神秘的な輝きとともに科学的に安定した属性を備えた金は、古来、不変の価値を持つ貴金属として重宝されてきた。そのため高級品である時計にも、昔から外装素材に金を用いたゴールドウオッチが作られている。
不変な価値を備える一方で、金自体は非常に軟らかく傷が付きやすい素材のため、時計外装には銀や銅、パラジウムなどほかの金属を混ぜて硬度を高めた18金が用いられることが一般的だ。とはいえ、それでも硬度はステンレススチールなどに及ばず、ゴールドウオッチを扱う際には、細心の注意を払わなければならいことは多くの人がご存じだろう。
実用素材とは言い難い金だが、それ以上に唯一無二の輝きと価値は多くの人を魅了し、現代に至るまで高級素材として確固たる地位を確立している。
そんななか、時計外装として用いる金素材に対して、新たなアプローチがなされるようになったのは、2000年代に入ってからである。
先鞭となったのはロレックスだ。同社は独自の配合によってエバーローズゴールドと呼ぶ新素材を05年に発表した。これは従来のピンクゴールドの改良版ともいえる素材で、配合にプラチナを加えることで、経年による退色を防ぐ効果を与えたものだ。また色味も従来に比べて赤みが抑えられた点も特徴である。
このエバーローズゴールドの登場以降、時計界では独自の合金素材の開発が積極的に行われるようになった。ちなみにエバーローズゴールドと似たようなアプローチでオメガが開発したのが、セドナゴールドである。これはゴールド(75%以上)、銅、パラジウムを混ぜた合金で、長期間色褪せることのない独自の赤みを帯びた色合いが特徴だ。その名前は、太陽系で最も赤いと言われている小惑星“セドナ”に由来する。
現在までに様々な時計メーカーが独自のゴールドを開発しているが、なかでも衝撃的だったのが、ウブロが11年に発表したマジックゴールドだろう。セラミックを配合したマジックゴールドは、金の含有率は75%(18金)のまま、ステンレススチール以上の硬度を実現したのである。また19年にIWCが発表したモデルにも、従来のレッドゴールドより硬度が5〜10倍高いハードゴールドと呼ばれる新素材が採用されている。
つまり、現在は、“金=軟らかい素材”とは限らなくなってきているのだ。
もっとも、開発は決して容易ではないため、高硬度の金素材は全体からみればまだまだ少ないが、実用としても申し分ない耐久性を備えたゴールドウオッチが今後もっと増えてくるかもしれない。
文・堀内大輔/提供元・Watch LIFE NEWS
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