特に日本人には多いといわれる「恥ずかしがり屋」属性だが、自分が恥ずかしがり屋だからといって親も恥ずかしがり屋だとは限らない。
果たして「恥ずかしがり屋」は遺伝か生育環境、どちらから来るのだろうか?
「恥ずかしがり屋遺伝子」は30%
キングス・カレッジ・ロンドンのタリア・エレー教授は、「遺伝」と「環境」の両方によって恥ずかしがり屋な性格が形成されると述べている。
「そりゃそうだ」と思わなくもないが、彼女いわくその割合は「遺伝」のほうが少なく、恥ずかしがり屋の遺伝子はたったの30%しか子どもに引き継がれないとのこと。
過去10数年に渡って、エレー教授のような科学者たちは、遺伝子の突然変異を発見するためにDNAそのものに注目し始め、それが個人の性格やメンタルヘルスにどのような影響を及ぼすのか研究をおこなってきた。
突然変異は、単体では大きなインパクトはない。しかし、それが他の遺伝子との組み合わせの中で、人の特徴に大きな影響を与える場合もある。
しかしその構造は複雑なため、「恥ずかしがり屋な性格を発現させる」という単体の遺伝子があるわけではない。
こういった理由から、親子の間にも大きな性格の違いが生まれ、「恥ずかしがり屋」な性格の形成についても産まれた後の「環境」のほうが、より強いインパクトを持っていると考えられる。
恥ずかしがり屋は進化の過程で生まれた?
「恥ずかしがり屋」という言葉には多少のネガティブなニュアンスが含まれているが、それは本当に悪いことなのだろうか?
ロンドンのCentre for Anxiety Disorders and Traumaに勤める臨床心理士のクロエ・フォスター氏は、恥ずかしがり屋という性格はいたって通常のものであり、それが社会的な不安にまで発展しない限りは何の問題も生じないと語る。
またエレー教授は、「恥ずかしがり屋な人間の出現が進化の上で必要だった可能性」についても述べている。
恥ずかしがり屋であれば集団での生活を好まないため、そこに行動の多様性が生まれる。また、リスクや危険についても回避する傾向があり、こうした性格が子孫を残していくために有益だったことも考えられるのだ。
どうしても恥ずかしがり屋をなおしたい人には…
とはいえ、自分が恥ずかしがり屋すぎて苦しんでいるという人も中にはいるだろう。恥ずかしがり屋であるがゆえに集団に溶け込めず、それが大きなストレスとなってしまっている人については、認知行動療法が最も有効であるとされている。
このセラピーは人の思考や行動パターンにメスを入れ、そこに変化を与えていこうとするものだ。認知行動療法によって、自分のネガティブな思考が明らかとなり、適切な行動パターンを身につけることができる。
しかし恥ずかしがり屋は病気ではないので、重要なのはそうした自分自身を受け入れ、ありのままの自分でいられる環境に身を置くことだろう。恥ずかしがり屋な人にしかできないことや、恥ずかしがり屋な人しか持たない特別な才能も存在しているはずだ。
特にコミュニケーションの形が多様化する現代、ある意味恥ずかしがり屋な人にとっては「時代」が来たといえるのかもしれない。
最も雄弁な人が、最もいいアイデアを持っているとは限らないのだ。
reference: bbc / written by なかしー
提供元・ナゾロジー
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