目次

  1. 銀河の進化過程を知る方法
  2. 古くて大きな銀河は、若くて小さな銀河を食べてきた
大きな銀河は小さな銀河を食べることで成長する
(画像=ガス密度を重ねた暗黒物質密度の分布を示すシミュレーション/Credit:ASTRO 3D、『ナゾロジー』より引用)

point

  • 大きい銀河にある星の多くは、他の銀河から取り込まれたものだった
  • 成熟した銀河は、若い銀河よりもたくさんの銀河を取り込んでいることが判明
  • 銀河は、自分よりも小さくて若い銀河を「食べる」ことで進化する

宇宙には、天の川銀河以外にも数多くの銀河が存在します。

それら銀河の大きさや年齢は様々であり、その進化過程は未だ謎に包まれています。

しかし、オーストラリアのASTRO 3Dのアンシュ・グプタ氏らの研究によって、古くから存在する大きな銀河は、小さな銀河を吸収することによって成長してきたと判明しました。

銀河の進化過程を知る方法

銀河の形成と進化を把握することは非常に難しいとされています。なぜなら、それらを実際に「見る」ことはできないからです。

ほとんどの銀河は約120億歳ですし、既知の銀河で最も若いものでさえ、既に5億歳なのです。

しかし、主に2つの方法が「形成と進化」知るために、効果的だとされています。

1つ目は、「時間を遡った観測」です。

光が私たちのところに届くまでには、時間がかかります。

大きな銀河は小さな銀河を食べることで成長する
(画像=Credit:NPO法人 小さな天文学者の会 山形大学理学部、『ナゾロジー』より引用)

例えば、100万光年離れている銀河の情報は、100万年かけて私たちの元に届きます。つまり、私たちが観測しているのは「100万年前の銀河」ということになります。

当然、遠ければ遠いほど、その分時間は遡ります。

科学者たちは、遠い位置にある銀河を見つけることで、時間を遡って「若い」銀河を観測できるのです。

そして、遠くにある(若い)銀河と近くにある(成熟した)銀河を比較することで、進化の過程とその要因を知ることができます。

2つ目は、シミュレーションです。

スーパーコンピューターを用いて、銀河の進化をシミュレーションすることが可能です。

そして、今回の研究に用いられたシミュレーションは、「IllustrisTNG」です。

「IllustrisTNG」は、特別に設計された宇宙論理モデリングプログラムであり、宇宙の大規模なシミュレーションが可能です。

グプタ氏ら研究チームは、これら2つの方法を用いて、銀河の進化について新たな可能性を発見したのです。

古くて大きな銀河は、若くて小さな銀河を食べてきた

新しい研究によって、銀河内のガスがどのように移動するかを分析することができます。

通常、銀河同士の融合は、新しいガス、星、暗黒物質を供給します。

ですから、ガスの動きを調べるなら、内部で作られた星の割合と、他の銀河から吸収した星の割合が明らかになります。

まず、研究チームは、100億光年離れた古くて「大きな銀河」に注目しました。その銀河内の動きを観測したところ、銀河内の物質が様々な方向に動きまわっている状態を発見しました。

グプタ氏によると、「このことは、その中にある星の多くが外部から獲得したものであることを強く示唆しています。言い換えれば、大きな銀河が小さな銀河を食べているということです」とのこと。

大きな銀河は小さな銀河を食べることで成長する
(画像=銀河の周りの暗黒物質粒子の分布を示すシミュレーション/Credit:ASTRO 3D、『ナゾロジー』より引用)

次に、近くにある「成熟した銀河」と遠くにある「若い銀河」の内部の運動学的特性を比べました。

その結果、「若い銀河」よりも、「成熟した銀河」の方が無秩序であると判明しました。

論文の共同著者であるASTRO 3-Dのキム・ヴィ・トラン氏によると、「最も可能性が高いのは、数十億年間生き残ってきた銀河は、より小さな銀河を取り込んで大きくなり、無秩序に成長してきたということです。私は、それら大きな銀河が常に空腹を抱えているようなものだと考えています」とのこと。

大きな銀河は小さな銀河を食べることで成長する
(画像=銀河融合が進行しつつあるマウス銀河/Credit:NASA、『ナゾロジー』より引用)

さて、今回の研究で「大きな銀河は小さな銀河を食べてきた」、「成熟した銀河は若い銀河よりもたくさんの銀河を食べてきた」というデータが得られました。

この2つから予測できるのは、「銀河の進化(年齢を重ね大きくなること)は、他の銀河を食べることで達成されている」ということです。

もちろん、これらの研究のデータは完全ではありませんから、今後、さらなる研究を行う必要があるでしょう。

しかし、今後も、観測とシミュレーションの比較が、銀河の進化過程のさらなる手掛かりを提出してくれることを期待できるでしょう。

研究の詳細は4月9日、「Astrophysical Journal」に掲載されました。

提供元・ナゾロジー

【関連記事】
ウミウシに「セルフ斬首と胴体再生」の新行動を発見 生首から心臓まで再生できる(日本)
人間に必要な「1日の水分量」は、他の霊長類の半分だと判明! 森からの脱出に成功した要因か
深海の微生物は「自然に起こる水分解」からエネルギーを得ていた?! エイリアン発見につながる研究結果
「生体工学網膜」が失明治療に革命を起こす?
人工培養脳を「乳児の脳」まで生育することに成功