空にふわふわ浮かぶ雲。実は数十トンもの重さがあることを知っていますか?
そんなずっしりした雲が、なぜあんなに軽々と空を浮かんでいられるのでしょうか。その疑問に、科学者ジム・マクベイド氏がThe Conversationで答えています。
雲の重さを量ったことがありますか? マクベイド氏が実際に量ろうと飛行船で上空にのぼった時、雲の周りは非常に湿っていたそうです。雲は「かたまり」ではなく、何十億もの小さな水滴でできているからです。
マクベイ度氏が量った雲は、雲のなかではとても小さい部類に入りましたが、それでも4トンの重さでありました。その重さはなんと、「象2匹分」。
なぜこんなに重いものが空に浮かんでいられるのでしょうか?
Point1. 重力
その謎を解く鍵は、3つあります。最初の1つは重力です。地上にあるすべてのものと同じように、雲を作っている小さな水滴も地球の重力によって下に引っ張られています。しかし水滴はとても小さいので、下にある空気を押しのけるのが難しい。つまり、水滴はあまり速くは落ちないのです。そのスピードは秒速1センチくらいです。それに、風が上向きに吹くと水滴は吹き上げられてしまいます。
Point2. 水素の軽さ
2つ目の鍵を理解するためには、少しだけ化学の知識を知る必要があります。周期表を知っていますか?人類が知り得たすべての元素の表です。
元素は物質を組み立てるための部品…レゴの小さなブロックのようなものです。それによって、さらに大きく複雑なものを作ることができます。周期表では、各列の中で軽い元素ほど左にあるように並べられています。水素は最も軽い元素なので、一番上の左側にあります。なので、各列で右に行けば行くほど重い元素となります。
乾いた空気は主に2つの気体でできています。酸素と窒素です。それから少々のアルゴンともっと少ない他の気体からなります。ここでは酸素と窒素だけを見ていきましょう。
周期表で示されている通り、窒素原子の重さは14で、酸素原子は16です。しかし、酸素も窒素も単独でいることはなく、ペアを作って分子となっています。例えば、枝豆に2つの豆が入っているようなものです。そのため、窒素分子の重さは28で、酸素分子の重さは32です。
空気に水(H2O)を加えると面白いことがわかります。水分子は2つの水素原子と一つの酸素原子からできています。水素が最も軽い元素だと言うことを思い出してください。よって、水分子の重さは18です。これは窒素や酸素よりも軽いもの。湿った空気が乾いた空気よりも軽いのは、これが理由です。
Point3. 温度による上昇
最後の鍵は温度です。原理的に、暖かい空気は上昇し、冷たい空気は下降します。空気中の水分が温められると、気体になりやすくなり、冷やされると液体状へと変化して、雲の中の水滴や、雨粒、雹や雪になります。
暖かな湿った空気は上昇するにつれて冷やされます。そして、冷やされると水滴が形成され増えます。水滴は単に雨として落ちてくると予想しているかもしれませんが、ここでもっと面白いことが起こります。汗が液体から気体に変化することで肌を冷やしてくれることは知っていますよね。気体が液体になるとき、ちょうど逆のことが起こります。熱を放出するのです。
つまり、雲の中の水滴は、暖かな空気の薄い毛布に包まれるのです。暖かい空気はどうなるんでしたっけ?そう、上昇するのです。といっても高くは上がりません。空気は上昇すると冷えるからです。
これですべての鍵がそろいました。雲は小さな水滴でできていて、重力の影響を受けにくく、乾いた空気よりも軽い湿った空気の中にあります。そして、水滴は暖かな空気の層で包まれ、空の上へと上昇します。
何十億トンもの重たい雲が空に浮かんでいられるのは、こういった理由からなのです。
提供元・ナゾロジー
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