世界でも屈指の地名度を誇るイギリスの遺跡「ストーンヘンジ」。
そこから北東に約3キロ離れた地点で、謎の巨大シャフト群が発見されました。
シャフト群は、新石器時代の土塁である「ダーリントン・ウォール」を取り巻くようにして並んでおり、目的や用途は不明です。
研究主任のヴィンス・ガフニー氏(英・ブラッドフォード大学)は「ストーンヘンジ周囲はすでに調べ尽くされたと思っていたので、今回の発見は驚くべきこと」と話します。
しかも、シャフト群がつくる環状の直径は2キロに達し、国内で見つかった先史時代の遺跡としては史上最大とのことです。
一体、何の目的でつくられたのでしょうか。
環状に並べられたシャフト群
遺跡は、イギリスの複数の大学が参加する共同チーム「Stonehenge Hidden Landscape Project (SHLP)」により発見されました。
今回の発掘は、直接的な手作業ではなく、地中レーザー探査などを用いたリモートセンシング技術が使われています。
シャフトは、地中を掘ってつくられており、それぞれ直径10メートル、深さ5メートルもあります。それらがダーリントン・ウォールを中心にして、直径2キロの環状をつくっていました。
シャフト内の堆積物を調べた結果、建設年代は約4500年前と特定されています。
シャフトは全部で20個見つかっていますが、まだ10以上のシャフトが地中に隠されているとのことです。
ガフニー氏は「シャフトと環状のサイズはイギリスで前例がなく、ストーンヘンジ周囲の謎を再び深めることになった」と話します。
何のためにつくられた?
シャフト群の目的や機能について断定できる答えはまだありません。それでも研究チームは、いくつかのヒントをもとに推測しています。
まず、ストーンヘンジが「死者」と結びついていた場所なのに対し、シャフトの中心にあるダーリントン・ウォールは、ストーンヘンジの建設者が生活する「生者」の場所として知られていました。
このことから、環状に並んだシャフト群は「両者との聖域を区別するための境界線として使われたのではないか」と予測されます。
この他の説として、ガフニー氏は「ストーンヘンジのような巨石群は、主に太陽や月の動きを考慮してつくられるため、環状のシャフト群も天文学に関連している可能性が高い」と指摘しました。
いずれの目的にせよ、シャフト群がこれまでにない規模や方法であることは間違いありません。また、当時の建設技術を考えれば、膨大な時間と労働力がかかったことは確かでしょう。
今回の発見により、新石器時代の文化や信仰について、歴史理解の刷新が求められるかもしれません。
研究の詳細は、「Internet Archaeology」に掲載されています。
A Massive, Late Neolithic Pit Structure associated with Durrington Walls Henge
提供元・ナゾロジー
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