Point
■火星の北部平野にあるロモノソフ・クレーターは約35億年前まで巨大な海を持っていた可能性がある
■約35億年前に起きた隕石衝突によりできた地形には津波による影響が見られた
■火星はその後、磁場の崩壊と太陽から粒子による大気の消滅で水がなくなっている
2018年、火星には液体の水が存在しているというニュースが報じられましたが、どうやら水どころか、過去には津波も起きていた可能性があるようです。
火星の北部平野には、「ロモノソフ」という巨大なクレーターがあります。直径150kmにも及ぶロモノソフは、およそ35億年前に起きた隕石の衝突によって作られました。
母印を押したかのような形から「指紋地形(Thumbprint Terrain)」とも呼ばれるロモノソフですが、フランスの天文学者フランソワ・コスタール氏によると、ロモノソフ地域はかつて巨大な海を抱えており、隕石衝突時に津波を起こした可能性があるとのこと。
隕石衝突による津波は高さ1000フィート(約305m)に及ぶとされており、コスタール氏は「火星の奇妙な地形は、津波の影響で作り出されたのではないか」と推察しています。
研究の詳細は、7月26日付けで「Geophysical Research Planets」に掲載されました。
The Lomonosov Crater Impact Event: A Possible Mega‐Tsunami Source on Mars
隕石衝突時は水中にあった!?
従来の研究からすると、火星はおよそ37億年前に惑星内の水を失い、中心核が冷えて固まり、惑星の磁場も崩壊したとされています。その結果、太陽から飛来する粒子が火星の大気に衝突し、空中の保護ガスを消滅させました。
大気がなければ地表で水を保持することが不可能なため、その後比較的短期間で火星から水が消え去ったと考えられています。
しかし一方で、火星には10億年前まで大量の水が地表にあったことを示す証拠がいくつも見つかっています。そもそもコスタール氏が津波説を主張した理由は、火星の奇妙な地形にあるのです。
氏は「地形の特徴を調べてみると、津波の衝突と波の揺り返しがその要因である可能性が高い」と言います。そこでコスタール氏は津波の発生源として可能性のある10個のクレーターを調査しました。
そこからサイズ・地形・位置などを考慮した結果、ロモノソフが津波の発生源として最も有力であることが判明。土地の形状を分析してみると、ロモノソフは隕石の着弾時に水中にあったことが示されていたのです。
もしこの説が正しければ、火星は数十億年前まで津波を引き起こすほど巨大な海を持っていたということになります。また火星に研究者たちの熱い視線が向けられそうです。
提供元・ナゾロジー
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