- 約5000年前の宗教集団が使った儀式場がイラク南部の遺跡で発見される
- 儀式は1年に2度開かれ、戦の神・ニンギルスを祀るために多種の動物を生贄に捧げたことが判明
古代メソポタミアで栄えた都市国家・ラガシュ(現在のイラク南部)。その王都・ギルスが位置していた遺跡で、およそ5000年前の宗教地区が発見されました。
調査では、300を超える陶器の断片や動物の骨が出土しています。
ここでは、古代メソポタミアに伝わる戦の神・ニンギルスを祀るための儀式や饗宴が行われ、陶器や動物もそうした生贄の儀に使われたようです。
ギルスは人類文明の最初期に誕生した都市であるため、最古の宗教集団のひとつと言えるでしょう。
人類最初期の宗教集団
今回の調査は、大英博物館の発掘チーム・Tello/Ancient Girsu Projectにより行われました。
出土した遺物品の多くは、「ファビッサ」と呼ばれる深さ2.5メートルほどの儀式用の穴の中や側で見つかっています。
陶器には、饗宴に使われたと思しき皿やボウル、カップのような形が見られ、また動物の骨には、ヒツジやウシ、シカ、ガゼル、魚、ヤギ、ブタ、鳥など多くの種が含まれていました。
おそらく、宗教集団は、儀式や饗宴が終わった後で、残った陶器や骨をファビッサに捨てたのでしょう。
さらに、同地に見られた厚い灰の地層は、宗教集団が火を多用したことを示します。
ギルス遺跡の調査は19世紀頃から始まっており、過去にも儀式の詳細を記した楔形文字入りの石版が発見されています。
それによると、戦の神・ニンギルスを祀る饗宴は1年に2回開かれ、それぞれ3〜4日間にわたり続けられたようです。
また、儀式の一環として宗教集団による大規模行進も行われました。石版には、ギルスの中心部からスタートし、領土内を横断して外地にあったグエデナまで行った後、再び元の道を引き返したと記されています。
宗教集団による儀式が続いた期間は、まだ定かではないものの、紀元前2950〜2350年まで続いたと言われています。
同地の発掘調査は今後も続きますが、文明初期の宗教集団はニンギルスに一体何を願ったのでしょうか。
提供元・ナゾロジー
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