近年オーストラリアの各地で、ゴミ箱のふたを開けて中身をあさるオウムが増加しています。
ドイツのマックス・プランク動物行動研究所(Max Planck Institute of Animal Behavior)に所属するバーバラ・クランプ氏ら研究チームは、この増加がオウムたちの「模倣」の結果であると報告しました。
オウムたちは「ごみ箱を開けられる賢いオウム」の真似をすることで学習していたのです。
研究の詳細は、7月23日付の科学誌『Science』に掲載されました。
オウムに社会的学習能力はあるのか?
人間は他者を観察し模倣することで学習できます。
これは「社会的学習」と呼ばれています。
クランプ氏によると、「霊長類や鳥など一部の動物も社会的学習を行っているように見える」とのこと。
しかし、「人間と比較して、動物がお互いから何かを学ぶという既知の例はほとんどありません」とも付け加えています。
ところが数年前、研究チームは「オウムがごみ箱のふたを開ける動画」を見つけ、興味を抱きました。
このオウムはオーストラリアに広く分布しているキバタン(学名:Cacatua galerita)と呼ばれる種であり、くちばしと足を使って重いふたを持ち上げ食料を入手していました。
クランプ氏は「食料を得るためのこのような独創的かつ革新的な方法は、体系的に研究する必要がある」と考えました。
そして「オウムがごみ箱を開ける方法」の研究が始まり、最終的には社会的学習能力を明らかにするものとなりました。
ごみ箱のふたを開ける「賢いオウム」の登場と「真似するオウムたち」
2018年に開始されたオンライン調査では、オーストラリアのさまざまな地域の人々から、「オウムのごみ箱開け」の目撃情報が集められました。
その結果、調査開始時の2018年には、3つの地域で目撃。
そして2019年後半までには、44の地域にまで目撃情報が広がっていきました。
しかもオーストラリアでランダムに目撃情報が現れたのではなく、近隣地域から徐々に広がっていったと判明。
クランプ氏は、「これらの結果は、オウムが他のオウムから方法を学んだことを示している」と述べています。
オウムたちには社会的学習能力があり、真似することでごみ箱のふたを開けられるオウムが増えていたのです。
これは1羽の賢いオウムが新しい方法を開発することで、他のオウムにも同じ賢い方法が伝わってしまうことを意味します。
また一部のスポットに集まる約500羽のオウムに印をつけて観察したところ、実際にふたを開けられるオウムはそのうちの約10%であり、そのほとんどが大きなオスだと判明。
研究チームはこの原因を、「力が強いのでふたを開けやすかった」「他のオウムよりも強いため食料にアクセスしやすかった」と推測しています。
さて今回、オーストラリアのオウムが「まねっこ」によって賢い方法を学んでいると分かりました。
学術的には非常に魅力的な発見ですが、近隣住民にとっては「ごみ箱あさり」が大きな問題となっています。
今後は動物たちの社会的学習を考慮に入れた対策が必要になってくるかもしれませんね。
参考文献
Clever cockatoos learn through social interaction
元論文
Innovation and geographic spread of a complex foraging culture in an urban parrot
提供元・ナゾロジー
【関連記事】
・ウミウシに「セルフ斬首と胴体再生」の新行動を発見 生首から心臓まで再生できる(日本)
・人間に必要な「1日の水分量」は、他の霊長類の半分だと判明! 森からの脱出に成功した要因か
・深海の微生物は「自然に起こる水分解」からエネルギーを得ていた?! エイリアン発見につながる研究結果
・「生体工学網膜」が失明治療に革命を起こす?
・人工培養脳を「乳児の脳」まで生育することに成功