一般に恐竜は、巨大な体格の持ち主として有名です。Tレックスやトリケラトプス、ブラキオサウルスなど、全長が10〜30メートルに達するものもいます。
ところが今回、米・ノースカロライナ自然科学博物館の研究により、体長わずか10センチの恐竜が化石から発見されたのです。
「コンゴナフォン・ケリー(Kongonaphon kely)」と命名されたこの恐竜は、約2億3700万年前のマダガスカル付近に生息していました。
この時代は、地球最初の恐竜が現れた三畳紀(約2億5190万年前〜)に当たり、コンゴナフォン・ケリーは、その後の大型化した恐竜や翼竜の祖先と考えられています。
恐竜の体毛は「コンゴナフォン・ケリー」から始まった?
コンゴナフォン・ケリーの化石が発見されたのは1998年のこと。
マダガスカル南西部にある化石採掘場から出土したのですが、同時に見つかった数百の化石断片に紛れていたため、特定にこれだけの年月がかかってしまいました。
化石は頭蓋骨と手足の一部が見つかったおかげで、全体像のほぼ完全な再現に成功しています。
コンゴナフォン・ケリーは現代のスズメと同サイズながら、鋭い爪に細かく生えそろった牙を持っていました。歯の化石を調べると、昆虫を主食にしていたことが判明しています。
また注目すべきは、全身にわたり体毛が生えていたことです。
これはTレックスや翼竜を含む後の大型竜に見られる特徴ですが、コンゴナフォン・ケリーから始まったものと思われます。
彼らが生きた2億3700万年前と言えば、アフリカ大陸がまだ超大陸パンゲアの一部であったときのことです。もちろん、マダガスカル島もありません。
当時の環境は気温の上下が激しく、昼夜の寒暖差がかなり大きかったと言われます。このことから、小さなコンゴナフォン・ケリーが生き抜くには、体温調節のための毛皮が必要だったのかもしれません。
研究主任のクリスチャン・カーメラー氏は「コンゴナフォン・ケリーは、後代の大型竜との共通点をいくつも持っており、おそらく恐竜と翼竜の分岐点に位置する」と指摘します。
恐竜と翼竜はともに「鳥頸類(ちょうけいるい、Ornithodira)」に属し、三畳紀中期に2つに分岐しました。彼らの祖先は、出土した化石が少ないことから、ほとんど不明なままです。
しかし、コンゴナフォン・ケリーが見つかったことで、恐竜の進化史を補完すると同時に、大型化の理由や翼竜が翼を持った起源などを解明できるかもしれません。
研究の詳細は、7月6日付けで「PNAS」に掲載されました。
A tiny ornithodiran archosaur from the Triassic of Madagascar and the role of miniaturization in dinosaur and pterosaur ancestry
提供元・ナゾロジー
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