以前に心筋梗塞、狭心症、または脳卒中を起こしたことのある「心血管疾患(CVD)」患者は、再発による死亡リスクが高いと言われています。
イギリスの大学、ユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)疫学・公衆衛生部門に所属するチェンギ・ディン氏ら研究チームは、週に105gまでのアルコール摂取が、CVD患者の再発・死亡リスクを低下させると発表しました。
お酒好きなCVD患者はお酒をやめるのではなく、1日ビール1本程度に抑えることでより健康的に過ごせるのです。
研究の詳細は、7月27日付の学術誌『BMC Medicine』に掲載されました。
少量の飲酒が心血管疾患(CVD)患者の死亡リスクを低下させる
研究チームは、心血管疾患(CVD)患者の予後とアルコール消費の関連を調べることにしました。
そこで、UK Biobank、英国健康調査、スコットランド健康調査および以前に行われた12の研究から得られたCVD患者4万8423人のデータを対象としたメタ分析を行いました。
その結果、週に105gまでのアルコール摂取が、飲酒しないよりも、心臓発作、脳卒中、狭心症の発症、また死亡リスクを低下させると判明。
つまり1日換算すると15g以内のアルコール摂取が、CVD患者の死亡リスクを低下させていたのです。
ちなみに、種類別の純アルコール量は以下になります。
ビール350ml(アルコール度数5%):14g
ビール500ml(アルコール度数5%):20g
日本酒1合180ml(アルコール度数15%):20g
ワイン1本750ml(アルコール度数14%):80g
ビール1本であれば毎日飲めますし、ロング缶でも週5日、ワインであれば週に1本以上開けてもよいという計算になりますね。
飲酒しない人はあえて飲むべきではない
CVD患者の死亡リスクの低下は、アルコール量が週105g(日15g)以下で見られましたが、低下のピークはさらに少量です。
例えば、1日6gのアルコールを摂取する人は、飲まない人に比べて、心筋梗塞、狭心症、脳卒中の再発リスクが50%低下しました。
また1日7gのアルコールを摂取する人は、飲まない人に比べて、あらゆる原因の死亡リスクが21%低下しました。
ディン氏は、「今回の調査結果から、CVD患者が心筋梗塞や脳卒中、狭心症を予防するために断酒する必要はないが、1週間のアルコール摂取量を減らすべきだと考えられる」と述べています。
では逆に、お酒を飲んでこなかったCVD患者は、あえて少量のお酒を飲むべきでしょうか?
ディン氏は、「アルコール摂取は他の病気の発症リスクの上昇と関連しているので、飲酒しないCVD患者に飲酒を勧めるべきではありません」と警告しています。
研究チームによると、「適量のアルコールは脳に作用してリラックスさせ、ストレスレベルを下げます。おそらくこのメカニズムによって心血管疾患の発生率が低下するのでしょう」とのこと。
つまり今回の結果は、CVD患者に飲酒を勧めるものとはなりません。
お酒が大好きな人は無理に我慢するのではなく、少量を楽しむことが精神的にも身体的にもベストだったのですね。
参考文献
A beer a day keeps the doctor away! Drinking six pints a week decreases the risk of heart attack, stroke, angina or death among those with cardiovascular disease, study finds
元論文
Association of alcohol consumption with morbidity and mortality in patients with cardiovascular disease: original data and meta-analysis of 48,423 men and women
提供元・ナゾロジー
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