イングランド中部に広がる丘陵地帯・コッツウォルズ (Cotswolds)にて、ここ数十年のイギリスで最大級の「化石の鉱脈」が発見されました。
年代は約1億6700万年前で、ヒトデやウミユリといった棘皮動物を大量に保存しています。
発見したのは、アマチュア考古学者のサリー(50)とネヴィル(60)のホリングワース夫妻。
夫妻は、昨年のロックダウン中に、グーグルアースを用いて解除後の旅行計画を立てていた際、この化石場を偶然見つけたとのことです。
イギリスで最大級の「化石の鉱脈」と判明!
夫妻は普段から、化石が採取できそうな場所を見つけては調査に出かける、というのを趣味や旅行の一環として行っていました。
地質学の博士号を持つネヴィル氏は「コッツウォルズの石切場が有望であることは分かっていましたが、まさかこれほどの化石群が見つかるとは想像もしなかった」と話します。
建設会社で経理を担当しているサリー氏は「ロックダウンの解除後にすぐ許可を取り、現場で発掘調査をしました。しかし、採石場から持ち帰った石板は平凡で、何かを隠しているようには見えませんでした」と当時を振り返ります。
ところが、自宅のガレージで石版を調べていたネヴィル氏が「すぐに見に来てほしい!」と叫んだと言います。
石版を見てみると、そこには大量の棘皮動物の化石がひしめくように保存されていたのです。
発見したものの重要性に気づいた夫妻は、ロンドン自然史博物館の古生物学者であるティム・ユーイン博士に連絡を取りました。
ユーイン博士は、写真を見た瞬間に「何か特別なものが隠されている」と感じたそう。
博士はただちに調査チームを編成し、夫妻とともに現場での発掘作業を開始しました。
パンデミックによる規制も厳しく、作業の完了には数ヶ月を要しています。
それでも調査の結果、コッツウォルズの化石群は、世界的に重要な場所であることが分かりました。
調べたのはテニスコート2面分の広さで、出土した化石は約1億6700万年前のジュラ紀(約1億9960万〜1億4550万年前)のものと判明。
すでに古代の棘皮動物の化石が1000点以上の化石が見つかっており、その中には、ウミユリ、クモヒトデ、ナマコの新種も含まれています。
ユーイン博士は「保存状態の良さ、個体数の多さ、生物の多様性という点で、最高のコレクションです。
また、棘皮動物の化石群としては、イギリスで発見された中で最大のものでしょう」と話しています。
当時のコッツウォルズは海中にあったと見られ、これらの化石は水生生物の進化の歴史を知る貴重な手がかりとなるでしょう。
ホリングワース夫妻は、取材に対し「これまでにも氷河期のマンモスの化石を見つけたことがありますが、今回ほどエキサイティングなものは初めてです。
この発見のタイミングで運良く生きていたことを大変光栄に思う」と答えています。
現場の詳細な位置情報は、化石の保護や盗難防止のため、公開されていません。
しかし、ユーイン博士は「準備が整い次第、自然史博物館での一般公開をしたい」と述べています。
参考文献
Fossil Friday: UK couple accidentally discovers a mother lode of fossils
元論文
‘Part-time adventurers’: amateur fossil hunters get record haul in Cotswolds
提供元・ナゾロジー
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