヨーロッパの考古学チームによってこのほどもたらされました。
海の底から姿を現したのは、巨大な寺院や、貨幣や宝飾品などが詰め込まれた複数の船の遺跡。チームリーダーのフランク・ゴッディオ氏によると、ヘラクレイオンの主要な寺院Amun Garpの一部として使われていた石柱や、より規模の小さい寺院の遺跡も見つかったそうです。
高精度のスキャンニング装置で硬貨や宝飾品を続々発見
こうした発見の数々は、海底やさらにその奥深くにある物体を、障害となる堆積物があっても識別することができる高精度のスキャンニング装置のおかげで実現しました。
衛星測位、音響測深機、核磁気共鳴装置、サイドスキャンソーナーを使って得られた地球物理学的データを統合することで包括的なスキャンニングが可能になったことが功を奏し、考古学チームはこれまで存在が明らかになっていなかったいくつかの港をヘラクレイオンの近くで発見することができました。
この情報を携えて、考古学チームが再び海へ潜ったところ、複数の船の遺跡の中から、プトレマイオス2世統治時代の銅貨、陶器、宝飾品、保管用の器などが大量に出現しました。
ビザンツ帝国時代の硬貨も見つかったことから、この都市への定住が少なくとも紀元前4世紀頃に始まった可能性が示されました。加えて、前回の発掘で発見された儀式用のボートに欠けていたパーツも発見されました。
さらに、別の近隣都市カノープスの遺跡からは、プトレマイオス朝時代やビザンツ帝国時代の硬貨に加えて、プトレマイオス朝時代の指輪や耳飾りも見つかりました。
時を越えて文明が固まってしまったかのよう…
ヘラクレイオンは、ナイル川の岸辺に紀元前8世紀に建設されたと考えられており、その名前は英雄ヘラクレスがここを訪れたことに由来すると言われています。俗に言う、エジプトの「アトランティス」です。
「発掘された品々は、この都市の美しさと繁栄、大寺院の壮麗さ、歴史的証拠の豊富さを物語っています」と語るゴッディオ氏。まるで、時を超えて文明がそのまま固まってしまったかのようです。
これほどの繁栄を誇った都市が海底に沈んだ要因は定かではありませんが、「少なくとも1,000年前に起きた海面上昇・地震活動・地盤崩壊によって都市全体が地中海へ滑り落ちた」という説がもっとも有力です。
考古学チームは現在、論文の発表に向けて準備を進めているところです。ゴッディオ氏によるとヘラクレイオンの謎はわずか5%ほどしかこれまで暴かれていなかったのだとか。古代都市を覆っていた秘密のベールが剥がされる時がようやく訪れたようです。
提供元・ナゾロジー
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